トンデモがトンデモじゃない?!

・構成が巧いと思いました。
 最初はどういう展開になるのかさっぱり読めず、まさかこのままトンデモを並べて彼氏が振り回されて終わるだけの話だったらタイクツでツマラナイんじゃないかと心配しましたが、一度はオチがついたはずの全部のトンデモが、まさかラストであのような形でひっくり返って収束するとは思ってもおらず、構成力の良さが際立った作品だと感じました。

・ラストが特に良かったです。
 カーチェイスなんて、ちょっとしたアクション映画の1シーンのようでした。
 「静」な部分、「動」な部分、緩急の取り交ぜ方が巧みだと思います。
 その他、彼女の過去エピソードについては、それまでのハイテンションを旨い具合に落ち着かさせているので、トンデモだけでは突っ走らせない巧妙さにも感心します。
 なんというか、持ち上げてさっさと見捨てるという意味で「世間」ってのはそういうものだろうな、と、リアルがいい塩梅で滲んでいると思います。

・彼女と彼氏の今後のトンデモにも期待です!
 シリーズ化できそうに思います。これからも彼女のトンデモに振り回されてほしいです。

最後に気になった点を。

・実は(じつは)を「ぢつは」と書く理由が気になります。
 主人公を頭悪く見せたかったのでしょうか。
 どちらかというと、回転も速く推理力もあり(彼女に振り回されているという点ではポンコツですが)、そのレベルの間違いをする主人公には思えず。

・冒頭の意味深発言の意図を測りかねています。
「もしもあの時、その色眼鏡をかけて彼女を見ていなければ、俺と彼女の関係ももっと別のものになっていたのかもしれない」
 何かが起こって “終わって” しまった様子の過去形発言なのですが、最後まで読むと彼女との関係も現在進行形で無事に続いているので、あれはなんだったのかな、という気持ち。
 やはり、シリーズ化されて今後が存在するということなのかと、期待はしてしまってもいいのでしょうか。