§5-2-6の補足・流通速度Vと何故、新自由主義者は中央銀行を廃止しろと騒ぐのかについて←「国債は機械的に毎年一定額だけ建てること!」…(๑•ω-๑)♥

この話数は「§5-2-6・アベノミクス失速の理由を貨幣乗数とフィッシャーの方程式から読み解く【ここ重要!】」の補足になります…m(_ _)m


 ※     ※     ※


§5-2-6ではフィッシャーの方程式 MV=PYを使い(Mは通貨供給量、Vは流通速度、Pは価格もしくは物価、Yは国家の成果物もしくはGDPないしはGNP)、貨幣定数mと流通速度Vの数値が減った(悪化した)ためにマネタリーベースH(←例えば日銀なんかが金融緩和した…みたいな)を増やしたにも関わらずその効果が死んだ…という話をしました。そしてこの「MV=PT」(Tはある一定期間における算出された成果物。もし一年ならば明目GDP=Yとなる)はいまでもごく普通に使われてはいますし、一応、通りは良かったので使いました。


しかしこの式には問題があるとされています。「MV=PT」の式をよく見てみると「左側のカネの流れ=右側のモノの結果」という因果関係を示したものに過ぎず、単に鏡写しの関係に過ぎないということです。よってこの式は常に成立するわけで、最初から等しいものをまるで因果関係があるかのように示しているに過ぎないということです。


そこでマーシャルのkという考え方が出てきました。通貨供給量 (マネーサプライ)と明目GDPとを比較し、GDPを1とした時にMが何倍あるか?…というものでした。これは流通速度Vの逆数(k=1/V)であって、kの値が大きいほど多額のカネが市場に出回っているということになります。現在の日本の場合は約二倍くらいという事で、GDPに対して二倍ほどカネをばらまいている…という感じです。よって…


MV=PT → M=kPT →「P=M/kT」


となります。この式(ケンブリッジ方程式)だと、kTが一定とした場合、PとMは増減に関して比例関係が出来るようになります。

また統計的に見るとkとTは短期的にはほぼ一定です。というのもマーシャルのkの中の通貨供給量はある一年で2倍にも3倍にも増やすということは普通はありえず(これは全供給量のことで、日本でいうなら「来年1000兆円刷ります」みたいな話)、またT (単年度ならY=明目GDP)も一年で倍になるということはほぼありません。そんなにいきなり国力 (国家の生産力)が数倍に跳ね上がることは物理的に不可能です。よって「短期的には一定」という話になり、価格 (物価高)と通貨供給量とは例えば通貨供給量を増やせば価格も上昇する(物価高になる)ということです。


しかしマーシャルのkにはT (←単年ならY=明目GDP)とMが内在されています。なので「P=M/kT」の中に「k=1/V」→「k=1/(PT/M)」を代入すると結局Tが消えてしまうだけのことです。ということは貨幣数量説「MV=PT」が貨幣の総額=取引総量に等しくなるという観点から導かれているのに対し、ケンブリッジ方程式は通貨供給量が明目GDPに比例するという観点から導かれているものの結局「始めから等しいものを表現したに過ぎない」という事になってしまいます。同じことです。


問題なのは現実との乖離があったことで、実際1930年代の米国においては世界恐慌からの回復時、ルーズベルトのケインジアン的な公共投資などもあって、不況時でも連邦政府が公共事業などでカネをばらまいたのですが価格は下落しデフレってました。これは矛盾する現実でした。ルーズベルトの公共事業…たとえばフーバーダムなどの事業も政府の赤字が膨らんだために予算支出が続かずに尻窄しりつぼみになったからと言われていましたが、そもそもの式が単純すぎるのではないかという疑念は当時からありました。別にマーシャルのkが悪いとかいうのではなく、MV=PTがカネとモノはイコールになるという事を言っていただけで現実の変動を上手く説明できないのでは?…ということです。


これはアベノミクス時にも見られています。アベノミクス初年度、黒田日銀総裁による超大規模金融緩和によって日本の経済成長率は一年立たずに2.3%にまで一瞬で跳ね上がりました(これは本文の通りです)。なので「P=M/kY」は成立しているように見えます。安倍晋三になったからといって日本の産業力が一瞬で数倍になるわけはなく(安倍は魔法使いではない)、またマーシャルのkの中にある流通速度 (明目GDP/通貨供給量)の分母が激増したことから結果、Pが上昇した…とはいえそうです。しかし当時も物価基調そのものは上昇していません。


なるほど確かに物価の上昇には18-24ヶ月のタイムラグが生じるのが普通です。よって消費増税がなければおそらく実際に物価は上昇したことでしょうし、その物価上昇が企業収益の実数の向上=好景気となり、同時に物価上昇によって「今日より明日の方が物価高。だったら安い今日のうち(今のうち)にモノを買ったり飲んだりくったりしようヽ(^o^)丿」…というインフレヘッジ行動も発生し、ますます景気は持続的に上向いていく。この好景気の結果、人手不足に陥り、特に肉体労働・単純労働に従事する人たちの所得が向上する…という「トリクルダウン効果」が生じたはずだと言えそうです。少なくともそう解釈できるので…


金融緩和時には増税すんな!(ꐦ°᷄д°᷅)💢


…という話をしたのですが、しかし増税後の長い時期にも大規模な金融緩和を行い、2016年からはほぼ無制限に近い超低金利政策+超大規模金融緩和を続けたにも関わらず物価Pが上がらないのは「流石におかしい…ಠ_ಠ;?」という事に気づきます。これは「貨幣の中立説」から考えても変な話です。貨幣の中立説は、たとえば短期的に通貨の供給量を増やして景気刺激策などを採用した場合、効果があるかないのかは立場によって意見は様々だが、長期的にみれば「物価高になる」という経験則でした。カネの量を増やせば長期的には物価高、逆に絞れば長期的にはデフレということです。これはほぼ確定で、たとえば新コロに際しての経済混乱時、市場救済のために世界中で多額のドルをバラ撒いた結果、2023年現在も世界はかなりの高インフレ(物価高)に悩まされている…ということからも「ほぼ真実」といえます。


しかし日本は過去10年以上…それどころか今世紀に入って通貨供給量を増やし続けたのにも関わらずデフレってただけでした。国債の発行量は爆増してますし、なにより国民資産がバブル崩壊時の900兆円から2023年は2200兆円に達するほど「カネばかり増えまくってる」国家です。日本は信じられないほどの金満国なのですが、「カネが増えた」にも関わらず(貨幣の中立説に反して)物価が全く上がらなかったのはなぜか?…という疑問にPV=MYは答えてくれません。実体経済を上手く説明できないのではないかということです。



これに対してフリードマンは別の事を考えるようになりました。

流通速度V (…と逆数であるマーシャルのk)に着目し、Vが一般的に言われているように「短期的には一定」なのかを疑ってみたようです。流通速度Vは2つのことを表しているとされています。もともとは「貨幣が一定期間に何回取引に使われるか=何回誰かの所得として受け取られるか(みずほ証券ファイナンス用語より)」ということで、たとえば「一枚の一万円札が何回使われたか」という感じです。ある人が一万円の商品を買ったら一回。その商品を売った人が別の店で一万円分飲み食いして使ったら「二回」という感じです。

ここから転じて、ならば通貨の供給量Mを「一枚のお札」と考え、これが例えば一年間に我が国のなかで何回まわったか?…とも考えられるわけで、よってV=PY/Mという考え方〜明目GDPをマネーストック統計で割ったものというのが出てくるわけです。しかし前述のように、翌年からいきなり明目GDP (PY)が二倍三倍となることはないので「明目GDPは短期的には一定」であり、また流通速度Vを歴史的に調べてみると緩やかに下落傾向を示してもいました。これは「実質所得が増加すると流通速度は低下する」という経験則で、これは日米始め殆どの国で同様の傾向を示していました。


なら、逆に言えばマーシャルのkは増加する一方ということです。ということは逆に「通貨の供給量を増やせば明目GDPが増える」とも言えるわけです。やはり通貨供給量Mと明目GDPのPYには密接な関係性があるという事になりました。そこでカネそのものである「貨幣需要Md」に注目し、この中身をより詳細に検討したのです。


貨幣需要Mdとは人々が様々な目的をもって保有する通貨の総量であって、要するに預金や現金のことです。ケンブリッジ方程式においては(通貨の市場が均衡するためには)Md=Mと考えていたのですが、フリードマンはそうではなく通貨とは現金の他にも証券・債権に加えて人的な資産なども含まれるべきであり、現金を加えたこの4つの資産の中を柔軟に行き来しているとみなし、更にこれらは新たなパラメーター「富W」の中の一部に過ぎないと考えました。富Wは通貨および通貨以外の全国民資産の合算であり、たとえば地下資源や芸術文化などで生み出されるだろう富など有形無形の国家の資産のことです。


ならば全資産である富Wの中で、どのくらいの割合を通貨として保有するかというMdの割合は「通貨を保有することの利得と、持つことによって生じる通貨の価値の下落などのリスク・コストや他の資産に振り替えたときの収益 (利得)によって流動的に変化する」と考えました。そこでMdを中心に分析を進め、以下の方程式 (貨幣需要関数)を得ました。


Md/P=f(i,W/P)


Md  貨幣需要

Md/P 実質貨幣需要

i   利回りなどの変化率

W/P  実質的な富


実質貨幣需要Md/Pは物価と現金の比較となり、物価が高ければ現金をたくさん持っていてもインフレ起こすので「より早く使ったほうがいい=あまり持たない」という事になり、デフレなら逆になります。こうした現金を持つかもたないかを決める要因が債権の利回り・金利などの変化率iと、実質的富W/Pによって決まってくるということです。


これだと現在 (←2023年)の米国のように激しいインフレに見舞われている国では分母Pがデカくなり、それはMdが一定ならば実質貨幣需要は減る=カネよりモノへとシフトするということであり、実質的富W/PのPが増加しているため「インフレで富Wの価値が目減りしている」一方で、f(,)なので利回りなどの変化率iもまた一定の割合で変化する(金利なら上昇していく)ということを示していて、より現実的です。

同時に富Wの中には現金資産、株式、債権、人的資源に加え不動産やら会社など(所有していれば)様々な資産があるために、この中で現金⇔株式・不動産などの流動性があるわけで、これだと例えば日本のように国民資産はやたらとデカいのに何故P物価が上がらないのか?…という時に、現金以外の他の資産に流れている可能性や、もしくは当座預金やらタンス預金やらで全く動かなくなっていて流通速度に貢献しない資産が多数あるからではないか?…とか、利回りの変化率iがほぼ固着して動かないのであれば、f(,)の関係からW/Pも動きにくいという事も言えそうなわけで、よりシックリくると思うのです。ただし余りにもこの方程式が使われていなかったので(凄い謎。ほんと不思議…。でもワイも正直、尻込みして)まずはMV=PYから読み解いたということでした。


Md/P=f(i,W/P)とは「実際の貨幣需要は利子率と国富の変化によって決まってくる」という方程式なのです。


こっちのほうが良いと思うんですがねぇ…(๑¯ω¯๑)?

さて、ここで1つ重要な事が出てきます。

前述の流通速度Vは長期的に下落傾向であり、その下落率は緩やかなので短期的には⊿V≒Vと考える事が出来たのですが同時に景気の上昇局面では流通速度は上昇し、景気の沈滞 (デフレ)時では下落することも知られていました。この相反するような状況も、MdとWの資産状況が変化することで利子率などの変化率の大きさと物価動向に影響を与えるという解釈が可能です。


さらに重要なことは f(i,W/P) であることから、物価変動を含めた通貨量の変化は「利子率・金利」と「実質の国富」の双方の変動に「同時に直接」影響するということがわかります。ケインジアンはおそらく通過供給量の変化が市場を通じて利子率の変化となり、これを受けて投資や生産が変化した結果、明目GDPが増加したり減少したりする…という長いプロセスを経ると考えていたのですが、そうではなく「通貨供給量の変化→明目GDPが変化」とダイレクトに伝わるという事を示しているのです。


これはアベノミクスの時、莫大な金融緩和で一年立たずに「一瞬で」2%以上の成長率急進した事を説明出来ます。立憲民主が政権の時と産業力は大きく変わっていません。総理が変わっただけで生産力が爆増するはずもないのです。産業力がシッカリ健在だった日本は、単にカネを撒いただけで利子率・金利(インフレ率)と明目GDPが同時に増加したということです。GDPの推移を見てみると、民主党政権時(2009-13)のタイムラグを考えた2010-13年の四年間の明目GDPは約505兆円→約508兆円と「全く増えていない」にも関わらず、安倍政権発足直後の2014年には約519兆円と、「立憲民主が四年間で三兆円しか増やせなかったのに、安倍は一年たらずで三倍増やした」という理由が「実質通貨供給量の増加にあった」というわけです。


つまり政策や宰相・政党の資質が重要ではなく「実際にカネを市場にばらまけたか?」が重要だったわけです。黒田日銀総裁は徹底的にカネを撒きました。実際に市場にカネが出回ったのです。これにより日本の景気が浮揚しました。逆に「なぜ立憲民主党の時は地獄だったのか?」についてはすでに別ページで書いたとおり、「日銀の白川総裁が、なぜか日本の成長率は1%」と勝手に思い込み、思い切った大規模金融緩和や持続的な金融緩和をしなかったからでした。



民主党政権が失敗政権となった、たった一つの理由について ←「金融政策 > 財政政策」という優位性があるから「しょうがなかった」というお話しm(_ _)m

https://kakuyomu.jp/works/1177354054885841125/episodes/16817330653756785721



簡単に言えば「白川がケチったために民主党は殺された」というだけです。逆に安倍政権が大成功し、アベノミクスで経済成長が可能だったのは「安倍氏が黒田氏という特異な人物を日銀総裁に据えたから」という事が大きかったということです。カネを撒けば上手く行く…ということだったのです。安倍政権 (ここでは2013年→2019年)では約508兆円→約558兆円と、「伸びが少ない」とはいうものの50兆円ほど伸びたのは一重に黒田総裁の超大規模金融緩和のおかげ…という結論です。


この事は物価Pにも言えます。ケインジアン達のいう貨幣数量説のMV=PYという式ですが、流通速度Vは長期的には下落、生産力Yは(経済成長するので)長期的には上昇…としても、VもYも短期的には大きくは変動しません。そこで変化率で見てみます。VとYが短期的に一定なら「1」のまま変化なしとすると、⊿M=⊿Pとなり、通貨供給量の増減が物価にダイレクトに反映するという事になる…と考えました。これらの結果から「通貨量の変化こそが、明目GDPや物価に相当の影響を与える(≒決定要因となる)」という結論になります。カネの役割を重要視するマネタリズムということです…m(_ _)m


カネをばらまけば景気は良くなる。しかし物価高で苦しむことにもなる…現在の世界にピッタリあっているでしょ(¬_¬)?



 ※     ※     ※



ところで皆さん、新自由主義者のイメージってどんな感じですか…(๑¯ω¯๑)?

良くはないんでしょうね(爆死)

カネに汚く、自分のカネに執着し、しかも「自分だけがカネを稼ぐ自由」を小煩こうるさく騒ぎ立てる連中で、「国債をいくら刷っても大丈夫」とか言ってる人たち…みたいな感じではないでしょうか?


実はこれ、間違えた新自由主義のイメージなんですよ…(๑¯ω¯๑)


現在、世界ではトランプやミニトランプという、少し極端な政策を採用する政治家が大統領になったりしています。たとえばアルゼンチン大統領のミレイ氏などです。こうした自称・新自由主義者はなぜかよく「中央銀行廃止」論をぶち上げます。これはなぜなのか? …実は、これこそが「皆さんの持っている新自由主義のイメージ」が「間違えている」事を説明できる話なのです。



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今述べたように、通貨の供給量の変化(増える・減る)こそが景気の良し悪し+物価に決定的な影響を与え、政府による雇用創出策や財政政策、租税、労働組合などの動向は「ほぼ無意味」という事がわかりました。カネが極めて重要ということです。


しかし重要なのはこの後で、通貨の供給量を一時的に増加させれば景気は上向くということは、Md/P=f(i,W/P)は等式が成立するのだから⊿MDになれば他の物価・利子率などの変化率・国富もまた⊿P、⊿i、⊿Wと一様に増加する。ならば仮に通貨供給量増加によって好景気を創出したとしても、結果として物価高を招いてしまう。これは貨幣の中立説に照らしても正しい。

これとは別に物価Pに関しては統計的に通貨供給量の増加のあとタイムラグが生じる事が分っていて(前述の通り)、それは18-24ヶ月くらい後にずれ込んでいる。つまり通貨供給量の増加の効果をリアルでリニアに確認することは出来ないということです。


ということは、時々の政権が人気取りのために通貨供給量を増やしたりして景気刺激を行っても、いずれは物価高で庶民生活が苦しめられ、この時に国債を増発すれば政府債務 (←国の借金ガー)増え、金利の利払いに苦しめられます。そのために増税が必要になってくるかもしれませんし何より物価高で生活苦になります。特に貧乏人が…です。しかも物価がどうなるかが正確に分からず、しかも物価は一度上がると高止まりする「インフレの粘着性」があることも分っています。


ということはその場しのぎで通貨供給量をイジって景気をコントロールするなどということは不可能だ…ということになります。


一旦金融緩和で好景気になれば、インフレが延々と続き、これを抑圧しようと金融引き締め(金利を上げたりする操作)などでカネを市場から引き上げたとしても、その効果によって却って失業や景気失速を招いて、これもまた庶民生活を破壊する、という結果になるということです。一旦、どっちかに振ったら最後、場当たり的に上げたり下げたりを繰り返し、効果はその都度増幅されるので益々強い手段を講じるしかない。だとすると最後は激烈な物価高か、悲惨な景気後退に陥るリスクがある…


だったら最初から景気安定のためには通貨供給量の伸びを機械的に決定し、ある一定量だけバラ撒けば良い。これなら理論上、撒いた分にふさわしい物価高にしからならず、景気も持続的に安定して成長できる。そしてカネをばらまくのだったら国債で良いではないか? なら中央銀行はいらない。むしろ公開市場操作や金融政策で庶民生活を破壊する。だからいらない…と。

これはまたMMTとも違います。MMTは「国債をバンバン刷って景気回復」を目的としていますが、新自由主義者は「国債バンバン刷るな」派です。「毎年一定量のみ」だからです。「景気を政府がいじるな」と言ったほうがいいかもしれません。


どうでした? 意外でしたか…(๑¯ω¯๑)??

本来の新自由主義者は、毎年の通貨供給量は一定の割合で増やしていけばよく、それ以外はいじるな…ということだったのです(驚愕)


後のことを考えて、必要上のカネを撒くな(ꐦ°᷄д°᷅)💢 …ということです


マネタリズムは本来、カネの働きを極めて重視しています。カネの総量で景気・失業・国富・経済成長や利子率などが決定できるのだから、だったら安定した経済環境を構築するために「カネは一定程度、撒く」だけにすれば良い…という理屈です。それは政府の仕事で、中銀は存在しなくてもいい…という話になってきます。このため新自由主義者は「国債はいくら撒いてもOK」とは絶対に言わないのです。そんな事したら最後、猛烈な物価高で国家破滅しかねないからです。人間ごときの知恵でカネをコントールすることは出来ない。だから辞める。ほったらかしにしておいた時に発生する金利 (≒成長率)の事を中立金利というのですが、この中立金利を確実にする程度のカネの増補があればよい…くらいなのかもしれません。

これはまた巨大な政府、大きな組織を嫌う新自由主義の信条からも納得感があり、「中央銀行が恣意的にカネの総量を決めるな!(怒)」ということだからです。だから新自由主義的な指導者は中央銀行を潰すとか(ミレイがそう)、中銀の管理通貨制度の能力を阻止し、その代わりに金本位制にする(トランプ)などという話をしたがるのです。



 ※     ※     ※



んでは、筆者のワイはどう思うのか? …ですが、「無理じゃね (  ̄ー ̄)y-~~」です。同じ新自由主義者ですが非現実的過ぎて草です。

反論はざっと10個くらいありますが、一番最初に言いたいのは市場 (=世界)を決定するのは「市場で作られる金利」ということです。カネ(国債)は金利を生み出し、金利を管理することの出来る決定的に重要なツールですが金利そのものではなく、市場は合理的でもなければ金利に関して将来を正確に予想する決定打と言えるような金利方程式はありません。非合理的で流動的、そして時に感情的な存在なのです。ならこんなヒステリックな金利を、一定量カネ撒けば抑え込めるなんて気楽なわけもなく、実際に一定量カネバラ撒けばそれで持続的な経済成長したという保証もありません。


何より管理通貨制度は金利を管理する有効なツールであって、これには中銀という打出の小槌が必要です。国債の出し入れでカネと金利を作り出す源泉です。ミレイが自国アルゼンチンの中央銀行を潰し、米ドルを事実上の自国通貨にするというのは確かにパナマのような小国ではやってることではありますが、そもそも論として「アルゼンチンの中銀をFRBに置き換えただけ」で、ドル金利政策に脆弱なアルゼンチン経済が巻き込まれてむしろ弊害だらけになるのではないでしょうか?


トランプにしても今更金本位制に戻すとしても、米国の国民資産は数万兆円に相当し、金本位制ならこの全額を地金のGoldを準備しておかねばならないですが、地球上の全ての金の産出量 (未発掘分含めても)数千兆円程度でとてもまかないきれません。なら金本位制に移行するということは深刻な資金不足をもたらし、それは激しいデフレ要因となることは19世紀の英国経済が経験してきたこと…とはケインズが100年も前に喝破したことでした。


要するに「いまさら無理よ…(  ̄ー ̄)y-~~」ということです。


また高瀬本人も貨幣を重視するものの過信する気は更々なく、むしろ市場における金利動向を重視すべきという現実主義(もしくは計量経済学的)という立場です。よって国債を重視しているのがこのコラムの要諦です。金利という「市場の悪魔」を管理するツールに中央銀行が絶対に必要だと思うのです。日本の国債整理基金特別会計のように日銀に溜め込んだ日本国債を「日銀という銀行の資産」として運用する…などという酷いペテンをやってのけるためにも必要です。現代の複雑な金融環境をシンプル化するのは危険ということです。通貨量を過信しすぎて失敗する…これは20世紀の新自由主義者の過ちと言われる所以ゆえんだと思うのです。


2023年12月、今日の時点での日本を考えてみます。

新コロに加えて激烈インフレ+ウクライナ紛争+イスラエル・ハマース戦争…と、まあ、目を覆いたくなるような悲惨な事ばかりですが、しかし日本の明目GDPを見てみます。すると…


2020年 約539兆円

2021年 約550兆円

2022年 約557兆円

2023年 約589兆円


…と爆発的に増加しているのです(爆笑)。パンデミック・インフレ・戦争と本来なら文明が破滅してもおかしくない地獄で50兆円も伸びているということです。

「ありえない…ಠ_ಠ;」はずなのです。


しかしこれも Md/P=f(i,W/P) の式で考えるとわかります。この式の真意は「カネを撒けば、金利や利子の変化率・実質国富の双方が共にリニアに増える」という事だったわけで、実際、この時期に日本政府が新コロ対策で「真水」と呼ばれる大規模な国債発行を続けた(=通貨供給量を爆増させた)のでGDPも増えたというだけのことでした(撒いた総額はだいたい毎年20-30兆円くらい)。


しかし同時に思うことがあります。2022年〜2023年の「好景気」の理由です。この理由はもしかしたら日銀や日本政府の通貨供給量増加だけではなく、米国の金利上昇の影響もあるのかな?…ということです。


米国での金利上昇受けて日本の利子率・金利の変化率iが上昇(⊿i)。するとf(i,W/P)なので⊿iになれば比例して⊿W/Pとなり、また等式(イコールの関係)にあることから⊿Md/Pになります。ということは金利や利子率が上昇したことにより、結果として国富Wも⊿W、物価Pも⊿P、通貨量Mdも⊿Mdになるのです。つまり1つのパラメーターが上昇したことで他の全てのパラメーターも一緒に増加したと考えているからです。

「現在の日本で明目GDPが爆増しているのはなぜか?」に対する答えになると思っていますが、この時に日銀が金融緩和を続けているからなのか? それとも米国金利の上昇が日本の金利を押し上げ、その結果なのか?…が今ひとつ分かりません。「市場における通貨量が絶対」というわけでもなく、金利動向によってMdやPが上昇圧力を受けている…とも考えられるからです。これらは後年、分ってくることだろうとは思います。


逆に言えば、前述の疑問「なぜ日本は多額の国債 (カネ)をバラ撒いたのに、何時までたっても物価が上がらないのか?」に関しても、日銀のゼロ金利政策〜YCC操作によって金利が意図的に抑え込まれ、結果、利子率・金利の変化率iがほぼ固定。このため他のパラメーター「Md/P」「W/P」も動けずに固着したのですが、大規模金融緩和は続けたためにMdだけは増加。これは方程式右辺のWの増加にのみ寄与しました。なぜなら富Wは「現物の現金や預金(=Md)+証券、債権、人的資源に加え天然資源や産業力・財サービスなど有形無形の全ての国家の資産」であり、MdはこのWの中の一部の構成要素に過ぎないからです。


方程式の全てのパラメーターの増加率はゼロの時に分子MdとWだけが増加し、その分子を構成する要素Mdは、そもそも同じように分子を構成するWの一要素なのです。ならば「⊿Md ∝ ⊿W」となり、結果として現金や預貯金ばかりがやたらと増えまくったこの10年という事になったのです(M2は1400兆円以上、M3は2200兆円前後)。


…と考えると、Md/P=f(i,W/P)の方が遥かに座りが良く、また理解もしやすいのですが、他で見かけたことがなかったためにMV=PTで考えてみたのが前話数です。と同時に新自由主義者は通貨量に絶対的な価値を置いていたので、逆に…


やたらとカネの量を増やすな(ꐦ°᷄д°᷅)💢


…という、国債バンバン刷っちゃだめ派だったという話です。ま、(国の)借金は計画的に…ということかもしれませんが(爆


こんな話も一応、付け加えておきますね( •̀ᄇ• ́)ﻭ✧

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