§5-2-8・財務省によって砕かれたアベノミクス。必要だったのは減税

○「HmV=PY」の時、貨幣乗数mと流通速度Vがやたらと死にまくっていた理由→「早すぎた増税」


アベノミクス失速の理由をまずはモノの側面から覗いてみます…|д゚)チラッ

景気を冷やした理由ということです…m(_ _)m



  ※     ※     ※



○増税による景気失速について


 インフレ・デフレは、カネとモノとのアンバランスによって生じる。カネが多すぎるかモノが少なすぎると「物価高」というインフレが発生する(デフレはこの逆)。そしてもう一つ、「インフレは経済成長をもたらす」。よって安倍政権下の7年間に400兆円もカネを撒いた(GDPの8割相当)のだから、通貨膨張インフレ(カネ多すぎ)→経済成長→物価も上がったが皆の所得も増えたヽ(^o^)丿…になってないとおかしかった。

 

【参考】つ §2-1・インフレとデフレについて100人のガミラス人の村で考えてみる(c.v.神谷浩史)

https://kakuyomu.jp/works/1177354054884987864/episodes/1177354054885009975

 

しかし、そうならなかった…(눈‸눈)

低成長のままだった。

その原因は、貨幣乗数mと流通速度Vが致命的に低かったせいだった。




○増税という失策 →ケチのむく


 前々回の検討で、モノを買わないので流通速度Vが上がらなかった(≒物価上昇インフレが発生しなかったので政府債務が減らせなかった)という事と、カネがカネを生み出すメカニズムに何処か問題があったために貨幣乗数mが低下したことを探った。


 そこでまず今回は、手取り賃金の上昇の主因である「物価」について考えてみる。物価が上昇しないと賃金は上がらない…と一般的には言われているのだし(←これが最低賃金を引き上げるだけでは中小零細企業がヘタって死滅する理由)、アベノミクスのお題目でもあったはずだ。そこで景気回復に絡む流通速度Vについて考えてみる。

 

 流通速度とは一定期間にお金がどのくらい皆の財布から出たり入ったりしていたか?…なのだから、消費行動の手がかりだ。これは「デフレ時の頃と比べて殆ど伸びがなかった」。アベノミクスは定石通り、金融政策→財政政策(政府)という手順を踏んでいたから、この財政政策の結果、消費力が向上して物価上昇→インフレ成長→労働者の賃金上昇…の流れのはずだが、現実には失速したのだ。


そこで同時期に同じような大規模緩和で好景気を回復したトランプ政権と比較すると唯一、「大幅減税」が日本にはなかったのである。

 

 トランプ大統領は停滞したオバマ政権末期の経済状態を打破するために、富裕層〜中間所得層まで段階的に大規模な減税を繰り返した。消費喚起のためだった。この結果、富裕層の納税比率は、中間〜下層所得層と同じ33-35%程度にまで激減し、中〜高所得層の消費力が向上した。加えて中間層までの大規模減税を段階的に実施したこともあり、全所得階層で消費が回復した。特にトリクルダウンに近い効果がアメリカではある程度は認められて、低所得層もまた好景気と賃金上昇の恩恵に預かれた。みんな賃金が上がったという「ささやかだが幸せ」実感があり、これが消費に回って国力増強に寄与した。Make America Great Again = トランプラリーと呼ばれる好景気だった。これはトランプの偉大さと言えた。

 

 さらにこの時の物価上昇圧力は「カネを沢山持っていても物価高インフレでカネの価値が下落する」ことから「なら、とっととカネ使っちゃおう」という益々旺盛な消費行動へと向かわせた。これがまたまた消費を生み、雇用を生み、国内市場を強化し国力を増強していくのだ。インフレ圧力の強い国で消費力旺盛なのは「カネの価値が下がっていく」事を回避しようとする「インフレヘッジ行動」を取り始め、モノの購入(特に中古価格の高いもの)や不動産、Goldなどの購入が進むものだ。筆者が「物価高がなければ個人所得の上昇はない」というのは、このアメリカの動きを見てのことだ。そして物価高を誘引する大規模減税が米国にはあったのだ。


 事実、ダウはこの後、新コロの悪影響がでる2020年2月末まで一本調子で上がり続け、同年の大統領選挙では米国左派知識人層アメリカン・パヨクの予想に反して、トランプは歴代二位の7100万票もの得票と、なにより黒人・ヒスパニック・女性など「マイノリティ」の彼への投票率が前回2016年よりも上昇する〜つまり貧困層などの支持も高まったという劇的な効果を生んだ。減税が劇的な効果を生み、結果として米国最強+連邦政府租税収入も自然増するはずだ…という真実を直感で見抜いていたのだ。なにより「増税はデフレ要因」だということを知っていたのだ(トランプ立派!!

 

 いよっ、大統領(^p^) ←トランプさん

 なせばなる。ナセルはアラブの大統領(爆死


 では安倍政権下では…(눈‸눈)?

 同時期、日本は実は「一度たりとも減税がなかった」のである(死


 二度の消費増税に加え、所得税率のアップの他、様々な増税と徴税強化が行われたために個人は景気回復実感よりも重税感が広がった。特に中間層の増税感は大きく、消費は失速した。このため物価高インフレが発生せず、賃金上昇圧力も鈍って勤労所得の増加が望めなくなった。これは特に非正規雇用の下層所得層で顕著で顕著であった。日本の殆どをしめる中間〜下層所得層で所得の伸びがなく、増税感だけが残ってしまったために、ますます景気を冷やし、国内市場の伸びの鈍化を招いたことから企業も国内投資・勤労者への所得増加の理由が無くなってしまった。負の連鎖だった。

 

 あるのは唯一、人手不足による賃金上昇だったが、これも非正規雇用枠の拡大により社会全体の賃金上昇圧力にはならなかった。というのも正規雇用は「深夜労働」と「ボーナス」による加増割合が大きい。非正規雇用は時間あたりの賃金が正規雇用と同じでもボーナスや時間外労働がないorサービス残業化しやすいために、手取りの増加が見込めなかったからであり、この非正規雇用枠の拡大が国民所得の増加がなかった理由の一つだった。非正規雇用がますます貧乏に追い込まれたのである…(:_;)


 同時期の米国には、大幅な減税という呼び水により消費向上→物価高→賃金上昇→更なる消費力向上→景気回復…のインフレ成長圧力があった事と全く対称的だった。「大幅減税」というトリガーを引かなかったために「金融緩和じつだん」が不発弾になってしまったのである。

 

 

ちょっとまてや(# ゚Д゚)?!

法人税は減税したやろ…(# ゚Д゚)!?



…と言われそうである。確かに安倍政権下で法人税減税は「した」。この間、大体1兆円程度の法人税減税があった。しかしこれにはカラクリがあり「法人が支払う所得税」=「所得税額控除」額の方が伸びたのである。


…(´・ω・`)?


 法人は利払い・配当などを受け取る時、15-20%の源泉所得税が課せられるが、これは法人税から控除され、法人が払う所得税となる。当然、個人が支払う所得税科目の中に繰り込まれるのだ。法人でも所得税を払っているのだ。そしてこっちの金額が実に約2兆円程度伸びていて、実はトータルでは「税負担が増えていた」のである。法人税減税は「見せかけ」のようなものだった。そして(みせかけでも)法人税減税と金融緩和で企業業績を上向かせ、その配当金をごっそりいただく…財務省はこんな風に考えたのかもしれず、事実、そうなった。


 なるほど、この法人税減税は国内の中小企業にとっては福音だった。これは海外から回収した知財や版権収益を主に狙ったもので、海外に資産を移転させたり投資したりする余力のない町工場など国内製造業者にとっては実質減税になった。ということはこの法人税改革は「海外で投資で稼ぐ金満な企業」を狙い撃ちにしたものだったと解釈することも可能で、確かに国内企業保護政策の一環とは言えた。

 

 そう考えると所得税の徴税強化と同時に実施された高所得層への税率低減も、ある程度は納得がいく。日本において年収一億円以上の高額所得者は二万人程度しかおらず、その六割が株などの金融資産による高額所得者だった。日本ではトヨタの社長でさえ米国の中規模企業のCEO程度の所得しか無く、アタリを出した漫画家や芸能人、スポーツ選手を除けば医者や社長でさえこの水準に達するのは難しいほどのデフレ国家だった。柳井や孫正義や三木谷なんかの悪どくカネを稼いだごく一部の連中が、ビルゲイツのような米国の高所得企業家のように慈善事業もせずに溜め込んでいるからジニ係数(国民の貧困率指標)が上がるのであって、実のところほとんどの国民は「所得が低いまま」だったのである。これでは米国のように高所得層10%くらいが全米国資産の半分以上を保有する…という国のような高所得層への減税効果や、トリクルダウン効果など望めない。

 

 そのため日本の高所得層への所得税率の低減はむしろ、この法人所得税に対するものではないかと疑われるほどだ。従来の高課税率では大企業および海外輸出・海外展開型企業(これは日本の産業の主力業種)負担があまりに爆増しすぎてしまい、本当に景気失速を招きかねないからだ。逆に言えばこれが日本企業などが海外で稼いだカネを日本に持ち込まないことにも繋がったのではないか? 円に戻せば課税されるし、海外に残置すれば円安のままだ(←日銀財務省大喜び)。しかも金利がおしなべて日本より高い海外なら投資のリターンは遥かに大きい。この流れも手伝って、「国内市場は魅力無い(:_;)→やっぱ海外に」という悪い流れになったのではないか??

 

 個人に対しても課税対象枠は拡大された。所得税だけでなく固定資産税や相続税(55%にアップ)等、幅広い増税が行われた。このため個人もまた消費に向かうカネと意欲が削がれたと考えるべきだろう。さらに、二度に渡る消費増税は結果として大打撃となってしまった。数字だけみると、安倍政権以前に比べて5%→10%へと倍に増やしていて、GDPに対する消費力の減衰は二度の増税により10兆円を超える消費の落ち込みをもたらしたと推定されている。特に消費税は法人税・所得税に比べて景気動向に左右されにくいため「財務省にとって都合のよい」財源だ。財務省にとって消費税は「やらない理由がない」税制でもある。

 

 特に致命的だったのはタイミングで、安倍政権下での二度の消費増税は2%インフレが達成してない「準デフレ」の時期に増税したことだった。増税は常にデフレ要因だ。やりたいのならば、好景気(バブル)の時にでもやるべきで、事実、1989年の最初の導入時(竹下内閣時。当時は3%)には目立った消費減衰はなかったとされている。この頃はまだバブルの残滓があり、物価高インフレが続いていた時代だった。そのため消費増税分のショックは大きなものではなく、実際に消費力はすぐに回復している。安倍政権でいうならば、米国のようにインフレ率が2%を超えるほど確実な景気回復と強い景気過熱バブルが発生してから消費増税はすべきだった。それなら合理性は通る。しかし実際には景気過熱感が出る前に実質増税の嵐だったために、そもそも消費力アップ→所得もアップ…などということが「起きるはずがない」。


 これでは始めから失敗するに決まっていた。その結果どうなったか?

 平成三十年度の国民生活基礎調査によれば、一世帯あたりの平均収入が平成六年度は約664.2万円あったものが平成29年度には551.6万円と約110万円以上も減っているのである…


仰天…(゚д゚)!?


 しかもこれは高所得層まで含んでの計算であり、また新コロ以前のアベノミクス絶好調だった時期のデータでもある。アベノミクス最高潮の時期に、この不様さだったのである…(:_;)。

 この資料はNHKニュース2019年7月2日配信のデータなのだが、この時同時に「世帯の意識調査(平成30年度)」も記載されていて、そこでは子供がいる世帯の「生活が苦しい」「やや苦しい」の割合が62.1%と、平均57.7%・高齢者世帯55.1%の割合を遥かに越えていたのである…(゚д゚)!?

 

 この理由は「現役世代の所得の伸びが止まってる」←一択

    

 この理由は一つしか無い。財務省のバカども考え方に「国の借金を返す」〜プライマリーバランスを均衡させる…ただこれ一点しかないことだ。儲けが出たら、すぐに「借金返済に当てる」…これしか考えがないから、景気浮揚に失敗するのだ。実に愚かなことだ(激怒)。

 

 同時期の米国FRBが雇用(インフレ成長)と景気(物価高抑圧)のバランスを考え、連邦政府財務省もまた常にFRBに歩調を合わせるかのように「景気回復による税収入の自然増」を狙っていたことと「全く正反対」の、実にバカげた考え方だった。日本の財務省が「景気よりも何よりも借金返済」と考えているから、この大失敗を招いたのだ。国民所得が少しでも上がれば財務省がそれを取り上げ、「拾った小銭でも国の借金返済に当てたがる」という実にケチ臭い発想から、好景気を呼び込む前に連続増税を繰り返したために国内消費と市場の拡大を阻止してしまった。

 

 減税を行うことで国の歳入は減るだろう。しかし景気回復まで我慢すれば、税収入の自然増(それも大規模な)が待っているだけでなく、その後の過熱景気バブル退治の一環としての増税ならば(景気失速を招かない程度なら)経済が許容することもできたし、むしろバブル退治として市場関係者から「好感」されもしただろう。米国は実際そうで、好景気の時に増税(減税分を戻す)を繰り返して景気の腰倒れを回避しているのだ。他方、財務省主導の日本では、減税も景気回復も我慢しきれない一方で、大規模金融緩和で「国の借金」は増える一方になってしまったのである。まさに日本はバカの国だ。財務省というバカのせいで、だ…(:_;)

 

  ※     ※     ※

  

 アベノミクス失敗の1つ目の理由は、財務省が景気回復よりも国債償還を第一としている政策の致命的失敗によるところが大きい。

 流通速度Vから見ると、増税のせいでGDPの六割を占める国内市場の伸びがほぼなくなってしまった事が分かる。大規模金融緩和を始めるならば、十分な景気回復までは減税+財政・金融政策による莫大な出費を続けるべきが鉄則なのだ。景気が回復基調に乗れば租税収入の自然増があり、また増税によるバブル退治も可能だ…これだけなのだ。

 

 なにより、貿易赤字垂れ流しになるくらいに国内消費が旺盛にならなければ「物不足インフレ」など起きるはずがない。逆にいえば多額の「国の借金ガー」ある日本が貿易赤字を垂れ流せば、将来不安から円安圧力となり物価高をもたらす(でも多分一時的…)。庶民にとってはシアワセではないがインフレとはそういうものだ。この高インフレは「カネを持っていても価値が毀損きそんするだけ(←物価高がどんどん進む)」なので、ますますモノの購入意欲が出てくる〜インフレヘッジ行動へとつながる。よって庶民のモノ購入意欲による物価高インフレをもたらすことが出来なければ、結局、政府債務など減らないし経済成長も出来ない。そのために減税がMUSTだったのだ。

 


 この失策は、まるで天明の大飢饉の時の仙台藩の失敗に似ている。

 天候不順により凶作となったのは事実だが、それ以前に仙台藩は米を担保に大阪などの豪商から多額のカネを借りていて、これが米市場の先物契約(堂島米市場)により「なにがあっても先物契約時の米量を納品しない限り、仙台藩はデフォルトになる」という藩政危機から、不作のときの強制挑発という無謀な行動に駆り立てた。僅かな収穫米はおろか、来年の作付けのための種籾まで税として挑発してしまい、結果、仙台藩だけでも数万人の餓死者を出すという愚策この上ない結果になってしまった。事実、他藩では仙台藩ほど多数の餓死者を出さなかった所が殆どであり、なにより召し抱えられていた仙台藩士には餓死者は出ていないというのだから、もはや人災だ。てか、官僚丸儲けとはまさにこのことだ(怒)

 

 現在の財務省のやり方はこの時の仙台藩と全く同じで、ちょっとでも景気回復しようものならすぐに奪い取ろうとする。しかしこの増税は、好景気なるための貴重な「種籾」を奪い取るような行為なだけでなく、金融緩和という「作付作業」で生み出された多額の債務償還さえ不可能にする愚策なのだ。借金返済のために全日本国民が餓死するようなら、財務省など解体すべきだ。国力を減衰させてまでも闇雲に債務を減らせばよいということではない。借金を返済した時、家屋敷全てがなくなってホームレスになってしまった…では意味がないのである!(激怒)。


 ケチ臭い意識しかなければ、ケチにしかなれないのである…(´тωт`)。゚

  

 ホント、財務省の連中には「大きく損して、大きく得奪れ」というユダヤの格言を徹底的に叩き込ませたいですね(:_;)

 借金のことばかり考えているのでは、永久に日本は復活できないんじゃないですかね??…と(:_;)



 

  ※     ※     ※



P.S.

補足なのですが、通貨の流通速度はあくまでも「通貨」の流通速度で「モノの流れ」ではありません。本文で少し誤解を招くような表現になってることをお詫びいたします。


もともとフィッシャーの方程式では「物価P × 生産量T=貨幣数量M × 流通速度V」なので、物価の上昇・減少は通貨量の増減に比例するという事になります。このため通貨供給量が増大している現在においては流通速度は一貫して減少しています(お金が一巡するペースが、お金の総量そのものが増えたために鈍る…ということ)。また流通速度Vは、経済慣習に支配されるために短期的には一定であると仮定されてもいます。もっと分かりやすく言えば「流通速度=GDP/マネーストックM2」なので、現在のような莫大な金融緩和によってカネが溢れている先進諸国では、だいたいどこの国でも0.5±0.1の範囲内のようです(マネーストックの会計が各国によって違うことは注意が必要ですが…)。


しかしアベノミクスで大規模緩和がなされたために流通速度Vが低下することはありえるとは思いますが、その後の景気回復で短期的には流通速度は上昇するはずでしたが、その上昇が続かなかった理由が「日本の長期デフレ」という経済商慣習を打ち破ることが出来なかった→カネを使わない理由として増税による購買意欲の低下なのではないかという推測より、この話を進めています…m(_ _)m


ただし筆者は流通速度を重視しているわけではなく、景気はほぼ全て「債権の市場金利」で決まるとも考えていることを付け加えておきます。



   【 この項目続く 】

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