第二章 日本が国債を発行し続ける理由〜インフレ・デフレと通貨と国債の関係について

§2-1・インフレとデフレについて100人のガミラス人の村で考えてみる(c.v.神谷浩史)

  ※     ※     ※



 まず、国債の乱発による国家経済の破滅という形を「ガミラス戦役」の地球というアナロジーで考えてみた。

 文明を支えるためにはエネルギーが必要だ。そのエネルギー状態の如何で生死が決まるほどだ。

 我々の論旨では、次元波動エンジンのエネルギー転用が可能か否かの二つのパターンがあり、展開が好対照をなすほど違ってしまうということを類推した。


 片方は経済活動全般が崩壊し、文明そのものが消えてなくなろうとする悲惨な社会の姿だった。


 もう片方は経済に活性化の可能性があり、産業の復興も見えては来るものの、恩恵に預かれる者と預かれない大多数の者とに分断され、貧富の格差と社会混乱が広がる可能性を示唆した社会だった。活力はあるが、強い者・時節を得た「運の良い者」だけが、まず生き残るという不平等な社会の姿だ。どちらにしても、あまり幸せな社会ではない。


 挙げ句、どちらのフラグを通るにしても、行き着く先は同じだった。

 国家が「国債」という名の債務を、返せるはずもない程の莫大な量、抱えこんでしまって窒息死しそうだ・・・というバッドエンドだ。


 例えるなら、まるで「血液」のなかに悪性の血栓が出来てしまい、流れを阻害しているという感じだ。

 逆の言い方をすれば、経済力がある国家だろうと何だろうと、国債を乱発すれば不幸な社会しか残らない・・・そう言えるのかもしれない。


 しかも国債乱発による国家破綻という話しは別に戦争に起因するばかりではない。戦争による国債の大増発と国家破産の例は「わかりやすい」し「事例が沢山ある」から使ってみただけのことだった。


 なるほど、ガミラス戦役のように「呼んでもいないのに勝手にやってきて、我が家に火つけていきやがった」という「やむを得ない場合」もあるが、そうでない場合も結構沢山ある。いまがそうだ。日本は平和なのに国家債務がゼロではない。むしろ逆だ。GDPの二倍もの債務を抱えている。


 実はアメリカだって似たようなものだ。最大の戦勝国だったのに、戦後およそ70年を経て1800兆円もの国家債務を抱えるに至った。彼らは日本よりもっと悲惨で、わずかここ15年で四倍にも増えた。

 これは戦争に勝っても敗けても、結局、莫大な国債を抱えるという事実に行き着くということを意味していた。何をどうやっても国家破産からは逃れられないということかもしれない。


 ではなぜ国債を発行するのか?

 死に至る病の原因はなにか?


 国が足りない予算を捻出するのに国債を使うのは常套手段であるし、逆に言えば債務が増えるということも判っている。ではナゼ、国家が財政的に破滅すると判っているはずなのに国債を乱発するのか?


 国債は「必要」だから発行している、と考えるしか無い。


 そこでその理由を考えてみる。そのためにはインフレ・デフレと通貨と国債について簡単に話しをしようと思う。


  ※     ※     ※


 まずインフレ・デフレについて、極めてシンプルなモデルで簡単に説明する。


 ここに100人のガミラス人の村がある。そこで一日100個のパンが作られる。一人あたりの一日の消費量を1個とする。すると一日100個のパンが食べられる。そして一個100円だったとする。ということは、この村の一日の食費の総額は一万円。


 この時、何かの理由でパンの生産量が落ち、日産50個にまで半減したとする。たとえばパン屋が火焔直撃砲を受け、パン焼き窯のいくつかが壊れてしまい、治すのに相当時間がかかりそうだ・・・とかだ。

 村人にとってパンは生活必需品なので何日も食べないわけにも行かず、1個100円だったパンに、誰かが「110円でいいから売ってくれ」と言い出した。


 1個110円で売れたが、残り49個に対して需要がより切迫し、

「ならワシは115円で売ってくれ」

→1個115円で売却

→残り個数48個(よりも更に減ったかもしれない)

→より需要切迫

→「たのむ1個150円でいいから売って」

→1個150円で売却


・・・の流れになっていったとする。そして、この状態をインフレと呼ぶことにする。

 結果、ある段階で1個200円になったとする。


 この場合、もともと1個=100円だったパンが、1個=200円になったということだが、それはパンの値段が倍に値上がりしたというだけでなく、1個のパンにもともと一枚の100円玉で済んだものが二枚に(負担が)増えたということでもある。


 つまり「お金の価値が半分に下落した」ということだ。必要となるお金の枚数が増えてしまったと言ってもいい。札束の山でパン一個を購入するというイメージがそれだ。


 このためインフレとは「お金の価値が下がる」という状態のことを言う。


 この状態の時、ガミラス人たちが「生活が苦しい!」「もっと安いパンくれ!」と大騒ぎしたとする。

 インフレという生活苦の時に、ひょっこり地球人の古代進さん・雪さん御夫婦が黒鉄くろがねのフネに乗ってこの村にやってきて、

「ワタシ、パン屋始めますよ。1個150円で売りますよ! こんだけ安ければ売れるでしょ? 利益は数を売り飛ばして勝負です!」と新規参入したとする。


 この地球製パンが100人のガミラス人の村で受け入れられ(村人に許容できる程度の質があったということ)、1個150円で販売され始めた。また生産量も大きく、村人の需要にある程度応えられた。


 このため、既存ガミラス人・クラウス(c.v.神谷浩史)の1個=200円のパン屋は客足が途絶えてしまった。地球人に客足を奪われたのだ。

 このままでは彼も倒産するので、対抗策として1個=140円として販売し始めた。また生産力も増強しようと試み、成功したとする(失敗すれば倒産するとする)。

 すると今度は地球人のパン屋も対抗策として1個=130円と価格を下げ、またさらに数を沢山得ることで利潤を確保しようとする。


 このように、物の値段が下がることをデフレということにする。

 この繰り返しで値段がさがり、やがて1個=100円以下になったとする。


 この場合、いままでは1個買うのに二枚の100円玉が必要だったのに、いまでは一枚で済むということだ。つまり「パンの価値が半分に下落した」ということで、デフレとは「物の価値が下がる」事をいう。


 厄介なのは、元の1個=100円で踏みとどまらずに「安値競争」が続くことがある、ということだ。例えば相手企業の絶滅と、その後の市場独占を狙って安値競争を互いに仕掛けあうという場合だ。現価が30%だとすると、1個=31円までなら死んだ気になって下げられる・・・という狂気の決断をするかもしれない。

 当然、ほとんど何の利益も出なくなり・・・


パン屋の労働者は長時間勤務の挙げ句、給料がほぼ上がらない

→消費に使うお金無い&貯金するお金ない

→市場冷え込む&銀行貸出し出来なくなる

→パン屋設備投資できない&他のお店も儲からない

→なら企業は生き残るために安いものを作るしかなくなる

→ほとんど何の利益も出なくなり・・・


という悪循環が続いて景気は沈滞する。このような長期の物の価値の下落状態になった場合、デフレ・スパイラルなどということもある。


 つまりインフレは通貨の価値が下落すること。デフレは物の価値が下落することだ。

 どっちも良くないのだが、なぜか一般的にはインフレの方が遥かに悪いと考えられている。インフレは際限がなく、また過去、多くの国が苦しめられてきたからかもしれない。

 ところが、妙なことにも気づく。


 インフレの時、「地球人登場!」という新規参入者がやってきて村に「生産拡大」が起こったとも見ることが出来る、ということだ。

 つまりパン屋が増え、パンの総生産量が上がったということである。


 ならば「インフレは生産力の増強に寄与する場合もある」と考えられるということだ。

 逆にデフレの時には、「儲けが出ないから店、畳もう」という「生産縮小」が起こる可能性がある。


 そこで「ある国家の生産力をあげるためにはどうするか?」という経済成長政策を考えた時に「インフレを人為的に起こせば、結果、経済は成長するではないか」という発想が出てくる。

 そしてインフレは通貨の価値が下がるということ。別の言い方をすると、必要となるお金の枚数が増えることだった。


 ならば逆に、市中に通貨の供給量を増やせば良いということになる。お金の枚数が増えるので、モノに対して必要となるお金の枚数が増えるようになるはずだからだ。このデフレからの脱却の方法をリフレーションなどとも言う。

 みんなの財布の中身を増やしてやれば経済成長が出来る、と言っているようなものである。いい事づくしだ。


 ではどうやって通貨の供給量を増やすか?

 これのために国債が必要となる。


 しかしその前に「お金」、つまり「通貨」とは如何なるモノかについて、もう少し話しをしようと思う。

 実のところ、通貨=国債なのだが・・・


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