§5-1-14・2020年、新コロパンデミックをカネだけで考えてみる…アメリカ編・前編(๑¯ω¯๑)

2020年…(:_;)


この年は本当に酷い年だった。年初より突然、中国武漢でCovid-19(以後、新コロ)が発生し、年末までに先進国を中心に100万人を超える死者を出すパンデミックとなった。この謎多き新型伝染病の病理学的治験や発生原因等については諸説あるため、ここではもう言及しない。


かわりに、このコラムの基本的なコンセプトである「カネの流れ」…つまりインフレ率を中心として、国債・債券・証券、金利の動きなどの「通貨的現象」で国家や文化、人間および人間の諸活動を再構築するという方法論に従って、新コロ時の世界の主要各国の動きを主にカネの面だけで考えてみることにしたい…


…のであったが、この「カネ勘定」でさえ実は「結構不正確」であることを、まずお詫びしたい。


ごめんなさい…m(_ _)m


というのも2020年3月以後、欧米で爆発的かつ急速に感染が広がり、一気に30万人以上の死者を出してしまい、この感染爆発阻止のために主要各国で都市封鎖や国境閉鎖が相次いだ。結果としてグローバル化した人類の経済活動がズタズタに引き裂かれ、過去に例のないほどの大規模な損失を出してしまっただけでなく、政府機能も大部分が機能不全に陥り、各国政府発表の基礎データさえもが止まってしまうという異常事態になってしまったからだ。


そこで、あまり当てにならない当時の資料を精査するよりも、大雑把に当時の世界および各国の「危惧すべきカネの問題」という、ちょっと普通でない視点から概観してみようと思う。



 ※     ※     ※



世界経済を牽引するアメリカのカネの流れを語ることなしに、新コロを語ることは出来ない。そこで2017-2020年の米国のカネの状況をザッと確認してみたい。前回までの話と重複するのを覚悟の上で、だ。


この時期、トランプ政権下の米国は大規模な減税と独善的な自国中心主義的貿易外交によって好景気に湧いていた。しかし極めて重要な問題が、この「ワガママなハゲ」…もといトランプ大統領によって生じていた。彼は2018年ごろからFRBに対して、


「金利を下げろ (# ゚Д゚)!」

「金融緩和しろ (# ゚Д゚)!」

「ドルを下げろ (# ゚Д゚)!」


…みたいな口撃、つまり恫喝を始めたのである。これは超アカンだった(怒)。

そもそも大統領がFRBに圧力を加える事はタブー中のタブーだったからである。



  ※     ※     ※


米国FRBは伝統的に「インフレと失業」のバランスを重視している。

インフレとは経済成長のことであり好景気のことだが、過度なインフレは市民生活を圧迫する。よって「悪魔」に例えられるほどだ。他方、失業は不景気時に発生する。そこで適度な好景気を持続させるために、状況に応じてインフレ退治(金利を上げる・米ドルを市場から回収する)を行う。好景気を抑圧し、物価高や過度な賃金上昇を抑え込むのだ。逆に不景気の時には金融緩和(金利を下げる・米ドルを放出する)で景気刺激を行う。これにより景気回復…特に労働者の失業を防止するのだ。FRBの金融政策はこの2つが基本だ。


2018〜19年頃までは超好景気に支えられていた。減税を主とした市場活性化策のためだ。これがトランプの偉大な政策だった事は事実だ。しかしこの「トランプラリー」は、実は前政権のオバマ民主党政権時に「形作られていた」ものだ。要するにトランプはオバマという「巨人の肩の上に乗った」から成功できた…ということだった。


実に意外…Σ(゚Д゚)?!

そこで、ますこの理由を説明する…




○オバマ政権時の金融危機克服の方法について


トランプ政権成立に先立つ2008年のリーマン危機時、世界は破滅的な金融大恐慌に陥った。当時の共和ブッシュ政権は有効な手を打てず、「経済失速の時に大統領選挙があると現職は必ず負ける」の鉄則通り、政権交代して米国初の黒人大統領・オバマ民主党政権が成立した。


リーマンショックという未曾有の事態に、当時のオバマ政権はFRB議長バーナンキ、そしてその後を継いだジャネット・イエレンなどの賢人と共に米国の回復を図った。この二人は「失業対策のためにはインフレ上等!」な「ハト派」であり、特にイエレンは「リーマンからの回復には5-8年はかかる」と判断。この長期的な視点に立って、オバマ政権一期目には大規模な量的金融緩和によって景気刺激を行い、一気に景気が自律的に回復した事を確認した2013年以後は金融緩和を徐々に引き締めてバランスシートの均衡を図りつつ、景気の失速を抑え込む…という難しい操作(=いわゆる出口戦略)を実行し、成功させるという偉業を成し遂げた。


FRBの採用した戦略は基本に忠実だった。


金融緩和(バラマキ)

→出口戦略(引き締め)

→自律的な経済成長達成(放置)

→政策金利を上げ、過度なインフレを防止する(管理)


…という流れだ。

事実、この間のダウ株価を見てみると、リーマン時に14〜15,000ドル→7,000ドル近辺まで大暴落した株価を、その後わずか6-8年程度の間に一本調子で16,000ドルまで戻している。彼女の考えた通りの結果になった。1929年の世界大恐慌の時、最高値391ドルを越えたのが実に25年後の1955年だった事を考えれば、如何に偉大な作業だったかが分かる。


よって正確にはオバマ民主党の偉業ではなく、むしろイエレンの手腕によるものだ(←重要)。

米国民主党はハーバード大派のケインジアンで、すぐに公共事業などをやりたがるが、そんなの過去100年間で成功した試しは一度もない。ただ単に連邦政府・各州財政を赤字にしただけだ。


オバマ政権時もそうで、米国連邦政府債務(国債とかの「政府の借金」)は2009年の対GDP比86.95%から2016年には107.35%まで急上昇している。実額ベースでおよそ7.45兆ドルなので、この間に日本円(1$=105円で)だいたい800兆円弱ほど債務が膨れ上がった計算になる。しかもこの債務増加は2016年のヒラリーvsトランプの大統領選挙の時に影響を与えた。ちょうどこの時期、米国経済は息切れを起こした。景気循環の谷間が出来てしまったのだ。また金融引き締めの悪影響が出たとも言える。


国内の問題も深刻だった。多額の財政出動があったにも関らず、米国内では深刻な貧富の格差が是正されなかった。社会福祉を社会主義と勘違いする国民性の問題でもあったかもしれない。アメリカでは所得の再分配や社会福祉がおざなりのままだった。無論、この問題を解決するために「オバマケア」という国民皆保険制度の成立を図ったが、もともとリバタリアン指向の強い米国においては骨抜きにされてしまう。貧乏人は救われず、高所得者はますます豊かになった。これらの不運が重なって「景気後退時は政権交代時」の鉄則どおりヒラリー民主党候補は破れた。

その敗北のメカニズムの詳細はこちらをご覧ください…m(_ _)m



2020年アメリカ大統領選挙で注目すべきたった一つの法則

https://kakuyomu.jp/works/1177354054885841125/episodes/1177354054922274462



しかしそれでもオバマは任期中から128ヶ月にも及ぶ戦後最長の好景気の基礎を作った。それはFRBの決定に干渉しないという「賢人の知恵」だった。たとえ選挙で負けるリスクがあったとしても、だ。よって彼は偉大な黒人であり、偉大な大統領だった。2200年以後の地球防衛軍プレジデント級宇宙空母に彼の名前が残るのは、こうした業績からだった。しかしトランプは阿呆で、そもそも名前さえ忘れ去られるほどだった(怒



  ※     ※     ※

  


○金融大国米国の不気味なリスク

 〜政府債務から民間債務へと「借金だらけ」の危険な方向へ


トランプラリーで好景気に沸く米国だったが、2018-19年頃には深刻な問題が生じていた。貿易赤字とインフレ懸念である。


この「なぜ〜ヤマト」で繰り返し「国内GDPが爆発的に成長する国においては貿易赤字は心配ない」事を述べた。国内での経済成長に必要な資源を海外から購入し、しかも「現金払いの後」の会計上の問題に過ぎないからだ。赤字分は資産(=物品)として米国内にあり、活用されて更なるGDP成長に貢献しており、しかもちゃんと支払いが済んでいれば「米国の資産」そのものに化けるからだ。


そもそもアメリカの製造業は「全く衰えてなどいない」。物品の輸出だけでも実に毎年180兆円以上もあり、これは韓国のGDPを超える。ただ輸入総額が260兆円(←おフランスのGDPに相当ざますのよ!)と大きいので、赤字になっているだけだ。


しかしトラ公はこの理屈が判らなかったらしい(謎)。

事実、米国はこの時、年に200兆円もの経済成長を続けていた。この成長エネルギーのために貿易赤字が膨らんだのだが、なぜか気に入らなかったらしく、特に大幅な赤字を出していた中国を狙い撃ちにし始めた。当初は大量の米国物品を半ば強制的に中共に買い取らせ、後には各種輸入関税をかけて赤字の削減に努めたようである。


他方、好景気により過度なインフレ懸念に対しては、通常ならば政策金利を上げることで「金融的な引き締め」を行い、加熱した市場を抑圧することがFRBの当然の仕事とされていた。これはイエレンが予想し、やり残したことでもあった。


「最後には景気が加熱してるはずだから、インフレ撲滅のために適切に金利を引き上げる」作業が必要だ。過度のインフレは物価高と金融資産の目減りという「貧乏人が苦しむ原因」なので、これを除去せねばならないからだ。ところがトラ公は…


「金利を上げればドル高になる!」→「ドル高になれば輸出が落ち込む!」


…という理屈を振り回し、2018年2月にはイエレンの後任のFRB議長に、自分の言うことを聞きそうなパウエルを据えた。

トラ公としては金利を下げたり、金融緩和によって米ドルを下げれば貿易赤字が減らせると考えた。同時に国内産業が守れ、支持層でもある労働者の雇用が守られるし、米国の景気もさらに良くなって「経済繁栄をもたらした偉大な大統領」として2020年の選挙で大勝利を得られる…とでも考えたようである。そしてパウエルは好景気が続く中でも金利(この場合、短期国債の金利である「政策金利」の事)の上げ渋りを続けた。


この貿易とインフレにまつわる問題が、世界経済の底辺で不気味に融合し始めた。



  ※     ※     ※


長くなったので後編に続きます…m(_ _)m

後編、借金の額がデカすぎて、目玉スパークしますよ…((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル




【補記】

ノベルアッププラス2020年10月25日初公開分

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