§5-1-15・2020年、新コロパンデミックをカネだけで考えてみる…アメリカ編・後編(๑¯ω¯๑)

○トランプ(←ヅラ)の2019年の経済政策と新コロ対策について


トランプの保護貿易政策〜特に対中貿易戦争は全世界に景気の先行き不安を生じさせた。この政治的な(つまり人為的な)不透明感のため民間金融機関は安全資産とされるドル資産(つまり米国長期国債)を購入した。


これにより10年もの長期国債を中心にグイグイと金利が低下し、2019年には長期金利が8ヶ月程度の間に一気に1.3%(3.2%→1.9%)も下落してしまった。と同時に米中対立の深刻化による景気悪化懸念…要するに「景気失速への不安」が続き、景気を下支えする目的で政策金利(短期国債の金利)も「予防的措置」として下げられた。つまり米国長短期国債の金利が共連れで下に下がっていったのだ。


これは世界的な国債の金利低下をも促した。日本やEUなどでも米中貿易問題の悪影響で対中輸出が深刻な打撃を受けていたこともあり、将来不安から各国国債は買われて金利低下を促していた。事実上の「景気失速」のサインだったが、トランプはそうは考えなかったようで、


トラ「他の国の金利が下がってんだから、FRBはもっと金利さげろ (# ゚Д゚)!」

トラ「金融緩和もしろ (# ゚Д゚)!」


…みたいな無体なことを言い続けた。景気が悪くなると、次の大統領選挙で負けると判っていたからだ。なんだか発展途上国によくいるポピュリズム的な独裁者のような振る舞いだった(呆れ


2017年くらいまでのトラは、カッコよかったのになぁ…( ⚭-⚭)

なんで此処まで劣化した…(;⚭-⚭)??


この「トランプによる不確実性」に起因する将来不安と、実際の景気減速のために日本だけでなくドイツを始め主要国が超低金利もしくはマイナス金利に続々と突入する異常事態になってしまった。


  ※     ※     ※


相対的に金利が低ければ金融緩和と同じ効果が得られる。貸出金利が低いのなら民間はカネを借りやすくなり、投資や消費に回って景気が良くなる。好景気の時に金利を下げればますます景気は加熱する。そして、そのとおりになったのが「トランプラリー」と呼ばれる空前の好景気だった。株価はグイグイと上昇し、一気に30,000ドルまで狙えるほど急激に上昇しまくったのである。


反面、銀行などは貸出しでの利益がでなくなった。低金利のせいだった。特に米国のように債権証券市場が成熟し「カネを貸して利益を生み出す」システムの確立している国では「迷惑」でさえあった。他方、景気は大変良く、企業も個人も資金需要は大きかった。


そこで金融機関は金利の低い融資だけでなく、より高い金利を付けられる「社債」発行を促進した。つまり企業に貸出金利より遥かに高い金利のついた「債券」を発行させ、これを銀行などが大量に購入する…というやり方だった。上手くやれば「節税」にも使えたし、実際に使った。

勿論、株式発行も増加した。こちらは企業にとっては「資産」だ。ただし倒産すれば本当に紙くずにしかならないリスク資産だ。特に景気悪化に弱い資産…それが株式だったが、銀行やファンド・個人投資家までが熱狂して買い漁った。事実、PER(株価収益率)という「数字が高いと割高感=バブルってる」と見られやすい指標で、実に22-27倍という数字が出まくっていた。これは先進国平均の19倍を大きく上回っている。


カネにならない国債などの「安全資産」から、よりリスキーな証券債券…特に金利が異様に高い「ジャンク債」などへとカネがドッと流れていったのである。なにしろカネは簡単に手に入ったからである。

金利も超低いしね( •̀ᄇ• ́)ﻭ✧


個人もそうだった。好景気により多額のローンを組んで家やら車やら買い込んだし、様々な物品を購入しまくった。ローンは毎週の手取りで支払う事になっており、事実、この頃の米国民一世帯あたりの平均貯蓄額は12万円という試算もあったほどだ。借金漬けだったのである。


このため2019年の末頃には、ガードナーなどの試算よれば米国民間全体でおよそ1,200〜1,500兆円もの家計債務(この場合は単純に民間の借金と考えてOK)があったとされている。同時期、逆に日本はアベノミクスの累積効果により民間企業を中心に500兆円もの余剰金あまりガネがあったとされていた。これは内部留保金ではなく「余ったカネ(フロー)」と言われ、このカネのかなりの部分が米国などへの直接投資に突っ込まれ、これまた多額のリターンを生みだしていた程、カネに余力があった日本とは対称的だった。


好景気に沸く2019年末までの米国は、実は「多額の借金」という爆弾を抱えこむ国家に化けていたのである。トランプによる官製バブル景気というリスクだった。


そしてFRBが「金利を上げて景気を冷やす」必要性の一つがこの「飛んだら終わり」的なバブルを抑圧することであり、金利は適切に上げられるべきだったのである。

もちろん中国にも相当問題があるにせよ、トランプの金融経済手法は全く間違えていたのである。無用なバブルを発生させ、多額の債務を民間が背負うことになってしまった。「こんな時に、もし万が一、景気失速が起きたらどうなるんだろ??」…当時からそう心配されていた。



そこに新コロが襲いかかったのである…┌(_Д_┌ )┐



米国が大混乱したのは言うまでもない。

何しろ企業はバブリーで多額の債務を抱え、個人は週末のローンの事で頭がいっぱいだった。払えなければ差押えしかなく、路頭に迷うか自殺するか、白人警官による黒人絞殺事件に絡んで自暴自棄に暴れまわる犯罪者に成り下がるくらいしかなかった。ただしこの時のトラ公および米国議会の対応は実に速やかで積極的だった。わずか二週間で、さしあたりGDPの10-14%に及ぶ220兆円もの財政出動を行った。


「CARES ACT」と呼ばれる諸対策で、個人救済策としておよそ65-70兆円が当てられた。内訳は、年収830万円以下の個人に13万円の現金を直接給付する事や失業保険予算の増額、学生ローン・住宅ローンの猶予など個人債務の補填が主なものだった。


他には大企業への融資が55-60兆円程度、中小企業対策として40-45兆円程度の貸付型救済補償がなされた。

特に中小企業対策ローンは内容が凄まじく、一社あたりの1万ドルの給付金(←基本、もらえる)や、最大1000万ドルを上限とし、人件費やローン返済などの目的に貸付金を利用して、しかも6月末まで雇用を維持した中小企業は返済を免除してもらえるというウルトラ大盤振舞いの仕組みも用意した。残りは州政府への補助や医療関係者などへ充当された。


想像を絶する規模のバラマキだった…Σ(゚Д゚)?!


しかしやらねばアメリカ民間大破綻連発→大恐慌間違いなしだったので、連中にはもはや選択肢はなかったのだ…(白目





○同時期のFRBの対策について考えてみる…(๑¯ω¯๑)

無論、FRBもすばやく動き、100兆円規模の大規模金融緩和で市場の資金不足を補った。主なものだけでも以下のような内容だった。


・緊急利下げでほぼゼロ金利(カネは借りやすくなった)。これを2023年くらいまでは継続の予定


・短期国債では、「レポ取り」という操作で無制限にドル供給(≒金融緩和策)。

 →これはリーマンショックのような金融恐慌を防止する意味合いが強い


・長期国債では、多額の国債購入だけでなく「量的緩和政策(景気の下支えの意味合い)」を導入し、民間への資金供給の確保と、連邦政府破綻|(もしくは米ドル暴落)の原因となる長期国債の金利高騰を阻止。


・国債購入だけでなく、地方債やBBB格の社債(民間企業の債券)まで購入して脆弱な各州政府や民間企業を救済しにかかった。

→BBB格社債は「財務状況、やや微妙な会社」だが、米国の49%はこのBBB格なので、ここに設定するしかなった模様(爆)。会社が飛んだら債務が残るので普通はやらないし、予定では企業は四年で償還することとされているが…(不透明


・CPFF

大手企業救済の目的でコマーシャルペーパー(企業が無担保で短期間の借り入れを行う時の約束手形)を購入。実際には目的別の特別の機関(SPV)を設置して、此処が買い取る。FRBはSPVに資金提供。


・TALF政策

自動車ローン、住宅ローン、学生ローン、中小企業の政府保証ローンの各担保証券を購入。中小企業および個人救済が目的。CPFF同様、SPVが購入しFRBがケツ持ちする。


・SMCCF

買い取り社債に連動してSPVが社債市場でETF購入などの市場介入。民間社債市場の安定化の一策


…他にもMMF(債券を資産に組み入れる投信の一つ。リーマン時は元本割れして投資家から解約が殺到して金融不安の増大を招いた)救済なども行ったが、これに加えて「メインストリート融資制度」なる中小企業の直接救済策にも乗り出す。つまり証券債券を購入して間接的に支えるだけでなく、「直接カネ、ぶっこむ」算段のようだ。


要は資金調達の難しい中小企業に、前述のSPV(特別目的事業体)を通じて総額6000億ドル(だいたい65兆円くらい)を融資するという内容で、これは米国の金融機関を除く民間企業債務残高4兆ドル(大体430兆円)の15%くらいを、直接カネを入れて補助する…というやり方で、SPVにカネを融資するのがFRBである以上、FRBによる民間救済(つまり迂回融資)なだけでなく、会社が飛んだら債務として残るというリスキーなものだった。また日本だったら各省庁などに政策金融機関があり、ここから融資が受けられるが、米国には日本のような制度がないためにこのような制度を採用したものと思われる。


てか、まさにやりたい放題…( Д )ﻌﻌﻌﻌ⊙ ⊙


全米がFRBにケツ持ちしてもらったかのようだ(爆死

米国人が稼いだカネの管理人たるFRBが、困窮した米国民を直接間接的に救済するという「新次元」に突入したと言っても良い。米国が一つの異業種複合企業連合体コングロマトリットで、米国民が従業員もしくは管理職。一部の人たちは株主。そして融資銀行はFRB…まさにそんな感じだ。


 ※     ※     ※


別の言い方をすれば、「米国の国家破綻を防止するための手法の一つ」がコレだったということだ。日本や英国なども普段から国家破綻に備えた各種対策を整備している。米国はそうした「政府による介入」を好まない。よって大規模な米国破綻が予想される状況になった場合、FRBを中心に


「場当たり的だが、なんでもかんでもやる(# ゚Д゚)!」


という事が今回、ハッキリした。米国のやり方は多分こんな感じm(_ _)m


経済危機発生(新コロとか)

→FRBと連邦政府が市場に大規模に介入する

→多額の債務を連邦やFRBが丸抱えする(一時的)

→米国民間、債務危機から脱出(←するまでやる)

→景気回復


→インフレ発生 →物価高・労働賃金高

→FRBが金利を(段階的に)上げる

→過熱景気を冷やす+米国債権の金利が上昇

→米国国債、金利で(゚д゚)ウマー

→FRB保有の債権が市場で買われ始める

→FRB(中銀)が景気救済のために購入しまくった(≒同額のカネばら撒き)米国債のほぼ全てを市場に押し戻す


…これが正常化「出口戦略」であり、おそらく世界で最も正しいやり方だ。日本やEUが出来ていないことでもある。そして2021年現在、このやり方を熟知しているジャネット・イエレンが連邦政府財務長官であることもあり、今後、この流れになる。


このプロセスは、高い金利を求めて途上国に流出していたドルが、米国国債の高金利化によって米国に舞い戻る「レパトリ」を引き起こし、これが原因で1997年時のアジア通貨危機のような状況になるかもしれない。いくつかの国は吹っ飛ぶかも知れないが、米国はあまり気にしないのではなかろうか? 気にしてられないのだ。2019年までのトラ公のバブルにより多額の民間債務を抱え、ここに新コロの経済打撃を受けたため、超多額の債務を連邦政府が肩代わりするしかなかったのだから…


 ※     ※     ※


米国は政府およびFRBが総力をあげて新コロパンデミックによる金融破綻を救済しにかかった。確かにこれはとてもありがたいことだった。やらなかったら今頃、全世界の路頭に多数の新コロ患者の屍体が転がっていたことは間違いないからだ。


しかしFRBが購入した連邦債・地方債・民間債務はあっという間に700兆円を超えた。これは去年の倍の額であり、また世界最大の資産購入額だった日銀の約2倍近くにもなる。ここ数ヶ月で300-350兆円分近くを市場にバラ撒いたという事でもあるが、2020年末までに1.000-兆円を超えた(→日銀が持つ日本国債の対GDP比率とほぼ同じくらいになる)。


しかも連邦政府の財政赤字は330兆円以上、なにより米国債(連邦政府債券)の発行は急激に拡大し、実に2,900兆円にも及ぶ(驚愕)。

2001年にはわずか600兆円未満だったものが、20年を経たずして五倍にまで膨れ上がったのである。いくら現在が低金利時代とはいえ、数年前の2.000兆円の連邦債務の償還と利払いでも55-60兆円もの負担を強いられていたはずなのに(同時期、日本は約10兆円程度の負担)、こんなに一気に赤字を増やして大丈夫なのか!?


どうすんだ、こんなの…┌(_Д_┌ )┐??

これ、アンタらの将来の借金でもあるんだぞ??


挙句、民主・共和両党とも、これからもますますの財政政策の拡大が必要(=連邦政府の赤字増大)と、際限なく債務が膨れ上がりそうな予感がプンプンするイヤな予感…。なにしろ民主党はさしあたり更に400兆円規模の財政出動を、共和党でさえ200兆円くらいはOK…みたいな、まさに2020年の大統領選挙にあわせたバラマキ型ポピュリズムが最悪の形で具現化してしまったかのような悪夢でもあった。将来に物凄い禍根が残りそうだった…


てか、将来、本当に大丈夫なんだろうか??

そもそも米国が失速したら世界経済オワルがな…((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル



  ※     ※     ※



【補記】

ノベルアッププラス2020年10月25日初公開分

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