だれがこわした、

 正直、ここ最近(最近といっても多分10年くらいの話)、心から感動した事が無いとふと思った。


 僕が心を何処かに避難してしまった、中学1年の3学期。誰に話しかけても無視されて、家でも泣けなくて、相談する行為すら出来なかった僕は、恐らく自分の心を守るために心を自分でもわからない場所に避難させてしまったのだった。

 心の琴線に触れるものは人それぞれだと思う。それを相手に押し付けることもおかしな話だ。ただ、人の心がある場所とは違う場所に僕の心があるせいで、僕は感動するということが出来なくなってしまった。だから僕は勧められた映画も、本も、とりあえず自分の中に取り込んでみてどうだったか、ということで判断していたりする。


 今日も僕と仲良くしてくれる、あの子の楽しそうな様子で話す彼女のハマっているらしいアイドルの話に耳を傾ける。

自分ではない誰かを想う彼女は、誰よりも煌めいている。



***



 他人に流されてしまえるほどの真っさらなあの子が羨ましい。僕の中のほんの少しだけ残っている自分とちっぽけなプライドなんか要らないのに。要らないはずなのに、今まで寄り添ってくれたそれらを僕が手離せない。


「感動するって、どんな感じ?」

「心がふわふわと風船みたいに宙に浮く感じだったり、心が空きカンみたいに潰れたりする」

「それは、僕にも体験出来ると思う?」

「んー、どうだろう?そのものが、君の心がある場所まで来て、触れてくれたら感動できるんじゃないかな」


 彼女のその言葉が、何故か僕の心に触れてくれた気がした。

 初めてだった。こんなに自分の事を打ち明けた事も、こんなに理解して核心を突かれたことも。


何でもないはずの言葉が、僕の心に触れたとある日の話。



以上、no推敲。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

微睡みの中で。 @omajinai__

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ