エピローグ
「全く、お前ぇはなーーー」
帰って来たヴェルトに待っていたのは、クロトによる長時間に渡っての説教だった。
ブリゾの住人達には、記憶喪失故の奇行と説明して納得させる。
途中からは話が逸れたりしたが、ヴェルトはクロトの想いを全て受け止めた。
受け止めた上で切り出したつもりだった。
「クロト。アンジュとの結婚を許して貰えるだろうか?」
「……あ?」
余りに突然だったので、様子を伺っていたヘリオスとアンジュも固まってしまう。
「俺はアンジュが好きだ。守ると誓った。クロト、俺では不安だろうか?」
「あ〜、いや…」
クロトは衝撃に声が裏返っている。が、1つ咳払いをして間を開けてから、ヴェルトを真っ直ぐに見る。
その瞳に揺らぎが無い事を確認すると、大きく息を吐いた。
「…全く、お前ぇはいつでも突然だな…。アンジュ!」
「は、はい!」
「お前はどうなんだ?コイツとやって行きたいと思うのか?」
アンジュは姿勢を正して、しっかりと頷いた。
「なら問題はねぇ。…お前らに覚悟があるなら、俺は反対しねぇよ」
照れくさそうに鼻の頭をポリポリ掻くと、唖然としているヘリオスを呼ぶ。
「こりゃ、飲むしかあんめ?」
「…だなぁ」
苦笑気味にヘリオスが応じると、リヒトで4人だけの宴会を開くのだった。
どうせ後日、ヴェルト帰還の呑み会をコルタナの店[アグライア]で開き、更に2人の婚約でまた開催されるのだ。
今夜くらいは身内だけで静かに過ごすのも悪くないと、クロトは近い未来の家族図を思い描いて、緩む頬もそのままにしていた。
世界の名前を呼んで ハル @ha_ru_
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