第2話 教会

激しい雨が、窓ガラスに打ち付けられる音がする。

或いは強く、或いは弱く、不規則なうねりを伴っている。

時折、その雨音を、強風が、理不尽なまでに打ち消す。


それに、話声が聞こえる。

誰の声だ?

二人か?

一人の声は若々しいが、もう一人の声は、聞き苦しいほど、しゃがれている。

鍛冶屋の青年は、背中に床板の冷たさを感じながら、茫然と耳を傾けていた。


「これでは修復が大変でしょう」

「空しくこの地を踏める者に、憐れみを垂れよ!」

「教会が目的ではなかったのか?」

「常無き光のもとにつどいて、何をかなすらむ!」

「天にいます我らの父よ・・・」

「天にしも!地にしも!汝らのうしろみぞなかりける!」

「願わくは御名の・・・」

「峰下る!獣の声のうるわしく!響き渡りつ!群なして!」

「黙れ!」

「声なきをしも恐るるものを、などしか言うらむ!カカカカ!」


俺は、こいつを知っている!

青年の脳裏に、忽然と、幼い頃に見た光景が蘇ってきた。

それは、あの、近所の老婆の家が、紅に燃える光景だった。

野犬どもが、人間のように立ち上がって、踊り狂う光景だった。

判然とした根拠は何もないのに、青年には、確かな自信だけが溢れてきた。

俺は、こいつを知っている、という確かな自信。

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