第4話偶
黒く大きい瞳に吸い込まれた吉岡はそのまま固まっていた。
女の子もおそらく吉岡に気づいているだろう。
ジョー「なんだ、知り合いか?」
その一言でハッと我に返った吉岡だった。
吉岡「あ、いえ、知り合いというほどでも」
女の子はヘルシーなベジタブルジュースを購入し、空いている席へ座った。
吉岡は迷った。非常に気になっていた。
自分でもよくわからないくらいにその女の子と話したいと思った。
その時ジョーさんが女の子に声を掛けた。
「おーい、君もこっちで一緒に話さないか」
吉岡はテンパってしまった。まさかの展開だ。
取り乱さずにはいられない。それ以上になぜジョーさんは女の子を同じテーブルに呼んだんだ。一体なぜ。などいろいろな感情が走る。
女の子「あ、はい。ぜひ」
吉岡の心拍数が上がる。
ジョーが小声で言う。
「お前さんが話したそうだったからついな」
ジョーーーさん…なんてことを…
この店はほかの店と違い、人と人の距離感が近く、ちょっとしたコミュニティのようになっている。
客同士話しやすいのが売りでもあるので、新規の客は入りにくい反面、入ってしまえば皆が友人のような店だ。
おそらくあの子は初めてのお客だ。話さない方が相手にも失礼だろう。
と自分の心を落ち着かせる理由を探し、納得させた。
女の子「こんにちは、初めまして」
吉岡「あ、えーー、えっと」
ジョー「やぁこんにちは。俺は青川譲(あおかわ じょう)。見ての通り爺さんだ。皆からはジョーって呼ばれているよ。ここは常連でよく来るんだ」
女の子「ジョーさんですね。宜しくお願いします。私は川原緋依(かわはら ひより)といいます。今18歳です。あと、そちらの店員さんは」
吉岡「はじめましてっっ。えっと、吉岡紘樹(よしおか ひろき)といいます。宜しく お願いします。20歳です。えーーっとあと、一応ここでお手伝いみたいな事してます」
ジョーはニヤニヤしていた。
川原「よろしくお願いします。ところで、先ほどは公園で失礼しました」
吉岡「あ、いえいえこちらこそ」
ジョーは意地悪そうな笑顔で言った。
ジョー「なんだやっぱり知り合いだったのか、お前さんなーんかずっと見てたもんなぁ」
川原「先ほどジョギングしているところで少しぶつかってしまいまして」
吉岡「いや、ぶつかったというかアレはこちらがちょっと手を伸ばしすぎたというか」
ジョー「へぇ、アクティブな嬢ちゃんだなぁ」
川原「ええ、日課です。走って終わったあとのベジタブルジュースは格別なんですよ」
吉岡「あ、だからそのベジタブルジュースなんだね」
川原「いえ、一度帰宅してシャワーしたり着替えたりしたので、今日は2杯目ですね」
川原は屈託のない笑顔で笑った。
ジョー「元気がいいことだ!にしても、若いのにこんな老人の多い場所に来るなんて珍しいな。常連でもないし」
川原「はい、たまたまジョギングしていて前を通りかかったんです。帰宅してからなんとなく時間もあるし行ってみようって思って、来ちゃいました」
ジョーは腕を組みながら笑顔で話した。
ジョー「うんうん、たまにはこーいう場所で知らない人と顔付き合わせて話すのもいい事だ。面白い発見もあるかもしれないしな」
川原「そういえば、吉岡さんは公園で何されてたんですか?」
吉岡は考えた。何をしていたも何もボーっとしながら音楽聞いたりしていただけだった。全く格好がつかなかった。
吉岡「えっと、実は特に何も。好きな音楽聞いて景色を眺めて、時々体伸ばしたりかな」
ジョー「年寄りの俺が言うのもアレだが、お前さん本当年寄りみたいだなぁ」
川原「いいですね、落ち着きそうで。私もそういうの好きですよ」
ジョー「お?」
吉岡の心「お?」
吉岡の心の声とジョーの発言がハモるのがわかった。
これは、好印象なんじゃないか。
よく考えてみろ、さっき公園であんな出会い方して、今同じ場所でほぼ初対面なのに会話を楽しんでいる。
こんな漫画みたいなことがあるか?
いや、ないだろ!人生で一世一代のチャンスかもしれない。
色々な感情が吉岡の中で沸々と沸き上がった。
プログラム エンダ @ganking
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。プログラムの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます