ラッキースケベ(物理)を回避せよ!
ななよ廻る@ダウナー系美少女2巻発売中!
幼馴染の生着替え
「きゃー!! 公人君のエッチ!!」
皆さま、ラッキースケベというものをご存知だろうか。
異性に対して、偶発的に性的な行為を働いてしまうシチュエーションのことを指す言葉だ。
例えば、女の子が着替えている最中の部屋に突入してしまったり、神風によってスカートがめくれてしまい下着を見てしまうといった現象だ。
ラブコメの王道といっても過言ではないシチュエーションであり、古今東西様々な展開が乱立された。
女の子が恥ずかしがっているあられもない姿を見たいがために。
だが、それはあくまでもフィクションの中での話だ。
特に、アニメやコミック、ライトノベルといったサブカルチャーの中でこそ見られる、夢想が生み出した現象でしかない。
現実ではない。
それこそ、リアルな世界でそのようなことを起こせば、侮蔑の視線や物理的な攻撃だけで済まず、法廷の王と面会せざるおえなくなる。いきつく先は、養豚場だ。薄暗い塀の中、涙を流し、豚として後悔する日々が待ち受ける。
流石に、人生を詰ませてまで夢を追いかける勇者は、この世には早々いまい。勇者というのは、それこそ伝説の中でのみ語られる存在なのだから。
しかし、世の中とは不思議なもので、絶対に起こりえないと思っていたことが起こる稀なる世界でもある。
夢を買うなどといって軽い気持ちで宝くじ一枚を購入したら、億万長者になってしまったということが天文学的確率で起こりえるのように。
さて、わたくし、玉野公人(たまのこうと)がラッキースケベについてこうも説明してしまったのは、砂漠で一粒の宝石を見つけ出すような奇跡に直面してしまったからだ。
驚くだろう? 無論、俺も驚いた。
眼前に広がる光景は、正に奇跡としかいえない状況だ。
二階にある我が部屋。窓を開け、手を伸ばせば届く距離にある隣家の部屋は、幼馴染である紅葉佳代(もみじかよ)の部屋だ。隣家の窓同士が向かい合うという建築家の頭おかしいのでは? と、建てた人間の頭にうじが沸いていると確信できるとんでも設計。昨今、美少女ゲームですら見ない設定である。
そのため、光を遮る薄布を開けば、先には天女も裸足で逃げ出す我が幼馴染の艶姿が一望できてしまう。
艶のある、水のように流れる黒髪を腰辺りまで伸ばし、華奢という言葉が当てはまるほっそりとした体躯。陽に当たれば焼けてしまいそうな白い肌を守るのは、柔肌と見間違ってしまいそうな純白の上下揃いの下着のみだった。
美の女神を描いた一枚の絵画。人には描けない瞬間を閉じ込めた、神の手による一枚だった。
だが、俺にとっては頭を悩ます頭痛の種でしかなかった。
老若男女問わず、誰もが見惚れ、わけもわからず涙を流してしまう世界最高の瞬間。
ほっそりとした両腕で薄い胸を隠し、佳代は頬を染める。
「もうっ、公人君てば本当にエッチなんだから♪ ダメだぞ? 女の子の着替えを覗いちゃ! 私だから許してあげるんだからね?」
もじもじと体をくねらせ怒る姿は、世の男性の心を鷲掴みにする恥じらう乙女だった。そんな、見目麗しい少女の恥じらう姿なら、大枚をはたいて鑑賞したい紳士が大勢いることだろう。
けれど、俺には通じないどころ、彼女がはしゃぐたびに気持ちが冷めていく。
ちらりと、いままで眠っていたベットに視線を落とせば、可愛らしいうさぎさん目覚ましがチクタクと時を刻んでいた。無論、俺の物ではない。
続いて目を向けたのは、まだ下着姿の幼馴染――ではなく、俺の部屋の窓。泥棒が入ったと言われれば信じてしまいそうほど、豪快に砕け散り、辺り一面には無残に散った欠片が散らばっている。
その光景を一通り見た後、俺は一度深呼吸をした。
できうる限り精神を、仏の如く落ち着かせた俺は、覚悟を決めた。歯を喰いしばり、全てを受け止める覚悟を!!
「チェイン・ド〇ゴン・ライ〇ニングー」
「それただのスタンガン――――ばばばばばばばばっばばばばばばっっっ!?」
空間転移の如く、突然室内に現れてた佳代の妹、紅葉真衣(もみじまい)によるお仕置き(電気)によって、早くも本日二度目の就寝である。
バチバチと体中で電気が弾け、意識が朦朧とする中、姉が妹にぷんすか怒っていた。
「もう、真衣ちゃんダメよ。公人君の部屋だからって、勝手に人の部屋に入っちゃ」
「はい、ごめんなさいお姉ちゃん」
怒るところはそこではない。
今日のできごとをきっかけに、俺は改めて心に誓う。
――俺はラッキースケベ(物理)を、絶対に回避してみせる、と。
これは、ラッキースケベ(物理)から逃げようとする玉野公人と、ラッキースケベ(物理)を無理矢理巻き起こす紅葉佳代。二人が巻き起こすラッキースケベ(物理)物語である。意味が分からない。
ラッキースケベ(物理)を回避せよ! ななよ廻る@ダウナー系美少女2巻発売中! @nanayoMeguru
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