第10話 改めた決意

ゴォォォォ


と空洞音が聞こえてくる。

その音で俺ことカルゥは目を覚ます。


「あ、マスターが起きた」

「カルゥ様無事でよかったです」


二人の声で俺は生きていると言う実感が湧く。

しかし、頭がぼーっとして現実味もなく俺は起き上がる。


よく耳を澄ませば、雨の音と焚き火の音が聞こえてくる。


それによって俺は今、雨除けのために洞窟にいるのだと認識する。


「あの後は?」


自分の意識が失ったのがいつかは分からないが最後にある記憶が盾を砕いたところで止まっている。


「私、アリミアが敵を最後に追い払いました」


胸を張るアリミアを見て…


あ、いつものか


と思考が動いて、ようやく頭が冴え渡ってくる。


「ここは安全なのか!?」


俺は急いで今の位置を知ろうと地図を取り出してアリミアに確認する。


すると、


「安心してください。この辺りは別領地になってるので帝国軍も来ません」

「そ、そうか…でも、あれから…」

「はい、しばらくはあの場で待機はしましたが、ヨカゲが起きてから影渡りでここまで運びました」

「…よかった」


俺は安堵の息を漏らしてると胸を張っているアリミアとヨカゲのすがたが目に映る。


「二人ともよく頑張ったな」


俺は二人の頭を撫でると二人は満足したように目を細める。


「マスターのためなら」

「カルゥ様がようやくデレましたね」

「それがなかったらよかったんだがな」


俺は手を放す。


二人はジッと俺の手を見る。

それを気にせずに洞窟の外を見る。


「なぁ、あれが帝国の力なのかな?」

「すいません、わたしには分からないです」

「ん、私も」

「…そうか」


二度目…


俺の居場所が奪われた。


俺たちの敵として現れたのは明らかに未熟な存在。


しかし、聖剣の一撃を防いだ存在でもある。


自然と拳を作り強く握る。


「何度も何度も考えた。国に喧嘩を売るなんて馬鹿げた真似をしていいのかと…」

「…カルゥ様、それは」

「分かってるよ。それをすれば俺たちはただでは済まない」


俺は振り返り二人を見る。


「お前達はどう思う?」

「…マスターならできる。だからこそ私はダメ」


ヨカゲは意外にも否定をする。

彼女は俺にしがみついて引き留めやるようにしている。


「でも、マスターがもしも他の精神体を認めさせて、私達を更に強くできると言うのなら」


彼女は俺の目を真剣に見る。

そして、俺に槍を渡す。


「私からは異論はない」


受け取った槍を見る。

その槍は魔力が最大までチャージされた状態だった。


「そんなことヨカゲがが言ったら否定しようとしてる私が意地悪ですね」

「別にお前が嫌なら俺は無理してやる気はない」

「いえ、私からの条件は一つです」


アリミアは普段とは違い真面目な表情、いや、どこか楽しそうにワクワクしてるような気もする。


「これから仲間にする精神体…みんなの記憶と後悔と向き合ってください」


普段とは違う雰囲気で笑う彼女に俺は見惚れていた。


「カルゥ様?」

「いや、そんなこと当たり前だろ。俺の家族になる奴らなんだから」

「ならこの剣…私の心臓を」


そう言って渡されるのは聖剣『アリミア・ハート』。


「心臓って…」

「私の再生の力の原動が生前の私の心臓です。これを渡すことによって私の命はあなたのモノ…みたいになるかなと」


実際に考えると彼女がこれを今渡したと言ってレプリカである以上、本物ではない。

更に言うなら心臓なんて言っても今の精神体では心臓なんて分かりやすい弱点は存在しない。


でも…



「分かった…預かる」


だが、今まで惰性的に行ってきたこと…それが一つ変わった気がする。


「ようやく…俺はお前達の持ち主になった気がする」

「はい!」

「ん!」


俺は剣を右手に槍を左手に持つ。


「さぁ!行くぞ俺達の新しい門出だ!ヒート!そしてチャージ解放…ぶっ放せ!!!」


心臓に集まる魔力が爆発するように溢れ出し、全てが槍に向かう。


その槍を俺は思いっきり天に向かって掲げる。


その破壊力は辺りの大地を抉り、天空へと届き、暗雲を真っ二つに引き裂く。


「俺ができるのはこれだけだ」


竜をも殺す兵器を俺は下準備を整えてもこの程度しか使えない。


「だから、教えてくれ。お前達の使い方を」


俺の言葉に二人は笑う。


「当たり前です。私の扱い方については手取り足取り全部教えてあげます」

「ん、マスターに私の全ては預ける」


何をして生きていけばいいか、悩んでいた俺に一つの答えが出た。


「んじゃ、世界の敵、帝国を落とすぞ!」

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覇剣を作りし両腕 ARS @ARSfelm

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