謝万2  高崧の助言   

謝万しゃまんが兄、謝奕しゃえきのあとを継ぎ、

前線の指揮を執ることになった。


豫州よしゅう寿春じゅしゅんに出るにあたり、

送り出しの宴が

数日にわたって繰り広げられる。

もうこれだけで謝万、ぐったりである。


と、そこにやってきた者がいた。


高崧こうすう

謝安しゃあんさまが再三の招聘を受けた末、

ようやく重い腰を上げた時に

「ほんとお前、ふざけんなよ」

くらいの言葉ぶつけてきた人だ。


この時も、おそらく内心では

「謝安が動けばいいのに……」

くらいのことは考えていただろう。

だがそこはおくびにも出さず、

謝万に問う。


「いよいよ出立だな。

 そなたは寿春をどのように

 取り纏めようと考えている?」


この質問に対して、謝万、

構想の概略を語った。


ふむ、と高崧、謝万に対し、

数百語ばかりのアドバイスをなした。


話を聞き、謝万、

その背筋がシャキッと伸びる。

そうか、やる気が出てきたぞ!


やがて高崧が去ると後を追い、

語りかける。


「まったく、アンタの才能は

 本当にすげえな!」


このあと謝万は宴会の間、

きっちりと威儀を正していられた。



まぁ寿春で大敗するんですけど。




謝萬作豫州都督,新拜,當西之都邑,相送累日,謝疲頓。於是高侍中往,徑就謝坐,因問:「卿今仗節方州,當疆理西蕃,何以為政?」謝粗道其意。高便為謝道形勢,作數百語。謝遂起坐。高去後,謝追曰:「阿酃故麤有才具。」謝因此得終坐。


謝萬の豫州都督に作さるに、新たに拜し、當に西の都邑に之かんとせば、相い送らること日を累ね、謝は疲頓す。是に於いて高侍中は往きて、徑ちに謝が坐に就きて、因りて問うらく:「卿は今、方に州に仗節せんとす,當に西蕃を疆理せんとせるに、何をか以て政を為さんか?」と。謝は粗ぼ其の意を道う。高は便ち謝の道いたる形勢を為し、數百語を作す。謝は遂に起坐す。高の去りたる後に、謝は追いて曰く:「阿酃は故より麤る才具を有したり」と。謝は此に因りて終坐さるを得る。


(言語82)




高崧

父親が王敦おうとん系の人材で、結構な罪に問われたそうである。にもかかわらず息子はこうして謝万にアドバイスをするような立場にまでなっている。ただ者ではない。と言うかこのエピソードを踏まえて、もう一方の登場するエピソード

https://kakuyomu.jp/works/1177354054884883338/episodes/1177354054886502593

を見ると、「謝安お前さぁ、謝万なんぞに任せやがって、アホなのか、バカなのか?」感がさらに強まりますね。そりゃ酔っぱらってぐだ巻きながら絡むわ。

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