第10話本当の嘘つき

もう数日で大国の軍勢がやって来ようという時、ハンスは決断しました。その日は食事の際についた汚れが、いつまで経っても落ちないような気がしました。

ハンスは城の裏手にカエルを入れた虫カゴを持って行きました。そこにはたくさんのカエルがいたからです。冷たい風に揺れる草花がカエルたちの姿を隠してくれそうです。

虫カゴのカエルを全て放つと、ハンスは嘘つきの杖を握りしめました。あっちの世界でまた王になれば良い。ハンスは自分の頭上に杖を持っていくと

「私は自分の命より国民の命の方が大切である。」

と言いました。そしてそのまま杖を振り下ろしたのです。

国王の失踪は瞬く間に大問題になりました。しかし国中をどれだけ探しても見つかる事はありませんでした。

やがて戦争のさなか、大臣が城の裏手で嘘つきの杖とハンスの服を見つけた時、草むらの奥では数十匹のカエルが一匹のカエルに従って暮らしているのを見つけました。そして大臣は

「やっとあなたがいなくなって、せいせいしたのに滅び行く運命とは皮肉なものですな。」

とそっとつぶやいたのです。その時の大臣の姿は何とも形容しがたいものがあったのでした。



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ハンスと嘘つきの杖 @lionwlofman

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