第10話本当の嘘つき
もう数日で大国の軍勢がやって来ようという時、ハンスは決断しました。その日は食事の際についた汚れが、いつまで経っても落ちないような気がしました。
ハンスは城の裏手にカエルを入れた虫カゴを持って行きました。そこにはたくさんのカエルがいたからです。冷たい風に揺れる草花がカエルたちの姿を隠してくれそうです。
虫カゴのカエルを全て放つと、ハンスは嘘つきの杖を握りしめました。あっちの世界でまた王になれば良い。ハンスは自分の頭上に杖を持っていくと
「私は自分の命より国民の命の方が大切である。」
と言いました。そしてそのまま杖を振り下ろしたのです。
国王の失踪は瞬く間に大問題になりました。しかし国中をどれだけ探しても見つかる事はありませんでした。
やがて戦争のさなか、大臣が城の裏手で嘘つきの杖とハンスの服を見つけた時、草むらの奥では数十匹のカエルが一匹のカエルに従って暮らしているのを見つけました。そして大臣は
「やっとあなたがいなくなって、せいせいしたのに滅び行く運命とは皮肉なものですな。」
とそっとつぶやいたのです。その時の大臣の姿は何とも形容しがたいものがあったのでした。
ハンスと嘘つきの杖 @lionwlofman
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます