第9話後先考えぬ男
城に戻ったハンスもそう言えば、以前より従者たちに見られている事が多くなった気がします。大臣を呼びつけて聞こうにも
「気のせいでございますよ、陛下。あなた様は思うようになさってください。」
としか言わないのです。この頃、ハンスは自室の壁を叩きながら、つまらなそうにベッドに横になっている事が多くなっていったのです。
そんな中、国の行く末を決めかねない大きな出来事があったのです。ハンスの国の西にある大国が使者を送って来たのです。ハンスより立派な装飾品を見にまとった使者は言います。
「我が国はこちらの国に昔から興味を持ってまいりました。交通の要所であるこちらの国と同盟を取り成せば、我が国の世界進出にも大変有利でありますし、もちろん我が国の最新鋭の技術を取り入れる事ができるのでありますから、あなた方にとっても有益でありましょう。同盟を結んで頂けませんか。」
彼らの言う事はもっともでした。普通に考えたらこの同盟は受けるべきだろう。しかしこの使者どもの我らを馬鹿にしたような、うすら笑いは気になる。同盟を結んで、堂々と私の国を偵察して回り、いずれ破棄して戦争を仕掛けてくるかもしれんぞ。ハンスは使者の前に立ちはっきりと言いました。
「なるほど、確かにこの同盟はお互いの国にとって有意義でしょうな。ですが、私にはあなたがたが嘘をついているか判断がつきません。ちょっと試させて頂きたい事があるのです。」
そういうとハンスは嘘つきの杖を取り出して、使者たち一人一人の頭に振り下ろしたのです。結果はなんというか、たんさんのカエルが虫かごの中に入る事になったのです。後先考えぬハンスは、大国の謀略を防いだと大喜びしたものでした。
しかしこれまた当たり前の事ですが、大国の皇帝は使者たちが殺されたとして激怒し、軍を仕向けて来たのです。いや、攻める口実を与えてしまったというべきでしょう。
これにはハンスは焦りました。戦おうにも規模が違います。虫カゴの中のカエルがイモムシを食べる姿が寂しく映りました。ハンスは悩みます。ゴーグの一件で騎士団の騎士の多くも辞めてしまっています。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます