おしまい 君に…クリスマスプレゼントを… セリ編

セレン様に壊れろと言われて一度は壊れてしまった

でも、セリカちゃんが俺を呼ぶ声が聞こえて…

「セリくん!?セリくんしっかりして!!」

頬に温かいのに悲しい君の涙が当たって、目を開けると泣いた君の顔が見える

大好きな君にそんな顔をさせるなんて、ダメだ

俺は君の幸せを1番に願っているから…

「大丈夫…生きてるみたい」

手をセリカちゃんの頬へと伸ばす

温かい…セリカちゃんの肌はとても

どうやら俺は生きているようだ

セリカちゃんに自分のクリスマスプレゼントなのにって泣かれて命を取り戻した

マスターより今の持ち主の方が強いみたいだ

セレン様にお前なんか創らなければよかったって言われた時

この人は俺の母親なんだってコトを思い出して、凄く悲しくなった

憎いって言われて、今までだってずっと酷いコトをされてきたのに…

それでもセレン様は俺の母親で……やっぱり愛されたかったんだと思う

最期に嘘でも、良い子と、はじめて頭を撫でてもらえて……とても嬉しかった…

だから大嫌い壊れてしまえって裏切られた時はショックでたまらなかった

イングヴェィが消えてしまったのは死ぬほど悲しい…のに、許せないコトはたくさんあるのに…

俺は100%セレン様を嫌いになれなかった…

セレン様の怪我を治そうとしたのも、イングヴェィを助けたい気持ちと…セレン様を助けたい気持ちもどっちもあったから

「もう、心配かけないでよね

やっとレイと結婚するって決まった時にセリくんがいなくなったらそれどころじゃなくなるでしょ」

「えっ…?」

レイ…?さっきレイって言った?

セリカちゃんはイングヴェィと結婚するって…

俺はすぐにイングヴェィの存在がなくなってしまったコトに気付いた

イングヴェィはセリカちゃんと俺を守るためにセレン様を殺して…

それで、存在が消えてしまったんだ

そんな…だから?セリカちゃんが悲しまないようにイングヴェィは自分の記憶をレイに塗り替えて…

大好きな…セリカちゃんから自分の記憶を消したの?

そんなの…俺には耐えられないほどのコトだった

大好きな人に忘れられるコトなんて…

俺には出来ない

なのに、イングヴェィはセリカちゃんのために…セリカちゃんを幸せにするために……

なんて……バカな人なんだ

俺はイングヴェィの気持ちがわかって、セリカちゃんにイングヴェィのコトを話せなかった

レイも香月もみんな誰もイングヴェィのコトを覚えていなかった…

俺はタイミング的に壊れていて、イングヴェィの記憶が残ったままになったんだろうと考えた

セリカちゃんの思い出の中のイングヴェィはレイへ変わっていて結婚する

それが君の幸せで、イングヴェィの願いなら俺は何も言えなくなる

逆にみんなが覚えてないから、俺の記憶が変なのかもとすら思ってきて…


着々と結婚の準備が進んでいく

でも、セリカちゃんはレイのコトを好きだと言いながら、何か違うと悩んでいた

やっぱり…セリカちゃんの中でも、イングヴェィのコトは完全には消せれない…

それが恋なのだと愛なのだと、俺は気付いた

だけど…俺はイングヴェィのコトを想ってセリカちゃんに言えなかった

イングヴェィが命を懸けてしたコトを、俺が壊すなんて出来なかった

俺だって、セリカちゃんが幸せになってほしいから…

でもでも…セリカちゃんは…レイと結婚するコトが…本当に幸せ…?

レイは必ずセリカちゃんを幸せにすると誓ってくれたけど、セリカちゃんの中にはずっともやもやが残った

俺だってレイは必ずセリカちゃんを幸せにするってわかってる

そのもやもやはいつしか大きく膨れ上がっていった


「私…思い出せないけど……凄く大切な人がいたような気がするの」

「えっ?」

セリカちゃんからそんな話を聞かされて、ドキリとした

「セリくんと同じくらい大切だったような気がする」

イングヴェィがいなくなった時からセリカちゃんは少しずつ元気じゃなくなっていた

イングヴェィとの思い出がレイに変えられて、やっとレイと結婚するって幸せな時なのに

全然…セリカちゃんは幸せじゃなかった…

俺は…セリカちゃんのこんな顔が見たかったんじゃない

イングヴェィだってそう…

なのに…なのに……

俺はセリカちゃんのコトを全然わかっていなかった

「私はセリくんのコト大好き、愛してるわ

ずっと一緒……」

俺を家族として、セリカちゃんは優しく抱き締めてくれた

いつものセリカちゃんと違うってわかってるのに

セリカちゃんに大好きって抱き締めてもらえて、嬉しくなってそれだけで俺は満足で抱き締め返す

「天は私を愛してる…

太陽は温かくて、とても優しいから……」

「セリカちゃん…?」

抱き締められて、君の顔を見るコトが出来なかった

「ごめんね…せりくん……こんな弱い私を、許して……」

見えなくてもわかった

セリカちゃんが泣いているコトに…

俺はもっと早くに気付くべきだったんだ…

君の本当の恋に……


次の日、君は自ら命を絶った……

信じられなかった…

君が動かなくなるコトが…君のいつものぬくもりがなくなったコトが……

もう俺の名前を呼んでくれない、抱き締めてくれない…

「なんで…どうして……ずっと一緒だって…言ったのに」

この時になってはじめて気が付いた

俺は自分が思っているより、君がイングヴェィを死ぬほど愛してたってコトに…

記憶を消され変えられても、セリカちゃんの恋は愛は誰にも消せなくて変えるコトはできない

残酷だった…

セリカちゃんは死ぬまで、その恋が愛が誰へのものかわからないまま……

ずっと…ずっと…それが苦しかったんだ

辛かったんだ…悲しくて、寂しくて…たまらなかったんだ…ね……

セリカちゃんの気持ちを思いたかったけど、俺はそんなセリカちゃんを見ても自分のコトしか考えられなかった

俺を置いてまで…君はイングヴェィの下へと行ったんだって

嫉妬しかない

俺を残して……捨ててまで……?

セリカちゃんは俺のコトが大好きじゃなかったの?愛してないの?

俺よりイングヴェィを選んだの…?

そんなの酷い……!!!

俺には…セリカちゃん、だけなのに……セリカちゃんしかいないのに

君はいつも何も言わないし、感情だって薄いほう

クールに見えて賢くて仕方ないコトは仕方ない

過ぎたコトは気にしない…と思っていた…

それは違った…違うんだ

君は誰よりも愛情深く純粋だった

俺はその愛を一心に受けていたのに、何を勘違いしていた?

その強く深い愛はイングヴェィにも同様にあって当たり前なのに

好きだったんだ…死ぬほど、愛してた

君は、イングヴェィを……

知らなかった…死ぬほどに想っていたコトなんて

イングヴェィのウソつき

セリカちゃんのコト幸せにするって言ってたのに、出来てないじゃん

それどころか、俺からセリカちゃんを奪うなんて……許せない……

セリカちゃんも…どうして俺を一緒に連れて行ってくれなかったの…?

俺はセリカちゃんとなら何処へだって一緒に行くって言ったのに

酷い…酷い…セリカちゃんなんて……

大好きだから、こんなに悲しいんだ……

たくさん泣いたよ

止まらないんだもん、大好きな分だけ溢れ出て…枯れるコトがないくらい

涙が止まるとともに俺はあるコトを決意した

俺はセリカちゃんのクリスマスプレゼント

また…届けに行かなきゃ…

ずっと一緒に…離れないもん、離れたくない


セリカちゃんと連絡が取れないコトに気付いて心配で来たレイは、セリカちゃんの姿を見て言葉を失った

俺の魔法でセリカちゃんの姿は変わらないまま

でも、誰がどう見たって生きた人間じゃなかった

「セリ…これは一体…

セリカ…そんな、どうして」

レイはセリカちゃんが死ぬ前に、電話で謝られたコトの意味がやっとわかったと膝を崩した

「俺…捨てられたんだよ」

「セリカは…セリの事を誰よりも大切に想っていたよ

オレ以上に…」

レイだって辛いハズなのに…

俺はやっぱり自分のコトしか考えられなかった

そんな余裕がなかった

あまりにも長かったんだよ

イングヴェィと出逢ってから…

最初から…セリカちゃんはイングヴェィのコトを愛していた

最初から2人は両想いだったのに、結ばれるまでが長かった

やっと結ばれるって時に……

だから、セリカちゃんは俺と同じくらい大切なイングヴェィがいなくなって

生きていられなかった……

でも、だからってなんで俺を置いていくの!?

こんなの捨てられたのと一緒だよ!!

ふらりと力の入らない足で立ち上がる

俺は…決めたから…

セリカちゃんに会いに行く

それでいっぱい怒る

それから……また、大好きって…抱き締めてもらうんだ

「…待ってくれ!」

レイは俺の手を掴んだ

「セリ…オレはお前まで失いたくはない

オレが一生面倒を見るから、何処にも行かないでくれ……」

レイだってセリカちゃんを失って悲しくて死ぬほど辛いだろうな

偽りだけど恋人のセリカちゃんと…大親友の俺まで失ってしまったら…

でもね…

「それって…レイの都合だろ

俺はセリカちゃんのクリスマスプレゼントで、レイのクリスマスプレゼントじゃない…

セリカちゃんじゃなきゃ俺はダメなんだよ

レイのコトは大親友だって思ってるケド、俺はレイと一緒には生きていけない…」

レイのコトまで気にかけてやれない

だって…寂しくて、寂しくておかしくなってしまうから

自分のコトだけでいっぱいいっぱいだ

「レイがいなくても、他の誰がいなくても

セリカちゃんだけがいれば俺は生きていけたんだ!」

君さえいれば、他には何もいらない

君がいなければ、俺の存在の意味がない

俺は生まれてから…死んでも、君のクリスマスプレゼントだから…

ひとりで生きる意味はない

ひとりぼっちは……嫌だ

「セリ…そんな事言わないでくれないか…

セリまで失ったら、オレは…」

「ありがとうレイ、俺のコトまで大切に思ってくれて

でも…俺はダメなんだよ」

俺の手を掴むレイの力は緩むコトなく強まる

離したらもう二度と捕まえられはしないから…

ごめん、レイ…

俺がセリカちゃんのクリスマスプレゼントじゃなくて、普通の人間として生まれていたら…

セリカちゃんがもしいなくなっても、俺はいつか立ち直って生き続けたかもしれない

俺がひとりの人間だったら…

「バイバイ……」

魔法を使ってレイの手から離れる


俺は君のクリスマスプレゼントなんだから、傍にいるのは当たり前だろ

何処へだって…一緒に、離れたりしないよ

「セリカちゃん…待っててね」

会いに行ったら邪魔だって怒られるかもしれない

でも、君のコトだからそう言いながらもまた俺を抱き締めてくれる

また好きって言ってくれる

また…一緒にいてくれる

全ての魔法力を使って、俺は自分の命をこの世界から消し去っていく

君の所へ行けるようにと祈りながら最期の力を振り絞って…

一滴の涙が零れ落ちて、俺の命は尽きた


君にクリスマスプレゼントを…



-終わり-

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君にクリスマスプレゼントを! Celi @celi18

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