第8話

「......3次会行かないの?」



 いつものトーンだ。でも少し涙声だ。



「行かないですよ。疲れちゃったんで。」



「そっか。タクシー乗らないの?」



「歩きたい気分だったんですよ。」



「何それ。疲れてるのに?」



 いつも通りの会話になってきた。薄暗くて表情はよく見えない。


「いいじゃないですか別に。3次会、行かないんですか?」



「私もちょっと疲れちゃって。もいっかなって思って抜けてきた。」



「タクシーは乗らないんですか?」



「私も歩きたい気分だったの。ね、一緒に帰ろうよ。」




 歩きながら会話していた。さっきまで泣いていた事なんてなかったような気がしてきた。


 寮が近づくにつれて、だんだん口数が少なくなった。



「夜の道怖いから、家まで送ってよー。」



 家まで送ることになった。



「ちょっとトイレ行きたいからコンビニ寄ってきていい?すぐ済むから外で待ってて。」



 わかりました と言う前に、志帆は店内に入っていった。酔いはもう覚めていた。まだ春を感じさせない夜風は冷たかった。



「おまたせー。」



「え、何買ってきたんですか。」



 コンビニから出てきた志帆は手に袋をぶら下げていた。中にはいくつかスナック菓子と、缶酎ハイが4.5本入っていた。



「まだ0時過ぎだし、うちで飲みなおそうよ。お話もしたいし。」



「え...でもさっき疲れたって...。」



「決まりね!さ、行こー。」



「ちょ...待って待って...」




 嬉しいけれど、少し複雑な気分だった。



 君にとって俺は、なんなんだろう。

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心変り 信太 @nobufuto

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