第7話
3月。春休みが半分以上経過した頃。
大学の卒業式があった。その夜サークルで飲み会があり、出席することになった。
志帆とその元彼も参加していた。
くじ引きで席が割り当てられたが、2人の席は近く、志帆が何もなかったように振舞ってる様子が見てとれた。
周りが騒いでいたのでわかった。どうやら浮気相手と志帆の席が隣のようだ。元彼が浮気相手と付き合っていることは、その時聞いた。2人で一緒に卒業するらしい。
「「先輩方、卒業おめでとうございます」」
1次会では卒業生に色紙やプレゼント等を渡し、全員で写真を撮って終わった。2次会はカラオケのあるバーらしい。
時間は午後9時を過ぎた頃。ラーメンを食べて帰りたかったが、海が行きたいと聞かないので付き合った。1次会は60人程いたが、2次会は大体30人程だった。
志帆と元彼、浮気相手もその中にいた。
皆2次会では思い思いの行動を取っていた。カラオケで楽しそうに叫んでいる人、座席で思い出話に花を咲かせている人、酔い潰れて寝ている人もいた。
2次会が始まって1時間程経ったとき、遠くで志帆が泣いているのを見た。女友達が慰めている。
ふと周りを見ると、志帆の元彼が浮気相手と肩を抱き寄せていた。
なんだかとても親しげで、付き合ってるのだから当然か、と思った。内心腹わたが煮えくりかえっていた。
志帆が心配で、目が離せなかった。近寄ることは、出来なかった。
0時を回った頃、2次会が終わった。3次会の提案があったが、流石に帰ることにした。海は行くらしい。元気なやつだ。
会場から家まではタクシーだと10分程だが、歩きたい気分だったのでそうした。志帆のことは見なかった。
すたすたと歩いて帰っていると、後ろから志帆の声が聞こえたので振り向いた。
腹わたが煮えくり返っていたのは建前で、自分の中にほんのわずか、本当に少しだけだと思うが、嬉しさの感情があることには気付いていた。自分が、ひどく嫌いになりそうだった。
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