海は青く

漂着した瓶の手紙のように

砂を歩いた僕 僕

縄から外れたブイのように

砂を歩いた僕 僕


乾いた朽木にくっついた

誰も忘れないノスタルジ

陸に上がった海月の中の

誰も覚えないメランコリ

空はもう赤く なのに海はやけに青く


踏み締める砂の音が 湿り尖って辺りに響く

滑走と摩擦と潮の予感が

ゆっくりと僕を取り巻いて

波に削られる砂の上の

誰も棄てていかないメロディ

波の届かない砂の下の

誰も拾っていかないメモリィ

空は既に黒く なのに海はやけに青く


役立ちたかった百円玉

腐りきれずに残ったベンチ

砂に刺さった硝子瓶

波の間に浮かぶ泡

総てを青く呑み込み溶かし

また人を惹きつけ

想い出で誘うように

波を僕の足に

塩に析出した朝

光を繋いで

輝きを内包し

海は青く

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トワイライト・フーガ 宇津木 草太 @yumeQ315

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