はて、何を思う

世の中の大体の人が死にたくないだろう。僕だってそうだ。そして、世間は人を殺すことはダメだという。動物を傷付けることはダメだという。命は大事にしなさいという。僕は新聞紙とティッシュを手にそんなことを思っていた。僕は今人間の何十分の一でしかない生物と対峙している。先程ふと壁を見て固まった。見つけてしまった。無視しようと思ったのだがどうしても気になる。目の前を優雅に飛んでいくのが僕をいらつかせる。そして新聞紙とティッシュを持ち出したのだが問題があった。僕は超がつくほどビビリなのだ。必死に新聞紙を振り回し床に叩きつけようとするがあたらない。腰が引け、目を固く瞑りバタバタとする僕。はたからみれば何とも滑稽だろう。だが、その格闘は功を奏し1時間ほど僕を悩ませた生物は亡くなった。だが、その時思ったのだ。これも命だと。どう思うのだろうか。ただ、何も知らずに迷い込み生きているうちに何の予告もなく前触れも無く突然圧倒的な暴力が自身の命を絶つその瞬間。いわば、人間が空から降ってきた隕石によって命を絶たれるような感じではないだろうか。僕だったら嫌だ。続くはずの人生が勝手に切られれば怒りを感じるだろう。虫にもそんな感情はあるだろうか。あったとしてきっと僕の虫を見つけてやる事は変わらないんだけど。


カサっ


「びぇ!?」


ティッシュでつまんでいた虫が微かに動き僕は思いっきり握り潰して捨てた。可哀想に。そして僕は考えるのをやめた。やっぱり嫌いだしね。

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架空不定期日記 志撼 @redwil

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