第6話

22日の夜

奈央のバイト先

それまで、大人になるのを我慢してた利斗。


—朝はいつも一緒にいられるけど、ほんの少しだけだし…。

もう少し話したい。そろそろ終わる頃かな…。



「あのー、この前もここにいませんでした?」

女の人が話しかけてきた。


「あ、はい。待ってる人が…」

—桜井?やべー。


「そうなんですか。もしかして、あの人ですか?」

そう言って店の中の奈央を指差す。


「え?まぁそうだけど…。中学生がこんな時間に出歩いていいの?」


「塾の帰りなんで!お兄さんイケメンですね。あの人こーんなカッコいい彼氏いたんだぁ。よかったぁ。それじゃ帰ります」


「え?」

—行っちゃったし、なんだアイツ。



「おつかれさまー」

「奈央ちゃん、今日こそ送るよ」

「大丈夫です・・・。いるので!」

利斗の方を指さす奈央。


「チッ。なぁお前奈央ちゃんのなんなの?いつも待ち伏せしてさ!ストーカーじゃね?」

睨みをきかせ利斗の方に歩いてきた。


「ちょっと、やめてくださいよ」


―なんだこいつ。めんどくせー。

「彼氏だけど?なんか文句あんのかよ。お前こそ人の彼女になんか用かよ?」

逆に睨み返す利斗。

今の利斗より背が小さいバイトの先輩は、立った利斗を見上げた。

自分に勝ち目がないと思ったのか慌てて逃げて行った。

「奈央ちゃん、おつかれー」サササー。


「ごめんね。リョウタさん・・・。」

「こっちこそ、彼氏とか言ってごめん・・・」

「いーの。これであの人も何も言ってこなくなるだろうし!」


「で、でも、奈央ちゃん好きな人いるんでしょ?」

気まづそうに尋ねる利斗。


カアァァ。と赤くなる奈央。

「う、うん。まぁ・・・。でも、人気がある先輩だから・・・。今まで、好きな先輩にはたまたま告白されて付き合ってきたけど、今回は私からいかないと!夏休み中に告白しようと思ってるの」


―その顔やめろよ。そんな恋する乙女の顔されたらオレだって・・・。


ギュッ。奈央を急に抱きしめた利斗。


「リョウタさん?」


ハッ!我に返えり、バッと奈央を引き離した。


「あわわ、ごめん・・・!ォ、オレ・・・!応援する!奈央ちゃんかわいいから大丈夫だって!さっきのは勇気あげただけ!」

―何やってんだよ・・・オレ。応援してどうすんだよ。


「ありがとう!リョウタさん!勇気でた!」

満面の笑みを見せる奈央。


その笑顔にズキンと胸が傷んだ。

大人の姿になっても、奈央の心には先輩がいる。オレじゃダメなんだ・・・。


「がんばれ!」

無理して笑顔を作った。


そしてこの前と同じところで奈央を見送った。


—どうしたら奈央を振り向かせられる?



ブーブーブー

利斗の電話が鳴る、


「もしもし」

「あ、メンズfirst編集部の多田と言います!この前はありがとう!読モの件考えてくれたー?夏休みだかならって前に言ってたから、どうかな?と思ってさー」


「あ、この前の!時間が合えばオレは全然大丈夫です!」

—これで、少しは意識してくれるかな…。


「あ、ホントにー!じゃ、早速撮影の予定組むねー!7月29日来れる?」


「大丈夫です!」


「じゃあ、時間はまた連絡するねー」


「はい」

—よし!その日部活ねーし。頑張って奈央を振り向かせるぞ。




利斗はこの時、撮影から発売までにだいぶ時間がかかることにまだ気づいていませんでした。





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星に願いを〜星屑のキャンディ〜 山野 碧 @ma_bule

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