第5話 もう一歩
放課後
あぁー。今日部活だよー涙
奈央のところ行けねーよ。あれ?でも、奈央バイトあったよな…。
「おーい、利斗!部活行こうぜー」
親友の戸田 貴広が呼んでいる。
「おう。今行く」
歩きながら話す2人。
「なぁ、お前桜井美穂と付き合ってんの?今日も朝一緒に来たって結構騒がれてんぞ」
「はぁ?付き合ってねーよ。あいつがいつも声かけてくんだよ。行く方向一緒だし、断るのも微妙だろ。オレは紳士だからな」
「さすが利斗王子。でも、桜井も1年の中じゃかわいいって騒がれてんじゃん。王子と姫でお似合いなんじゃねー」
「お前、からかってんじゃねーよ!オレが奈央だけしか見てねぇの知ってんだろ」
「まだ奈央さんのこと諦めてねーのかよ!一途だねぇ。モテるのにもったいない。でも、身長伸ばすためにバスケ部入るくらいだからなぁ。ホントお前はかわいいよ」
「うっせーな。お前はいいよな!もともと背高くて!オレは早く奈央を上から見たいんだよ」
—あ、この前は緊張して上から見下ろすどころじゃなかったからな。今度こそ!
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「あの人今日は来てないみたいだね。ま、大学生がそんなヒマじゃないか!ねー、そういえば、なんで高野先輩って奈央のこと知ってたの?」
「あー、2年になってすぐに、先生に頼まれて教室に資料を持って行く途中に階段で落ちそうになった時、支えて助けてくれたの…。一目惚れでした!そんでもって資料ぶちまけたの拾ってくれて、少し重かったから教室まで運んでくれたの。めちゃめちゃ優しいし、かっこよくない?好きにならないはずがない!!」
「なるほどね!そりゃ好きになるわな。でも、今まで好きになった先輩ろくな奴いなかったじゃん!彼女いること隠して付き合ったり、体目当てだけだったり!」
—でも、奈央ってなんだかんだお固いのよね。それが原因で結局振られるんだよなこの子。好きな先輩でもダメなのか…。
「そうなんだよね…。でも今回は絶対大丈夫!!彼女と別れたから、二股ではないし、告られてもないし!」
「ま、本当に奈央のこと想ってくれる人ならいいんだけどね!あー、そろそろバイトだねー。またね!」
「私もバイトだぁ!また明日ねー」
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「ただいまー!かぁさん、今日ファミレスで勉強会だから夕飯いらないからー!着替えたら速攻で行くから、じゃあねー」
—やべぇ、もうすぐ19時だよー!早くしないと朝に戻らなくなる!!
「えー!早く言ってよー!夕飯用意しちゃったじゃない。まったく!」
—この前買った服きて、父さんも藍斗←弟
も飯食ってるし大丈夫だろ。
パクリ。利斗の体が光に包まれる。
ドドドドッ!バタバタ。
「行ってきまーす!」
「あんま遅くなるなよー」
ドア越しの会話。
バタン。
—家は突破した!いざ奈央のもとへ!
「いらっしゃいませー」
—あぁ。奈央のウエイトレス姿…かわいい。
外から覗く利斗。1人で入る勇気がない。
—どうしよ。家族とは何回も来てるんだけど、1人で入るのは無理だ!!
外で終わるの待つか…。
2時間後
「お疲れー」
「お疲れサマー」
—あ、出てきた。
「奈央ちゃん送るよー」ニヤニヤ
「大丈夫ですよー!1人で帰れますから」
「イヤ、奈央ちゃんとシフト同じ時少ないから、今日ぐらいは送るってー」
—あいつ奈央の事狙ってやがるな。
「奈央!!お疲れ!」
「あ、星野…宮?さん?」
「え、だれ?イケメン…」
「奈央はオレが送っていくので大丈夫です!」
いつもの爽やかな笑顔を見せ、奈央の手を引き歩き出す利斗。
「え?あ、じゃお疲れさまでーす」
イケメンに太刀打ち出来ず立ち尽くすゲス野郎。
「ちょっと、星野…宮さんだっけ?」
「あ、ごめん、とっさに手繋いで…」
—手繋いじゃったー!!
「そ、それはいいんですけど、なんであそこに?」
「あ、いや…この前家族で来た時に奈央ちゃん見かけてバイトしてるの知ったんだけど、今日財布忘れてさ…入れなくて終わるの待ってたんだ…バカだよね。ハハハ」
「そうだったんですか。でもなんのために?」
「奈央ちゃんに会いに。話したくて…。
あ、敬語じゃなくていいよ!あと、リョウタって呼んで。友達になってくれたんでしょ?」
「あはははっ。そうでした!リョウタさんって年上なのに、年下っぽいところあるよね!
なんか、たまにかわいいって言うか。
でも、いつからいたの?財布忘れたんじゃお腹すいてないの?」
「19時半くらいかな…」
—奈央…。なんかいつもと違う雰囲気…。
「なんか、買おうか?そこ、テイクアウトできるから食べながら帰る?私買ってくるよ!何がいい?」
「え、いーよー!お腹すいてないし!そんな女の子に買ってもらうなんてありえないから」
—奈央…優しい。そしてかわいい!!
「え、いーよ!じゃ適当に買って来ちゃお!待っててー!」
走ってお店に入って行く奈央。
「えー!!待って…」
—オレ、何やってんだよ。奈央に気使わせてて…マジカッコ悪。外見変わっても中身が幼稚じゃ意味ないよな…。
「お待たせー!無難にハンバーガーにしちゃったよ?はい」
笑顔で利斗に手渡しする奈央。
「あ、あとで必ず返すから。ぜったい!そんで、今度はオレがおごるから!」
「いーよー。私…あの人苦手だったの…。助けてくれたお礼!気にしないで!リョウタさんって私の友達にどことなく似てて…なんか接しやすいし、ずっと前から知り合いのような感じがする…」
—奈央…少し顔赤い…。てかオレもたぶん赤い…。そして上から見る奈央…可愛すぎる!!
「そーなんだ!じゃ明日も送る!なんなら毎日送るよ!」
「えー!大丈夫だよ!」
慌てる奈央。
「あ、ごめん…。オレ、ストーカーみたいだな…」
—どうやって接したらいいかわかんね。
「え…。違う違う!!悪いから…そんな…」
—あ、なんか困ってる顔してる。やっぱこんなおかしなヤツ信じらんねーよな…。
落ち込んだ利斗の様子をみた奈央。
「あ、じゃああの人と勤務一緒のときはお願いしようかな…。LINE教えてくれる?」
ぱあぁぁ。
一気に顔が明るくなる利斗。
「マジで??やったー!あ、でも携帯も忘れた…」
—LINE教えたら利斗ってでちゃうやん…涙
「プッ。忘れん坊だぁ!リョウタさんって!」
すごくかわいい笑顔を向ける奈央。
「ごめん、今度あいつと一緒のシフトいつ?
オレ、待ってるよ!」
「今月は22日かな。あとは夏休みは昼間から入るからこんな遅くはならないからとりあえず大丈夫だよ」
「オッケー!じゃ、22日にまたお店で待ってる!」
「あ、この辺で大丈夫!家もうすぐそこだから!ありがとね!リョウタさん。またね」
「え、ホントに大丈夫?」
—奈央の家もうちょいかかるだろ…。
「ホントにすぐそこだから大丈夫。じゃあねー」
手を振りながら走って行く奈央。
—やっぱり、完全には信用されてないか。
でも、オレんち隣だし帰る方向一緒なんだけど…。バレないように帰るか。
でも、また一歩前進したぞ!手握ったし、LINE教えてって言われたしー!!
でも、ずっと教えないわけにはいかないよな…。マジどうしよ。
考えながら帰宅した利斗。家族にバレないようにお風呂に入り、寝床についたのでした。
「
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