第2話 冬将軍再び

前作の続き…を描いきました。

1話完結の予定だったけど、僕の妄想は止まりませんでした。

今度こそ続かない…はず…



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俺はこたつでダラダラしたいところだが、

「なあダクネス、明日、雪精の討伐に行こうと思うんだが、どうだ?」

雪精の討伐。

それは昨年の冬に受けたクエストである。

初めは割りのいいクエストだと思っていたが、冬将軍の出現によってそんな思いはかき消された。

俺は殺されたのだ。

思い返せば俺がこの世界で死んだのはあれが初めてだったな …

「雪精か…今年も楽しみだな…」

俺が去年の反省をしているのに、こいつは…

「冬将軍が現れたら武器を捨ててすぐに土下座だ。わかったか?」

「そんなこと、騎士としてのプライドが許すわけがないだろう」

あいかわらずめんどくさいやつめ。

雪精の討伐では使わないと思うがバインド用のロープを持って行った方が良さそうだな。

冬将軍が現れたらとりあえずこいつは縛っとこう。

あとは俺が素直に土下座すれば殺されることはないだろう。

あれ?土下座だけでいいのか?

冬将軍ってこんなに簡単に対策できるモンスターだったのか?

まあ、対策できるに越したことはないのだが。

こうして久しぶりのクエストに向けて俺は入念に準備をした。



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朝日が昇っていく。

今日は久しぶりにクエストに行くからか、早く目が覚めた。

しかし早朝なだけあって寒い。もう少し暖かくなったらベッドから出よう。

「カズマ、起きてますか?」

「寝てます」

「起きてますね。入りますよ」

なぜこの寒い中で活動できるんだよ、こいつは。

「早く出発しないと帰る頃には日が暮れてしまうじゃないですか。早く起きてください」

「やめろ。布団を剥ごうとするな。凍死させる気か」

「くっ、面倒ですね。抵抗するのならばこちらにも考えがありますよ」

「どんな手を使っても俺はここから出ないからな」

頑なに動こうとしない俺の前に、めぐみんは諦めたように睨みつけると、

「黒より黒く、闇より深…」

「おはようめぐみん!やっぱり早起きは大切だよな!」

やめろ。心臓に悪い。

屋敷が吹き飛ぶし、蘇生もできないし、爆裂魔法は食らう側になって考えると本当に恐ろしいものだ。

俺は諦めてリビングに降りると、

「あれ?カズマさんが早起きなんて珍しいわね。今日は何かあるの?」

そういえば、こいつには雪精の討伐に行くことを教えてなかったな。

「今日は久しぶりにクエストを受けようと思ってな。雪精の討伐に行くつもりだ」

「あー、なるほどね。それでめぐみんに叩き起こされたのね」

よく分かってるじゃないか。

「アクアも早く準備して来たほうがいいですよ」

「そうね。今年は雪精をたっぷり捕まえてやるわ!」

「お前はまた去年みたいな装備で行くのか?」

「コートはしっかり来て行くけど、あとはいっしょよ」

やっぱりこいつは雪精の討伐じゃなく、雪精の採集に行くつもりなんだな。

そういえば、虫取り網は使いやすそうだったな。俺も用意しておくか。



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今日は空は晴れわたり、暖かい日差しがさす絶好のクエスト日和だ。この寒ささえなければ。

やっぱりこたつでゆっくりしてればよかったな。

ああ、帰りたい。

そんなことを考えながら雪精を討伐する。

目標は昨年以上の雪精を討伐すること。そして何より死なないことだ。

相変わらず、アクアは虫取り網を、めぐみんは杖を振り回して雪精を追っている。ダクネスも雪精を追っているが、やはり戦果はない。

俺も虫取り網を使ってみたが、いまいち馴染まなかったので、結局は刀で4匹の雪精を討伐した。

すると今年も雪精を1匹撲殺したらしいめぐみんが詠唱を始めたようだ。

「爆裂魔法は撃たせてやるから詠唱が終ったら待っててくれ」

去年めぐみんが爆裂魔法で一掃した雪精は8匹。

十分な量だったのだが、どうも勿体無い気がする。

「雪精がもっとこう…一か所に集まってくれれば爆裂魔法で一掃しやすいんだけどなぁ…」

「何言ってるのよカズマさん。それなら雪精を集めればいいだけじゃないの」

早くも1つ目の虫かごいっぱいにしたアクアはご満悦のようだ。

しかし、雪精を集めるなんてことができるならもっと早く言えよ…

「こうするのよ。『フォルスファイア』!」

それかよ!やりやがった。

確かに雪精はどんどん集まってきた。これなら20匹以上まとめて討伐できるだろう。

それは俺が望んでいたことだ。ありがたいことなのだが。

俺の敵感知スキルに反応がある。それもたくさん。これは雪精じゃないはずだ。

「アクアー!何てことしてくれてんだこの駄女神がー!」

「何よ、カズマさんが言う通りにしただけじゃない!」

「しっかりと考えてから魔法を使え!このバカが!」

「ねえ、撃っていいですか?撃っていいですか?」

「まて!何か来てる!撃つならそっちだ!」

俺たちの後ろから現れたのは、白狼の群れだった。が、

『エクスプロージョン』!

白狼の群れは詠唱を終えていためぐみんに1撃で壊滅させられた。

「どうですか?白狼の群れを消し飛ばしてやりましたよ。雪精も6匹、巻き込みました」

めぐみんは雪の上でうつ伏せになっている。雪精の討伐数は振るわなかったが、白狼の群れを無傷で撃退できたのは大きい。

「今日の爆裂魔法は95点だな。この寒さの中でとっさに目標を変えたにもかかわらず、十分な威力と正確さだ。さすがだな。欲を言えば、雪精の討伐数がもう少し欲しかったな」

白狼の群れを撃退し、俺たちにはそんな会話をする余裕すらあった。

俺たちはこの一年で成長できたんだなぁ…

「冬はモンスターが少なくて助かったな。フォルスファイアに寄せられてきたのは雪精と白狼だけみたいだしな」

そう言って周りを見渡すと

「ついに来たな、冬将軍め。昨年の無念、晴らさせてもらう!」

『バインド』

「何をするんだカズマ!そういうプレイならまた今度にしてくれ!冬将軍なんてなかなか会えないんだぞ!」

「知るか、お前に構っていたらまた殺されるだろうが!」

アクアは土下座しながら雪精を逃している。

俺も素直に土下座を…

アクアが逃している雪精の量が多すぎないか?

どうみても5匹以上いや、10匹以上はいるだろ。

もうあんなに捕まえたのか。速いな。

俺がアクアの手際の良さに感心していると、突然視界が傾いていき…



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気がつくと、俺は慣れた椅子に座っていた。

「…こんにちは、エリス様」

俺はまた死んだらしい。

今度の死因は…おそらくまた冬将軍に首を刎ねられたのだろう。

突然現れた白狼の群れを撃退したところはでは良かった。

アクアが逃している雪精に気を取られている間にやられた。

多分こういうことだろう。

やっぱり俺たちはなにも成長してないな…

「カズマさん、もっと気をつけて生きてくださいね。何度も死なれると後始末が大変なんですから」

そう言って門を開けるエリス様。

…俺が死んだら蘇生されるのは決定事項みたいだ。

蘇生魔法をかけ終わるまで暇なので、俺はエリス様と話して時間をつぶすことにした。

「そういえば、最近は神器の回収は行かないんですか?俺としてはこたつでダラダラできるからいいんですけど」

「まさか助手君から言われるとは思ってなかったよ」

答えたのはエリス様改めクリスだった。

「手伝って欲しいときはこっちから行くから待っててよ。まあ、本音を言えば、夜は冷えるから活動は遠慮したいんだよね」

なるほど。夜に出歩くなんてとんでもない。屋敷の中が暖かいおかげですっかり忘れていた。

「カーズーマー、リザレクションかけ終わったわよー。さっさと帰ってきなさーい」

「お、時間ですね。じゃあ、エリス様、行って来ます」

「…来ないでくださいね」

「あ、はい。すいません」

すっかり忘れていたが、ここ、来ない方がいいんだよな。

死ぬって宣言してから蘇生ってのは、ちょっと格好悪いよなあ…

何も言えないまま俺が立ち止まっていると、

「早く戻らないとまたイタズラされますよ」

エリス様に背中を押され、俺は門をくぐった。



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気がつけば、真っ白な雪原が広がっている。

「あら、今日は素直に帰って来たじゃない」

「そりゃあな。去年は酷い目にあったんだ。俺には学習能力があるんだよ」

辺りを見渡すと、もう冬将軍の姿はない。

「俺が討伐した雪精は4匹か…去年よりは多いけど…なんか微妙だな。お前らはどうだ?」

俺が死んだせいか、辛気臭い雰囲気になっている。

とりあえずこの雰囲気を変えようと、話を振ってみることにした。

「私は7匹です。去年以上の成果は出せませんでした」

まあ、めぐみんは白狼を倒したんだから、しょうがないか。

「私の成果はすごいわよ!帰ったら驚かしてあげるんだから!」

「私は…えっと、その…」

「お前には初めから期待してないからいいよ。というか、アクアにバインド解いてもらえ」

「あ、そうね。はい、『スペルブレイク』」

「あぁ、もったいない!」

白狼が出現したためか、雪精の討伐数は振るわなかった。

しかも、また死んだし。

結局、目標は1つも達成できなかったな…

成長しない俺たちの姿に呆れながらも、西に傾き始めた太陽をみて、

「帰るか」

俺たちは帰路についた。



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俺たちはギルドに戻って夕食を食べている。

「よし。私の捕まえた雪精を見せてあげるわ!」

あ、そう言えばそんなこと言ってたな。

アクアがハンカチを取り出し、広げると、1匹の雪精が飛び出してきた。

「どう?賢い私は雪精を隠していたのでした!まだまだいくわよー」

アクアがハンカチを振るたびに雪精は次々に飛び出し…

10匹も捕まえてたのかよ。

「どうよ?私にかかればこんなもんよ!ほとんど逃しちゃったけど、さすがに私の芸は冬将軍にも見抜けなかったようね!」

なんでハンカチに10匹も雪精を隠せるのか、こいつの宴会芸には物理法則というものが欠如しているらしい。

雪精を虫かごに詰めるアクアを見ながら、こいつの才能の使い方は間違っているんじゃないかと考えていたが、それは俺のある決意に流されてしまった。

もう雪精の討伐には絶対に行かない。

俺は、心に誓った。



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早くも活動休止する予定です。

まあ、2週間程度ですが。

新年早々、予定がぎっしり詰まっていて面倒だな。

そう思いながら、現実逃避を兼ねて書かせてもらいましたが、現実逃避をする時間もないことに気付いてしまいました。

読んでくださりありがとうございました。

次回作をご期待ください。

(期待してもられるほどのものは書けないけど)

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