アピールポイント:歴史マニア
担当官が訊ねた。
「えー、青年さんは歴史小説好きとの事。突然ですが、弊社社長は、武将に例えると誰でしょうか?」
青年はきょとんとした顔で、つい言葉を漏らした。
「は?」
担当官の表情が凍った。
「なっ……そのままお待ち下さい」
別室で社内会議勃発。
ややあって―
「本日はお疲れ様でした。結果は……」
青年はお祈りをされた。
【未解決編】
後日、青年は緊張しながら面接先へ駄目元で電話をかけた。今後の就活のヒントになる何かを掴みたかったのだ。
しかし、悲しいかな、青年は訊ねてしまった。
「せめて落とされた理由を伺えませんか!?」
「内密に出来ますか? この会話も録音していますが」
「出来ます」
こちらも録音中だが、仕方ない。青年は録音スイッチをオフにした。担当官が言う。
「えー、我が社では学習教材を取り扱う関係から、歴史マニアの方は大歓迎。所謂『歴女』(れきじょ)と呼ばれる女性社員も多く勤めております。
が、
『自分を武将に例える』
というかつての会社員あるあるが弊社には染み付いており、更にそれで調子に乗らせ、いや、成り切って仕事をしてもらった方が、優れた業績を残す人が多いのです。
ですので、最低限、社内の人間や、来訪されたお客様を武将に例えられるくらいの頭の回転の速さ、思考の柔軟さを常に披露出来る人でなければとてもとても……では、失礼致します」
通話が切れた受話器を握り締め、這いつくばりながら、青年はうめいた。
「そんな文化が存在しただなんて……!」
シリーズ・就活 躯螺都幽冥牢彦(くらつ・ゆめろうひこ) @routa6969
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