アピールポイント:恥ずかしい台詞もためらわない
担当官が訊ねた。
「えー、青年さんはその時必要ならば、聞いている方が思わず照れてしまう様な台詞で気持ちを伝える事もいとわないご性格。
ちなみに、私の心を今、その世間では恥ずかしい台詞とされる言葉で動かす事は?」
青年はきょとんとした顔で、つい言葉を漏らした。
「今、ですか?」
担当官の表情が凍った。
「なっ……そのままお待ち下さい」
別室で社内会議勃発。
ややあって―
「本日はお疲れ様でした。結果は……」
青年はお祈りをされた。
【未解決編】
後日、青年は緊張しながら面接先へ駄目元で電話をかけた。今後の就活のヒントになる何かを掴みたかったのだ。
しかし、悲しいかな、青年は訊ねてしまった。
「せめて落とされた理由を伺えませんか!?」
「内密に出来ますか? この会話も録音していますが」
「出来ます」
こちらも録音中だが、仕方ない。青年は録音スイッチをオフにした。担当官が言う。
「えー、我が社では恥ずかしい台詞は大歓迎。契約相手である老若男女を見事に口説いて頂かなければなりません。
定期的に社内でハート泥棒選手権大会を催し、上位入賞者に重要な取引を任せる事も率先して行っております。副産物として生まれてしまう関係も、それが禁じられた関係でしょうと大切に使わせて頂いております。
しかし、あなたは最初に担当官である私の心を動かせなかった。
……利益をもたらすものは搾りかすになるまで使う。それが『会社』、『企業』というものでして……では、失礼致します」
通話が切れた受話器を握り締め、這いつくばりながら、青年はうめいた。
「とっさに披露していたら搾りかすにされる所だった……!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます