バラク=マシューズ
「あいつは、バラクは魔法使いを嫌っている」
「え──」
魔法使いが生まれた国で、魔法使いが飛び交っていたこの国で、魔法使いを嫌う?
何故だ?
少々の疑念を抱きながらもレイナは店主に向けて言った。
「それが何か問題でも?」
「え?いや嬢ちゃん魔女なんだろ?バラクは魔女が嫌いだから杖なんて作らないと思うぞ?」
「作って貰えないなら作ってもらうまで押してみるまでです」
店主は目を丸くし、そして笑った。
「はは、面白いな、嬢ちゃん!嬢ちゃんがそう言うなら好きなだけフラれて来い!」
「むぅ、私はフラれません…」
店主の言葉に頬を膨らませたレイナは、「はぁ…」と小さな
「それではおじさん、私は先を急ぎますね」
「おう、気ぃつけて。また寄ってくれよな!」
「はい、ありがとうございます」
レイナは店主へと笑顔を向け、一礼してからその場を去り、バラク道具店へと向かった──。
大通りを行った突き当りの角。
店主の説明は簡単だったのだが……
「ここは、どこなのでしょうか……」
先程の場所とは異なり、人が少なく、全く騒がしくなく静かな場所だった。
「ちゃんと言われたとおり行ったのになんで……」
ひとまず来た道を戻ろう。そう思うレイナだが、簡単な道のりを覚えれずに迷ってしまうほどの方向音痴。
来た道を覚えているはずもなく─
「まってここほんとにどこなんですか!?」
さらに迷い薄暗い路地へ出たレイナ。
ガクっと、肩を落とし「はぁ」とため息をつき、壁にもたれ、しゃがんだ。
キュル……。と可愛い音を立ててレイナのお腹が鳴った。
レイナは耳まで真っ赤にし、お腹を抑えた。
「さ、さっき食べたばかりなのに…!まぁ、二日くらい無食だったからなぁ~。あぁお腹空いた…」
しゃがみ、かぶっている大きな帽子のつばを掴み顔が見えなくなるまで下げた。
知らぬ街であったがために、行く先もわからず、途方に暮れた。
レイナは俯き、見えているのは冷たい石の床だけだった。
静かに、ずっと地面を見つめていると、レイナの目に靴の姿が入った。
少し驚いた様でその者の姿を確認しようと上を向いたと同時に相手は口を開いた。
「嬢ちゃん、こんなとこで何やってだ。早く帰んねぇと夜になって冷えて風邪ひくぞ」
「あぁ、いえ。私この街に来たばかりで帰るとことかないんですよ…。お気遣いありがとうございます」
「そうか」
レイナの前を通りかかったフードの男は言いい、レイナもその事にすぐ返事をした。
男はレイナの方をチラと見て、「気ぃつけてな」と言って去ろうとした。
しかしレイナはそれを呼び止めた。
「あの、バラク道具店ってどこにあるか、教えて貰っていいでか?」
男はレイナの方へ顔を向け、「ついてきな」とそう言った。
その言葉を聞いたレイナは安心し、さっきの暗い顔とは裏腹に、満面の笑みで「はい」と答えた。
歩き始めてさほど時間は経っていないだろう。
フードの男は黙って明かりのつかない店へと入っていき、明かりをつけた。
店の中にはナイフやハンマー、トンカチなどといった建築系の道具が並んでいた。
店の中を一通り見渡し、もう一度フードの男に目を向けた。
すると男はフードを下ろし、レイナの方を向き名乗った。
「俺ァ、バラク。バラク=マシューズだ。この店の店主だァ」
- 烏丸 ノート @oishiishoyu
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