第一章 魔女の杖
始まりの街
──旅を始めて数日の時が経った。
レイナは今、ある街を目指し、悠々と空を飛んでいた。
ある街、と言うのは古く、歴史があり、この世界で初めて造られた街…、『始まりの街シャバリ』と呼ばれる街へ向かっていた。
この街から魔法使いが生まれた。とも言われてもいる。
そんなこんなしているうちに街が見えてきていた。
レイナが降り立った場所は街の入口である門の前だった。
門前には兵士らしき人が二人立っており、ギラついた目で門周囲を見張っていた。
「うはぁ~、あそこから入るのかな……」
目力の強い兵士にややビビりながらレイナは門前へと歩みを向ける。
「あの、街に入りたいんですけど……」
恐れ恐れ兵士に喋りかけるレイナ。
その言葉を聞いた兵士がギラっと睨みつけレイナは「ひっ」と震えた声で驚く。
「何かの物資の運び屋か?」
「いえ、普通に観光がてら寄った人です……」
「そうでしたか、ここは他街からの物資を受け取る門ですよ。正門はあちらにありますよ」
兵士はそのギラついた目とは裏腹に優しい声で教えてくれた。
その兵士のギャップに驚きつつもレイナは礼を言い、正門へと向かっていった。
「こっちが正門か、あっちのより遥かに大っきいな、それに人も多いし」
予想以上の賑わいにレイナは胸が高ぶった。
なにせ今まで静かな村の、そのまた静かな場所にいたのだから。こんなに賑やかで楽しそうな場所は胸が高ぶってしょうがない。
出店には見たことのない食べ物に装飾品など、様々で、レイナは目を輝かせていた。
その中でもひときわ目立っていた屋台があり、レイナはそこに目を向けた。
「おじさん、これはなぁに?」
目に映ったのは大きな鉄板の上に数種類の野菜を混ぜた液体状のものを焼き上げているものだった。
「ん、これかい?これは野菜の合わせ焼きだよ。ひとつ食べるかい?」
「い、いいんですか!?」
「あぁ!ほらどうぞ」
そう言うと店主は鉄板の上にある一つを皿に盛り、レイナに手渡した。
「そこに置いてある特製ソースをおこのみでかけて食いな、うまいぞ~」
そう言われるとレイナは早々とソースをかけ、合わせ焼きを口へと運んだ。
「あちっ…あむ、もぐもぐ」
口の中に広がる特製ソースの甘酸っぱさが数種類の野菜、それを包みこむ生地に絡み合い、とてつもない美味しさを醸し出している。
「おい、おいひぃ…」
一口、また一口と次々にはしが進み、あっという間に食べ終わった。
「どうだ、うちの野菜たちは美味いだろ?」
「はい、とても美味しかったです。ありがとうございました」
レイナは店主に頭をさげ、お金を差し出した。
「いや、こっちが押し付けたんだから金はいいよ」
「いえいえ、たとえ押し付けられようとなかろうと、とても美味しかったのでお金を払いたくなりました、だからそれはお礼という形で受け取って貰えると嬉しいです」
「そうかい、ありがとよ嬢ちゃん」
「こちらこそ、おじさんと会えて良かったです」
レイナは微笑みながら店主にお金を渡し、店主の手に握らせた。
そしてレイナはお金を渡すと同時に目的の事について問うた。
「あの、お聞きしたいのですが、バラク道具店って知ってますか?」
「あぁ、知ってるよ。そこの角を曲がって奥へ行ったところだよ。何か、買いに行くのかい?」
「はい、杖を作ってもらいに」
店主は少し首をかしげ、レイナに問い返す。
「嬢ちゃんもしかして魔法使い……か?」
「はい、最近旅に出ました」
「しかもその白い髪、もしかして『白の魔法使い』か?」
「はい、そう呼ばれる方もいます」
それを聞くやいなや、店主は苦い顔をした。そしてレイナに言う。
「悪いことは言わん。バラクんとこの店は辞めといた方がいい」
「な、何故ですか?バラクさんの手掛ける杖はとてもいいものと聞きますが…」
「昔の話さ、今のあいつは──魔法使いを嫌っている─」
店主の言葉にレイナは、立ち尽くす事しか出来なかった。
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