罪人の首を刎ねることが仕事の首切り男。死を与える者故に忌み嫌われる彼の前に、山羊のお面をした奇妙な男が「ある貴人と文通をしてほしい」とこれまた奇妙な依頼をしてきて――から始まる中編小説。
手紙の交換を重ねるごとに首切り男の性根の良さと優しさが、仲介人の山羊男の懊悩と忠信が、そして貴人の誇りと気高さがどんどん分かっていき、引き込まれずにはいられませんでした。
だからこそ終盤の首切り男が差し出した選択肢と貴人が選んだ答えに胸が苦しくなり、そしてほろ苦さと仄かな光が灯る最後がいっそう……。
言葉選びも秀逸で、不自然に語句が浮き上がることも無く、全てがこの物語の雰囲気に合致しているのもとても気持ち良いです。
そんな『貴人、英雄、首切り男』、是非一度ご一読くださいませ。