第2話

私の名前は、斑鳩愛理(イカルガ アイリ)。高校2年生。愛されないのに名前に"愛"がつくなんて、自分でも笑っちゃうほど醜い。


「愛莉、見てよー!今月号の雑誌に載ってたこの新作バッグ。欲しいなぁ...?」

ツインテールに目の大きさが印象的ないかにもアイドルのようなこの女は、夢野瑠々(ユメノ ルル)。小学1年生からの付き合いだ。ちょこちょこと歩み寄る小動物みたいな動作は計算なのか。


「ねぇ、愛莉。聞いてるぅ?」

「なに...また...?」

瑠々は欲しいものができればすぐ私に媚を売って、自分の欲しいものを手に入れようとする。


「わかった。お父さんに頼んどく...。」

またかと思いながらも一度苦い経験をしたことがあるため、言い返すことはできない。

「ほんと!?やっぱ愛莉は優しいねっ!自慢の親友だよ!大好きぃ!!」


ーー私が小学生の頃の話。

瑠々と私は小学校に入学してからずっとクラスも同じで特に仲が良かった。

瑠々が私に物をねだるようになったのは3年生の駄菓子屋で起きた些細な事から。

「ねぇねぇ愛莉ちゃん。るるね、お金忘れてきちゃったよぉ...。どうしよう...。」

「はい、これ、1万円。良かったら使ってよ。私のお家お金持ちだから。」

自分でも馬鹿だったと思う。子供特有の自慢したさのせいでつい見栄を張ってしまった。


それから瑠々は、お菓子を欲しいと言ったり、シールが欲しいと言ったり、おもちゃが欲しいと言ったり、自転車が欲しいと言ったり...どんどんとエスカレートしていった。


小学5年生の秋だった。

「愛莉ちゃん!私、愛莉ちゃんのもってるお金が全部欲しいなぁ!!!そしたら、愛莉ちゃんのこともっと大好きになる!」

ふざけたこといってんじゃねぇよ。幼かった私でも流石に良いなんて言えるわけ無かった。


そして、今までの溜めこんでたストレスを一気に出してしまったんだ。私は瑠々の胸ぐらを力のある限り引っ張って、


ー「うざいんだよ。死ねよ。」

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贋物の温度 望月命花 @me_ka

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