オオカミ少女

幼い頃、私たちには耳があり、しっぽがあり、オオカミになることもあり、それが当たり前だと思っていた。


「化け物」と初めて言われたのはいつだったか。

そうだ。両親が殺された日だ。


両親だけではない。

村に住んでいた者はみんな殺された。


私と兄だけが生き残り、山の中で息を潜めて暮らした。

そうしているうちに、兄はオオカミから人間に戻れなくなってしまった。

変化が解けなくなっても兄は兄のままで、私は安心した。


不安もあった。

私はいつまで私でいられるだろう。


怖かった。


私は、村を焼き尽くし、私たちの同胞を殺した奴らに復讐したかった。

復讐しなければならないと思ってしまった。


私が十五になった年、私たちはかつて私たちが住んでいた村を襲った。


人は殺さない。

ただ暴れて、作り直せるものを壊すだけ。


ちっぽけな復讐だ。


彼らに伝えたかった。


忘れるな。

今の幸せが、どれほどの犠牲の上で成り立っているのかを。

忘れるな。

この地に我が一族がいたことを。


決して忘れることは許さない。

私が生きている限り、忘れさせない。


復讐と言ってはとても小さい、自己満足の復讐だけど。

私は許したくないのだ。


私の幸せを壊した奴らを。

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題名のない物語 白石王 @shiraishi-o

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