収穫祭2

喫茶店の扉が開いて客人を招き入れているのとほぼ同じ頃。

街の際、煉瓦を積み重ね作られた塀の上でシエナは独り佇み、風の流れを読んでいた。

小麦色の髪が呼吸に合わせ微かに揺れている他には、物音も生き物の気配もない。

彼女の得物である短槍をくるんでいた布は、今は首に巻かれていた。

門の向こうには煉瓦と同じ様に赤茶けた山道が続いている。

と。淡く霞みがかった光が景色を揺らがせた。

それと同時に濃い霧が広がり、辺りの気温もみるみる下がっていく。

シエナは顔をしかめ、短槍を構えた

「やはり結界が弱まる今日を狙って来たか、精霊、いや怪異よ」

彼女の声にまるで呼応するかのように、怪異と呼ばれたものは揺らぎ、形を変える。

「姿を真似るつもりだろうが、待っていてやる必要もないよな」

冷ややかな声でシエナは呟くと、塀を越え、音もなく槍を薙いだ。











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海硝子 ゆきひさ @yukihisa_kagami

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