理想も希望も押しつぶしていく悪夢。それを一気呵成に読ませる筆力

善意も、希望も悪夢のようなエスカレーションに押し流されて押しつぶされていく様子が断片的なエピソードの積み重ねで語られるさまが素晴らしいです。
非常に脆弱で不安定な世界が一気に破滅へ向かっていく様子は、正直言ってかなり辛いのですが、それでも、読まずにはいられません。

そして結末。
「ああ、そうだよね。そういうことだよね」と渇いた感情を呼び起こしてしまうその暗示にやられました。
ええ、そうですよね。
この小説世界は、「誰か」の希望と善意に報いることも、気付くこともできなかった可能性があるんですよね……。

脱帽です。

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蜃気楼