第5話

-1-

 夜目がふと覚めて、ぼんやりとした気持ちで暴飲暴食をしてしまう。朝方になって後悔する。その悪癖が落ち着いたのは、先週の事だった。


「わたしのせいだ。ごめんね」


 愛田しょうこはすこし困ったように俯いた。声が出ないのは愛田しょうこのせい、ということか?ぶっ飛んでるね。愛田しょうこ。


 どういうこと、と訪ねたかったが、なにせ彼女のいうとおりなら、彼女のせいで声が出ない。それを察したのかしなかったのか、愛田しょうこは続けた。


「わたし、人間の子どもと同じ生まれ方をしなかったの」

「私は絵の具でできた人形だったの」

「足りない部分をクラスの子から借りてるの」


三点に要点をまとめられても、まじで、という感じでしかなかった。

声を返してとも思わなかった。愛田しょうこのやりたいようにやって欲しかったし、私の声を奪ったうえで、この愛田しょうこが成り立っているのは紛れもなく誇らしかった。なんでそんな気持ちになるのか、だけが、分からなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

雨ひと粒ふる @worldendwaltz

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る