jun 11 2247~jun 16 2247

jun 11 2247

母星に帰還したはずのセブンスが、F5地点の海面突出区域からほど近い海域で水死体で発見された。

熱と海水のせいで、顔も分からないほど膨張し、腐敗ガスを溜め込み海面を漂っていたそうだ。

しかし、セブンスであると特定できたのは、幸運にもガス爆発せずに残っていた脳に埋めてあったチップのお陰である。

だが、セブンスが死んだ事などのだ。

一番の問題は、セブンスを乗せて発射したはずのスリープポッドの座標が、地球に変更されていた事だ。

無断で帰還用のスリープポッドの座標を変える事は重罪だ、もし座標を変更する場合は船長と副船長、並びに母星の管制室長3名の同意をえなければいけない。

その誓約を破り、誰かが座標を操作した。

しかし、なぜわざわざ地球に再設定しなおさなければいけなかったのか。

セブンスを母星に送還してはならない何かがあったのか。

そして、着水したはずのポッドはセブンスを放り出し、一体どこに消えてしまったのか……。

犯人を含め、その部分の謎はまだハッキリと分かっていない。

ただ……この船には、セブンスを殺した殺人鬼が居るという事だけは分かる。

ああ、マリー。俺は今、不安で押し潰されそうだ。

殺人鬼が息をする。こんな狭い船で一晩明かすなど、恐ろしくて出来やしない。

せめて、せめてお前がベッドサイドに腰掛けて、俺の髪を撫でてくれたなら、一抹の不安すら吹き飛ぶというのに。









jun 12 2247

夢を見た。

マリーと海を泳ぐ夢だ。

彼女は俺の手を引いて、湯船のような海水に誘うと、俺の防護メットを外して深くキスをすると海中へ引きずり込んだ。

そこから、不思議だった。

俺は海中でも息をして、裸眼同然に海中を見ることが出来た。

マリーは、そのまま俺の手を引いてゆっくりと海中を散策し、斑模様のサンゴや、銀色の鱗を翻す小魚の群れや、彼女の仲間が住む海底神殿を見せてくれた。

その間、マリーは鈴が転がるような声で俺の名前を呼んでくれた。

しぐま、しぐま、しぐま……と。

それが無性に嬉しくて、俺もマリーの名前を呼び、お互いに微笑み、またキスをする。

幸せ……本当に幸せな夢だった。

あんな事があった次の日に、こんな幸せな夢が見れて、気はだいぶ楽になった。

しかし、起きたら夕方なのはいただけない。

寝汗で服がびしょ濡れだ。

シャワーを浴びるので、今日はこのぐらいにしておこう。









jun 13 2247

マリーと行動した後、俺はようやく船長に今までの事をまとめた報告書を提出した。

地球に、進化した人類が居ると。

その新人類の少女と交流を深めたので、母星へ連れ帰る許可を求めた。

なのに。なのに。

船長は俺の報告を、放射能によるメンタル低下から来る幻覚症状だと切り捨てやがった!

ふざけやがって!!!

お前になら大丈夫と思って、この俺がわざわざ報告してやったのに!

くたばれレイモンド・フィリップス!!!

お前が信じなかったマリーを、俺が連れ帰って証明するだけだ!

ああマリーマリーマリー。大丈夫だ、俺がきっと母星に連れ帰って、お前の素晴らしさをこの馬鹿どもに知らしめてあげるからね。

それまで辛抱しておくれマリー……。









jun 14 2247

謹慎処分を、言い渡された。

部屋から1歩も出るなと。

どうして?

なぜだ?

おれがいったいなにをした?

マリーに会いたい。









jun 15 2247

チョウが見舞いに来てくれた。

いいやつだ。

チョウにもマリーの事を話してみた。

やつは、信じてくれた。

嬉しい。やっぱりいいやつだ。

マリーに会いたいことを伝えた。

謹慎が解けたら会えると言ってくれた。

また明日も来てくれる。

少しだけ、気が楽になった。









jun 16 2247

夢をみる。

マリーが俺を迎えに来てくれる夢。

ぺたぺたとマリーの足音が、部屋のすぐそこまで聞こえて。

ロックを外して、彼女が入ってきて。

俺の手を引いて、夜の海に連れていってくれる夢を。

海の底で、俺達は。

底で輝く砂の数よりもキスをして、彼女の胸に抱かれて、最早お飾りだけの俺の生殖器をスリットの中へと誘われ、とても気持ちの良い事をした。

そしてしばらくすると、遠くから見たあの神殿に流れ着いていて。

そこでは、マリーと同じ年頃の少女達や、二足歩行の人に似た大型の魚類が沢山いて。

少女や魚達は、ずっと向こう側の方を向いて、何度も何度もこう言っていた。


いあ! いあ! くとぅるふ! ふたぐん!

いあ! いあ! くとぅるふ! ふたぐん!

いあ! いあ! くとぅるふ! ふたぐん!

いあ! いあ! くとぅるふ! ふたぐん!

いあ! いあ! くとぅるふ! ふたぐん!

いあ! いあ! くとぅるふ! ふたぐん!


マリーも、言っていた。

だから俺も、マリーの真似をした。

何度も、何度も、繰り返した。

繰り返していると、頭の真ん中からボーッと白みがかってきて。

体が熱くて、心臓がドクドクとうるさくて。

涙が止まらなくなって、もう真似をしたくないのにどうしても真似をしなければいけなくなって。

もう、もう駄目だ。となったときに、何故か軟体生物の頭を持った、恐ろしく巨大な何かの姿がパッと見えて…………………。


あ、


ああ、




ああああああああああああああああああああああああああああああ

あああああああああああああああああああああああああああ

ああああああああ ああああああああああああああああああ あああああああああ あああああああああああああああああああああああああああ ああああああああああああああああああああああ ああああああああああ

ああああああああああああああああああああああああああああああ ああああああああああああ ああああああああ

ああああああああああ ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ

あああああああああ









まりーのところに、いかないと











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シグマ・ウェントリは死んだ 蒼鬼 @eyesloveyou6

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