もしも、前世で死に別れた最愛の恋人と、兄妹として生まれ変わってしまったら、あなたならどうしますか? ――そんなキャッチコピーが頭を過りました。
もちろん、現代において兄妹間での恋愛は禁忌です。主人公の理沙(前世の名前は「まゆこ」)と実の兄であり前世の恋人である智樹(前世の名前は「誠一」)もそれをよくわかっています。
だから、二人が「まゆこ」と「誠一」という恋人同士として会うことができるのは、たった一冊のノートの中でだけ。現実では口をきくことすら滅多にないただの兄妹として生きているのです。
この時点でもう切ない。どんなに深く愛しく想い合っていても、絶対に結ばれるわけにいかない間柄なんて。偶然とはいえ何という残酷な生まれ変わり方をしてしまったのでしょうか。
そんな息苦しく切ない恋を抱える理沙ですが、いつまでもこのままではいけないとは頭では理解しています。それほど遠くないうちに諦めなければいけないのだと。その時は迫っているのだと。けれど、理沙の中で「まゆこ」が泣くのです。『まだ、終わらせたくない、終わらせないで』と、いつしか理沙が自分と「まゆこ」の境目がわからなくなるほどの切実さで。
危ういまま保たれていた均衡は、理沙の幼なじみである優太からの告白と、その傍に智樹が偶然居合わせたことによって崩れました。その夜、理沙は智樹に誘われます。明日、思い出の街へ行こう、前世の恋人誠一とまゆことして、と。それは終わらせるための旅でした。
変わり、失われてしまったものばかりを思い知らされる小さな旅の最後に、たった一つ理沙が見つけた「 あの時と同じ二人の思い出」。
そうして動き出す二人の時間に胸がつまります。
捨てられないけれど捨てなくてはならない恋に揺れる理沙たちと、二人が見つけた「あの時と同じ思い出」……切なく美しい恋の景色を是非その目でお確かめください。