SFとファンタジー、どちらも本気だからこその見事な和合

まずそのあらすじのインパクトたるや、パワーワードの羅列たるや少年心をくすぐる設定たるや。

それだけでも十分に引き込む力があるのに、地力の高さが嬉しいところ。

土台となる民族的なファンタジーとしての舞台、さらにその裏に秘められたSF要素。
いずれも骨子がしっかりとしているから、どちらに傾くこともなく均衡のとれた物語が成立しています。

キャラクターのセリフの一つ一つに、短編とは思えない世界の広がりを感じさせてくれます。

ヒロインのゲルダの物語、雷精霊トニトルスとの関係性、それらはここで完成こそされているものの、これだけで終わらせるのはもったいないと読者としては思ってしまう。

そんな珠玉の名短編です。
こういう作品はありそうでなかなか見つからないジャンルなので、非常に楽しんで読めました。