真っ白な太陽

物心ついたころから身を守る事に必死だった。

食事にありつくために傷を負うことも多かった。


ある程度体が大きくなってから覚えたのは、二本足で歩く生き物に友好的に接することだ。

あれらには好意を示せば良いことがたくさんある。

擦り寄ってみたり、毛繕いの要領で舐めてみれば、撫でられたり食事を提供したりしてくれる。


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ある日、体が傷だらけになったとき、二本足の生き物に助けられた。

高い所も身を隠す場所も豊富な、狭くて暖かいところに連れて来られた。


食事が提供される場所と、用を足す場所を覚えてからは、二本足は私をあまり構わなくなった。

ただし、二本足にも縄張りがあるようで、特定の場所に立ち入ると物凄く怒られることを知った。そこに近づくのはやめた。


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随分とこの二本足との付き合い方にも慣れた。


二本足は温かいので、動いていなければ乗る。すると撫でてくる。

朝は食事を要求する。すると食事を用意してくれる。

それ以外は寝たり体を動かしたりして暇を潰せばいい。


怒ったら、それをしなければいい。


それだけだ。


ご機嫌な日々が続いた。


緊張は忘却の彼方に消えていた。


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二本足は随分と好意的で、単純だ。

知らない匂いのするやつが何度かやってきたが、基本的には全員の膝に乗ってやればいい。


舐めると撫でてくるので、繰り返し舐めてやる。


乗っていれば温かい。遊んでくれれば楽しい。それだけで事もない。


いい暮らしだ。


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あれからずいぶんと経った。


最近、体もうまく動かなくなってきた。

食事をしても戻してしまうことが増えてきた。


でも特に問題はなかった。


いきなり光ったり暗くなったりする、真っ白な太陽。


狭くて好ましい空間。

暖かい膝。

食事はいつでもできる。


あの日々に比べれば十分だ。


なんだか悲しそうな顔をしている二本足がいる。

そんな顔をするな。大丈夫。また明日も膝に乗って、舐めてやるから。

お前たちには感謝しているのさ。



ちょっと今日は疲れたので、いったん寝ることにする。

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灰色のノルディック @yast03

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