第十話のためにある物語、というのが読み終えたときの最初の印象です。 灰色を有すること、有さないこと。たったそれだけで狂ってしまった兄弟の絆と生が、特別煽るわけでもなく、淡々と描かれています。それだけに、非道な兄たちのやるせない心の内や、愛する者たちの間で悩み苦しみ、もがいた末のスンジェの決意と咆哮が一層際立つ。悲劇の後の、新たに芽吹いた希望も。 哀しい、確かに物を語っている作品だと思います。
強い、とても強いメッセージ性のある物語です。結末は悲しく醜く切ないものではありますが、同時に美しく、儚く、そして、力強い。スンジェが真に望んだものは何だったのでしょうか。読者としてはただ、彼らがありのままで生きられる世が来るようにと祈るばかりです。