永久機関
冬宮よる
第1話
唐突ですが、クイズを出します!
右隣の右隣の右隣の右隣の右隣が自分。
これってどんな時でしょう?
まあ、少し考えればわかります。
輪っかになっているとき、永遠にこれはループできます。
右隣も、左隣も自分。
これはどんなことでしょう?
簡単です。
鏡を自分の左右に置けばよい話。
すると、永遠に自分の隣は自分になりますね。
なぜ私がこんなクイズを出すと思いますか?
実は私は末期ガンです。今はとある病院のベッドで横たわっております。
年齢ですか?いわゆる高齢者というものです。
余命は半年前に半年と告げられたので、もういつ死んでもおかしくはありません。
最近の私の趣味は禅問答のような真似を一人ですることです。
自分の中に別の人格を作って、遊んだりもしています。
家族はもういません。出て行ってしまいました。
私が若い時に離婚しました。
実はもう私の眼は見えなくなってます。
だから私の楽しみは限られています。
死が近づいた今、私はとある疑問を持っているのでした。
私は死んだらどこへ行くのだろう。
誰しもが一度は考えるでしょう。
私は怖いのです。
煉獄から地獄へ落ちて業火に焼かれるのが。
私は死にたくないわけではありません。
ただ、死んでからが怖いのです。
そんなことを考えていたら、私の病室内にピピピピとけたたましい機械音が鳴りました。
複数人が駆け足で私の病室へと入ってきたのがわかりました。
なにやら必死で私の名前を呼んでいます。
私はやっと理解しました。私はもう死ぬのだと。
この無機質な脳波の音を聞きながら、私は死ぬのだと。
不意に右隣の右隣の話を思い出しました。
私の心には今、無機質な機械音が響いています。
この無機質な音、永遠に終わることのない音こそが、もしかしたら死なのかもしれません。
それはまさに永久機関、輪のようなものなのでしょうか。
私が死ぬ瞬間に、多くの命もまた生まれます。
それは永久に、ずっと、ずっと。
永久機関 冬宮よる @tonight3941
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