いつでも猫は無表情だ。それでいて1つ1つの物事に対して真剣そのものだ。
私たち人間は、そんな猫の様子にどうしようもなく心をくすぐられます。それはきっとはるかな古代、カイロ近郊でピラミッドをせっせと造っていた時代から変わらないのでしょう。しかしそんな姿を見て、バスター・キートン(無表情が有名なコメディアン)を重ねた人は、おそらくそう何人もいまいと思います。この辺りの作者の独特の着想と博学には唸らされます。
加えて、本作に通底している「夢と現実世界」や「〇〇としての生き方」などのテーマにも古典的な米国コメディ映画(あるいはその役者)へのリスペクトが見られます。
夢と現実の世界を貫いて流れる主人公・ポーンくんの愛嬌に癒されつつも、作者の精緻な筆致によって描かれる光と闇の両面に時折どきりとさせられます。
そして最終話まで読み終わった後、心にじーんと沁み渡るこの感情を、私にはうまく書き表せないのが歯がゆいです。
できれば多くの方に読んでもらいたい。そしてこの読後感を一緒に味わえたらと願います。