第2話 覚醒?

「これからどうする?」


「どうするって言われても・・・」


二人は一応、会議が開かれている中央防衛本部まで行くことにした。


だがこの時間、今更言っても会議は終わっている。


でも団長はまだ仕事をしているはずだから報告はしておこう。


「何でこんなことに……」


ルーは自分の胸を触りながらため息をつく。


「何ため息ついてるんだ?だって弟が女体化って完全にあれだろ?」


「あれ?」


「あぁ、あれだ、お前、良かったな!私が男じゃなくて……」


それを聞いてルーは顔を赤くする。


「あれ?もしかして私が男の方が良かったとか?」


コイツ……なんて楽しそうにニヤけてんだ。


「そ、そんなことおもってないよ!

だって……だって……/////」


「ご、ごめんって……

からかっただけだから」


「第一に、姉さんが悪いんだよ」


「なんで?」


「姉さんが遅刻しなければ雨にうたれることはなかったのに……」


「雨は私のせいじゃないだろ!

アマテラスのせいだよ!」


「アマテラスは関係ないよ!」


「関係ある!だよな、アマテラス!」


リールは天に向かってそう叫ぶ。


「アマテラスなんているわけ……」


すると天から何かが降りてくる。


それは二人の目の前にゆっくり着地し、

ニッコリと笑った。


「呼びましたか?」


「いた!?」


「だから言っただろ?」


アマテラスは二人の顔を見て目を見開いた。


そしてルーに近寄り、頬を優しく手のひらで包み込んで……


「あら、あなた……可愛い❤」


「へ?」


「わたし……実はその……同性愛者なの」


「と、突然のカミングアウト!?」


「はぁぁ、我慢出来ないわ!」


アマテラスは無理やりルーにキスしようと唇を近づけてくる。


「や、やめて!あ、あぁぁ!」


もとから軟弱な体が女体化している。


抵抗する力などあるわけない。


虚しくも熱いキスをさせられた。


「う、うぅ……、初めてだったのに……」


「だ、だいじょうぶか?ルー」


へたり込むルーを小さなリールが助けようとする。


だがもちろん無理だ。


アマテラスはというと……


「うふふ、ごちそうさまでした♥」


なんて言いながら片頬を撫でている。


この人、やばい人だ……


「お礼に力を貸してあげるわ、

この世界で神の力を持つ人は6人、

あなたが7人目の神人よ!」


そう言ってアマテラスはルーの胸に手を当てる。


赤色のオーラが体に流れ込んでくる。


アマテラスは手を離し、


「ふふ、困ったらいつでも呼んでね!ばいばーい♥」


そう言って天に帰っていった。


「……」


「……」


何だったんだろたう……


「ルー、何か変わったのか?」


「んー、特に……」


ルーは近くにあった大きな石を抱えようとする。


「ん、ん〜!はぁ、む、無理だよ……」


力が上がったわけではないようだ。


「本当になんだったんだ……」


疑問が残る中、

二人は再び団長のもとに歩みを進める。


しばらくして街に入り、人がごった返している店があればガランとした店もある。


そんな風景が見えてくる。


その町の中心にあるのが目的地だ。


大きな門の前に着くと二人の兵士が道を遮る。


「通行書を……」


リールが通行書を見せると


「……いや、似ているが情報が違うな、

あんた、今何歳だ?」


「17だが?」


「とてもそうは見えないが……」


「ここを通すことは出来ない、

写真が違いすぎる」


「どうしても通りたいんです!

お願いします!」


ルーのお願いに一瞬ひるむ兵士。


いや、お願いよりも姿、外見に怯んでいるようだ。


まぁ、今のルーは美少女だから……


「でも、無理です!」


「頑固なやつらめ!」


その時、扉が開いた。


「二人を中に入れてくれ」


「だ、団長!いいんですか?」


「あぁ」


二人は団長に連れられて団長室に入った。


「座ってくれ」


団長と向かいあわせで座る。


「なぁ、お前達はリールとルー……だよな?」


「!? わかるのか?」


「あぁ、確証はないがなぜかそんな気がする」


二人は遅れた理由と

館で起きたことを話した。


もちろん遅刻理由は嘘だが……


「……そんなことが」


団長は唸りながら考えている。


「もちろんその体格では剣は愚か、

短剣、弓矢も難しいだろうな……」


「……」


リールは珍しく深刻な顔をしている。


「代わりになるような人材はいないしなぁ」


リールが軍に入ったのは8年前。


つまり9歳の時だ。


その時にはもう両親がおらず、

稼ぐ手段は狩りのみ。


誰も助けてはくれなかった。


ルーは怖がりで剣も握れなかったから荷物持ちだった。


リールが狩りで倒したモンスターの部位を売ったり食べたり……


それでなんとか生きてきた。


でも、大型のモンスターに追われてルーが諦めた時、リールは立ち上がって


「お前を守る」って……


跳ね飛ばされても叩きつけられても

姉さんは何度も立ち上がった。


でも、9歳が勝てる相手じゃなかったんだ。


短剣が折れて戦う手段を失った。


そんな時、この団長に救われた。


目の前で大型モンスターが真っ二つに……


「だいじょうぶか?」


今まで聞いたことのない言葉。


誰にも頼らず、誰にも助けてもらえず、


二人だけで生きてきた。


1番聞きたかった言葉。


気がつけば泣いていた。


団長はそれから二人の面倒を見てくれた。


兵士たちの戦い方を見ているうちにリールは正しい戦い方を覚えた。


そして軍に入ったのだ。


9歳とは思えない剣さばきに誰もが驚いた。


目で覚えたものを

1度目で完璧にコピーした。


その次の年、10歳になったリールは副団長になった。


剣術はさらに進化し、誰もかなわないほどにまで成長した。


多くの悪魔を倒し、モンスターを倒し、国を守ってきた。


だが今はただの幼女、守られる側だ。


「僕が……」


「ルー、お前は最弱だと言われている、悪いが戦場には……」


「姉さんの分まで頑張りたいんです!」


ルーの本気の目に根負けしたのか団長は渋々頷く。


「だが、テストを受けてもらう!」


「テスト?」


「そうだ、入団テストというやつだ」


3人は兵士たちが戦闘の練習をする闘技場にきた。


「では、まずは最弱モンスターを倒してくれ」


そういわれて出てきたのは植物系の可愛らしいモンスターだ。


モンスターはトコトコと歩いてきてルーの足にぶつかりコケてしまう。


その衝撃で死んでしまった……


「……弱すぎたか」


「……うぅ、死んじゃった」


「ルー!なくなぁ、心を鬼にしろ!」


「じゃあ次は中級モンスターだ」


現れたのは草食系モンスター


ルーは剣を構え一気に切りかかる。


だが……


ガツッ


そう言って剣は止まった。


刃がモンスターに入らない。


攻撃されたことに怒ったモンスターはルー目掛けて暴走する。


「わわわ、こ、こないでぇ〜!」


ぐるぐると追いかけ回される。


「はぁ〜、やっぱりか……」


団長はため息をついてモンスターの前に立ち、ゴツンっと殴る。


するとモンスターは倒れて気を失ってしまった。


「あ、ありがとうございます」


呼吸が荒いルーの胸が上下する。


「あ、あぁ、だが、お前はやっぱり……」


「だ、団長!」


1人の兵士が闘技場に駆け込んできた。


「どうした?」


「悪魔が、悪魔が街に近づいています!」


「なんだと!?」


「小規模ですが大型も数体いるようで……」


「今すぐみんなを集めろ!」


そう言うと団長は準備をしに戻る。


少しして大量の武装した兵士たちが整列し、団長が前に立つ。


「これから悪魔軍討伐に向かう!

だがその前にひとつ報告がある!

副団長のリールの事だが、悪魔の呪いによって幼児化してしまった。

ここにいるのが副団長だ」


団長は隣にいたリールを指す。


兵士たちはザワザワしている。


「信じられないかもしれないが信じてくれ、


呪いをとくには呪いをかけた悪魔を倒さなくてはならない!


それまでは副団長には治療係をしてもらう。


大きな戦力を失うことになるがお前達なら大丈夫だ!副団長のためにも悪魔どもを根絶やしにするぞ!」


兵士たちは『オー!』という掛け声と共に団長戦闘で悪魔出現地域に向かう。


そこは街から少し離れた草原で普段はきれいな場所だ。


だが悪魔の出現によって空には黒い雲、


花はかれていて風が強い。


悪魔軍はゆっくりと街に向かっている。


「ここで食い止めるぞ!」


兵士たちは一斉に切りかかり、悪魔達はバタバタと倒れていく。


大型の悪魔には数人で切りかかり、なんとか倒し切ることが出来た。


「よし!討伐完了だ!」


兵士たちが喜んでいるとき。


「姉さんの仲間はみんな強いね」


「そうだね〜、私の方が強いけど」


「今の姉さんは戦力外だよ」


「うっ、すぐに呪いの悪魔をぶっ倒してやる!」


「そうだね、僕もこんな姿じゃ恥ずかしいよ……」


その時、リールの後ろに黒い影が見えた。


「姉さん!危ない!」


ルーはリールを突き飛ばす。


その瞬間、悪魔はルーを丸のみしてしまう。


「ルー!!」


まだ完全に死んでいなかったのか……


「ルー……なんで……」


「ルーを取り返せ!」


兵士たちが悪魔にかかろうとした瞬間、


悪魔が苦しみ始めた。


「な、なんだ?」


悪魔の腹が破れ、何かが飛び出してきた。


「ルー!」


ルーの右手にはさっきの短剣が握られていた。


悶え苦しむ悪魔にルーはまだ攻撃を続ける。


「姉さんを傷つけようとする奴は許さない!」


それでも悪魔は反撃をしてくる。


だが、それらをすべて避けきり、首筋にもう1発!


ルーは動けなくなった悪魔に最後の一撃をくらわせる。


その体は赤色のオーラをまとい、


切りつけた傷口を燃やす。


悪魔は炎に包まれて黒い灰に変わってしまった。


「……ルー」


「姉さん!だいじょうぶ?」


「それはこっちのセリフよ!」


リールは泣きながら抱きつく。


「ルー、今の力は……もしかして」


「これが……神の力?」


戦ってる時、アマテラスの声が聞こえた気がした。


体が軽くて動きやすくて力が溢れてきた。


「まぁ、今日はもう休め」


団長にそういわれて二人は直接家に帰った。


リールは体が幼女だからか8時には寝てしまった。


普段は夜更かしをしているが……


ルーも支度をしてベッドにつくが寝られない

いつもとは違う感覚に違和感が……


寝返りが打ちにくいし、仰向けだと苦しい。


だが、今日の疲れもあるのだろう。


しばらくするとまぶたは

自然に閉じていった。

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幼児化の呪いにかかった姉と女体化の呪いにかかった弟が旅に出ます プル・メープル @PURUMEPURU

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