第2話

という結論に達したからといって、時間が一瞬で過ぎ去ってくれるという事態が起こるわけもなく、自由な時間が生まれてしまったわけだ。


何をしようか。


なんとなくで察することしかできないが、今の私の状態は生まれたばかりなのだと思う。


それはつまり、することが無いことを示しているのだ。


何をしようか。


と、考えてみても思い付くことはなく、これをずっと考えていればいいのではと思いつつも、それは厳しいのではないかと思う。


いつまでも思考の海に今みたいな入ってもいいのではないかと思うのだが、

ふと我に返り思うのだ、

時間を無駄にしているのではないかと。


...

...

...


発想を変えよう。


物事を考えるとき、

考えている時間が、ある一定を越えた瞬間に一つの事実が生まれる。

その考えていることは無駄なのだ、と。


答えというものが、

考えてもでてこない、

ヒントの欠片すら思い浮かばない、

こういう状態であるならば、考えたところで答えなんて見つからないのだ。

ならどうするのか。

何を考えていたのか思い出して、一番最初に持っていた意見を採用するのだ。大抵それでうまくいく。


私は今の間に何を考えていたのか。

それは時間の潰し方だ。

とはいえ、時間を無駄にはしたくない、という思いは強くある。

そんな有意義な時間の過ごし方を考えていたのだった。


時間がかかること。

時間をかけられること。

時間があるときにしかできないこと。

時間をかけないと意味がないこと。


...

...

...


そうだ、修行しよう。

ならば内容を考えねば。




/* --- --- --- */




それから私は、修行の内容を考えた。

そして、「それ」に気づけたのは奇跡なのだろう。


...


現在できること、とは考えることぐらいだ。

しかし、思考の修行とは何とも言えないものにしかなりそうにないので遠慮したい。

ならば何があるのか。

その新しい何かを探さなくてはならない。


こういうときに便利なのは、私に備わっている謎の知識だ。そのなかには「転生」というジャンルの物語も当然ある。


ちなみにだが、少し前に神からの使命とか、為すべきこととか、そんな夢みたいなことを言っていたのはこの影響なのだ。


そんな知識にある物語のなかにはこういう言葉がよくでてきていた。


「チート」


それは。なにも努力しなくても幸せにいきることのできる素晴らしい力。

普通に考えればそれが当たり前になるだけだというのに、多くの人間が求める力。

それがチートだ。


さて、私の状況を振り返ってみよう。

何故か生まれたばかりなのに知識がある。

というかこの状況を認識しうる自我が既に生まれている。

こんな特異な状況をチートと言わずしてなんと言おうか。


そんなわけで、私にチートがあることは明らかなわけだが、それは常識外の力。

つまり他の能力を備えていてもなんらおかしくないのだ。


この結論を思い浮かぶことができたとき、

私はやはりチートなのだと思った。


転生におけるチートの定番とは、いくらかパターンがあるわけだが、今回の場合は幼いうちに意識がある、という状況がある。

このパターンでのチート、というと、


「魔法」 チートである。


それは、魔法と呼ばれることが多いが、

奇跡、術、異なる世界の法則による現象。

など、ここから更にいろいろなパターンに分岐する。

しかし、だいたい共通しているものもある。

それは、


幼い頃に自我が芽生える自分。

ここはどこ?

赤子になってる!?

ナニコレ?え、異世界?

あれ、そういうことなら...


そうして魔法を使おうとし、魔力というものの感覚が掴め、練習を重ねて負けることがなくなり順風満帆な生活、

元の世界では送れなかった生活を送ることができる。


というものである。


私のおかれている状況から考えて、この魔法チートがある可能性が高いのではないかと思う。

...実のところ非常に暇だという現状が今の考えを支えている。失敗しても時間潰しにはなる。そんなことも奥底にあるのだ。


...


そんなわけで私は魔法を使える世界であると仮定して、更に私に魔法を使う才能があると仮定して試行錯誤を始めようと思うのだ。


そして、あわよくば、

時間をかけて修行していきたいのだ。


...


最初にするのは感覚を掴むことだ。

ここでつまずくと、この後の作業の一切がなくなってしまう。

ただ、体を動かせない身でどうやって感覚を掴むのかはわからないのだが。


だいたいの物語では気合いでどうにかなっているのだ。魔力ありそう、えい、わーいあったー。そんな流れになっている。


気合いを込めて探そう。


と、ここまで考えてきて入るのだが、実のところなんとなく最初の方から感じているのだ。

そもそも生まれたばかりで何かを感じるなんておかしく、常識外のものであろうとは思っていたのだが、ここにきて私は確信を持った。

これは魔力である、と。


では、いくぞ。

気合いを込めて、魔力を操る感じで、それっぽい感じで、何かをする。


...

...

...


私は、チートな存在であるらしい。

物語の主人公的存在であるらしい。


魔力を感じることができた。

その魔力を操ることができた。

魔力を通して自分が普通の赤子な体型をしていることがわかった。

そして、自分の身体がわかるということは、外に出すことができれば自分以外の様子もわかるということだ。


未発達な身体でも、周囲の状況を知ることができるかもしれない。...魔力を操れる時点で発達しているような気もするのだが、私は正常に成長できるのだろうか。

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