3-5 圧倒

 火花が散る。

 激しい戦いにウイングが入る間がない。


「ハハハ!なかなかどうして、人間にしてはやるではないか」


 魔族の男は楽しげに剣を振るう。


「クソッタレ!なんて馬鹿力だ!」

「アーク、無理はするなよ。お前の腕ではこれ以上は付いてこれないだろ」

「うるせえよ!舌噛むぞ!」


 余裕そうにしているカイルに対し、アークはかなり苦しそうに戦っている。

 魔族の男の剣を防ぐので精一杯だったからだ。

 アークはともかく、カイルとマルクの剣を凌ぎながら攻撃を繰り出している魔族の男の腕はかなり高いものだ。


「傭兵、そろそろ攻撃に転じたい、頼めるか?」

「いいだろう」


 小さくマルクが頷くと、左へと飛ぶ。


「ほう」


 少し感心したような顔をする。

 アークが正面に突撃していく。


「おりゃぁ!」

「雑魚は引っ込んでいろ!」


 突進攻撃を手ではじき返した。

 その死角を付いてマルクが飛び出した。


「もらった!」

「あまい、それぐらいは読めている!」


 そう言うとアークの剣を奪い、その剣でマルクの攻撃を受ける。


「何!?」

「そしてもう1人、そっちも読めているぞ」


 右手に持っている剣を逆手に持ち、反対側から攻撃を繰り出すカイルに対応しようとする。

 だが、魔族の男の剣は宙に舞い、マルクとアークと一緒にぶっ飛ばされる。


「いってえ!もーちょい手加減しろよカイル!」

「悪いな、手加減なんて知らないんだ」

「なんて男だ、私ごと吹き飛ばそうだなんて、くっ」


 ぶっ飛ばされた2人が立ち上がる。

 魔族の男は膝を突きながら肩で息をする。


「な、なにが起こった……!」


 戸惑いを隠せない魔族の男は驚いた顔でカイルを見上げた。

 自分の剣を持ち、品定めするかのように眺めている。


「残念、はずれだ。この剣でもないな。しかしいい剣だ、もらっておこう」

「人間風情にその剣をやることはできん、返せ!」

「返して欲しいなら力づくで奪いな」


 そう言うと、魔族の男は薄ら笑いをしながら殴りかかる。


「魔族の力に人間如きが勝てると思うなよ!」


 カイルはその拳を黒剣を防ぐと、左拳で魔族の男の腹に一撃を加える。

 ニ撃、三撃、攻撃を繰り返す。


「な、なんだお前……どこでそんな力を……」

「悪いな」


 無情な一撃が魔族に振り下ろされた。


 戦いは思わぬ形で幕が降りた。

 マルクもあまりの展開に早さに呆気を取られていた。

 ウイングに至ってはまだ何が起きたかすら理解できていなかった。


「さすがカイルだぜ、頼りになるぜー!」

「お調子者にしては今回頑張ってたな」

「うるせえよ」


 アークは何事もなかったかのように喜んでいる。


「凄いな君は、あの魔族をあんなに意図も簡単に倒すとは」

「本当に凄いですよね、どうしたらあんなに強くなれるんでしょう?」


 ウイングは無邪気に尋ねる。


「ただ力を求めた結果だ、鍛錬すれば誰でもできることだ」

「ひゅーかっこいいこというよねお兄さん!」

「茶化すな。お前ももっと真面目に鍛錬をしろ」

「頑張って鍛錬します!」

「やれやれ、わかっているのかこいつは……」


 半ば諦めた表情でカイルは呟いた。


「君でよければどうだい、うちの騎士団に来ないかい?」

「断る、俺は群れるのは苦手だ」

「そうか、残念だ、今回はありがとう」


 マルクは握手を求めたが、カイルはそれを断った。


「じゃあな」


 そっけない返事でどこかへと行ってしまった。


「おい、報酬を……」

「あー無駄だよ。あいつにとっての報酬はあの剣だから受け取らないよ。

 俺もいつかあいつに殺されて剣をとられるんじゃないかって心配しちゃうぜ」

「怖いことを言うなアーク団長は」

「まぁ、実際あいつこええからな。気をつけるんだなあんたも」

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ソードシーカー やる気のあるエビ @yarukiebi

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