3-4 騎士見習い
「さっきはありがとう」
「ん……、お前、さっきの騎士か?」
さっき尻餅を付いて座り込んでいた騎士がカイルにお礼を言う。
「兜でわかんなかったけど、あんた女だったんだ」
「彼女はウイング、今年まだ騎士になったばかりの見習いだ」
「おいおい、こんな任務に見習いを連れてくるのか?」
即座に疑問に思ったことを口にした。
「本来、マルク様1人で十分なのですがマルチナ王国騎士団は基本3人以上の編隊が義務付けられています。私みたいな騎士見習いはこうして実戦経験を積んで一人前になっていくのです」
「へーなるほどな。さっき死んでしまった騎士もそうだったのか?」
「いえ、彼らは正規の騎士でした……」
「惜しい人材を亡くした、これは私自身の失態だ」
マルクは元気ない声でそう話す。
「ゴーレムをなんとかできんのは少なくともこのカイルとあんたぐらいだったんじゃないかね。そもそも大型魔物と戦うときに白兵戦は普通じゃ挑まないだろ」
元気出せよ、と言いながらマルクの肩を叩く。
「ところでその剣、よくあのゴーレムの衝撃に耐えることができたな」
「この黒剣のことか?名前は知らないが、凄い鍛冶師が作った剣とされているものだ。
こいつがあるからこそあんな無茶も通せる」
「その剣の話になるとえらい饒舌になるよねカイル」
「うるさい」
そう茶化しながらカイルの肩を叩く。
「その実力があれば騎士団副団長も夢ではないですね」
「えっ」
唐突にウイングが口に出す。
「生憎だが、騎士道とやらに興味はない」
「えー?勿体無いですよ、その力があればどれだけ多くの人を救えるのか」
「人救いに興味はないね、正義の味方じゃあるまいし」
「豪腕と言えば森の中で大木ごと盗賊を真っ二つにした、みたいな逸話が確かあったな」
「そりゃ本当の話だぜ」
アークが真顔で言う。今までのような軽口ではなかった。
「こいつ、俺ごとぶった切ろうとしたんだぜ?信じられるか?」
「えっ、そうなんですか?」
「お前があんなところにいるのが悪い、第一生きてるんだからいいだろ」
「おいおい、それぶった切ってたら意味ない台詞だぜ?」
「ふふっ、仲が良いんですね」
ウイングが笑う。2人は頭をかきながら目を逸らす。
「ちぇっ、こんな幼い女の子に言われちゃ何も言えねえよ」
「これでも私は今年で16です!幼いとは失礼な」
「へいへい失礼しやした」
幼いと言われたのかちょっとすねている。
「そろそろおしゃべりの時間は終わりだ、本命が出てきた」
マルクが足を止め、剣を抜く。
そこには変わった形状の剣を持った男が立っている。
「人間風情があのゴーレムを倒してここまで来るとはな」
「なめられたものだな、人間を」
アークが軽口でそう呟くと、足元に針のようなものが飛んできた。
「軽口はやめてもらおうか人間」
「角……、オーガの類だな。魔力は感じないが気をつけろ」
「言われなくとも」
全員、剣を抜く。緊張感が漂いはじめる。
「さぁ人間!生きてここから帰れると思うなよ!」
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