3-3 豪腕③

 谷へ向かう途中、幾度となくゴブリンが襲い掛かってくる。

 先陣を切っているのは騎士団長マルクだ。

 マルチナ王国の騎士団長ともなると、この程度の魔物は物ともしないようだ。


「ひゅう、さすがは騎士団長様だ」


 軽口を叩くのはアークだ。彼自身も腕そのものは普通の傭兵と比較するとそれなりだが、達人クラスには遠く及ばない。

 実際マルクと比べて劣っている。


「もうすぐで奴らのアジトだが、さてはてこいつはどうしたものか」

「いやはや、なんでこんな狭いところにゴーレムがいるかねえ」


 要塞のような巨大なゴーレムが目の前に立ちはだかる。


「隊長さん、こいつは倒せるのですかい?」

「それは神に対して信仰を説くようなものだ、任せておけ」


 マルクがそういうと、剣を収めた。

 鞘を持ち、手のひらを柄に当てて構える。


「ハッ!」


 凄まじい爆風が突然目の前に吹き荒れる。

 砂埃が舞い、辺りの視界が悪くなる。


「おいおい、こんな芸当もできんのか団長ともなると!」

「驚いている場合ではないぞアーク、横へ飛べ!」

「へっ?」


 カイルはアークの首ねっこを掴み、横へと飛ぶ。

 マルクはそれよりも早く反対側へと飛んでいた。

 砂煙の置くから巨大な影が現れ、拳が振り下ろされる。


「うおおおお!」


 思わずアークは叫んでしまった。拳は他に連れて来ていた騎士団を2人に襲い掛かった。

 拳がゆっくり持ち上がり、2人はビクともしない。


「バーナス、トリン、すまない……」

「贖罪は後にしろ、次が来るぞ!」


 砂埃はまだ舞っており、さらにもう一撃、影が迫ってくる。

 凄まじい圧力が彼らに重圧を与える。

 もう1人残っている騎士はその攻撃から逃げ遅れていた。


「しまった!」

「あっ……!」


 完全に逃げ遅れていた。


「おいおい、こんなんで魔族のリーダーを倒せるのか騎士団長さんよ?」

「えっ?」


 目の前には大きな壁が拳を完全に止めていた。


「さっすがカイルだぜ、のゴーレムの攻撃なら防げるんだな」

「うるさい、さっさと蹴散らして先へ進むぜ」


 そう言うと、ゴーレムの拳を徐々に押し返している。


「嘘……、ゴーレムの攻撃を押しているの?」


 か弱そうな声で腰砕けて座り込んでいる騎士が呟く。

 マルクもその光景には驚かされていた。


「なんだあの黒く長い剣は……!?」

「ハァァァァァ!」


 怒号と共にゴーレムの拳を跳ね返すと、すぐに懐へと潜りこみ、大降りの水平斬りを繰り出した。

 ゴーレムの横っ腹に直撃し、そのまま振りぬいて粉々に砕いてみせた。

 その衝撃の光景にマルクは唖然としていた。


「こんなも強いのかこの男は……!?」

「伊達にって異名持っていないからな」

「彼が、都市伝説だと思っていたが本当にいたとは……」


 崩れ落ちたゴーレムの頭部を振り落としで破壊し、止めを刺した。


「まぁこんなもんだろ、こんな雑魚相手にのんびりしてられねえからな」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る