3-2 豪腕②

 マルチナ王国は広大な森の中にある。

 白く美しいその城は多くの観光客を魅了する。

 だが今その城を見に来るのは観光客ではなく、魔族と魔物だった。


 王国に対して魔族が侵略するのは長い歴史で見るとそう珍しいことではなかった。今回もこれまでと変わらない侵略ではあったが、今回の魔族はかなり手ごわく、膠着していた。

 マルチナ王国の騎士団を束ねるは全騎士団を王国に呼び戻すことを決断した。


「第三騎士団団長マルク、只今戻りました」

「マルク、ご苦労。これで全団長がここに戻りました」


 ソードマスターフレインの前に4人の団長が膝付いている。


「フレイン様、それほどに魔族達は強力なのでしょうか?」

「ああ、私自身が出陣してもいいんだがまだその時ではない」

「と言うわけで俺達の出番というわけですかい」


 と第二騎士団団長バッカスが立ち上がる。


「そういうわけだ、だがその前に近隣のギルドに魔族討伐の任務を依頼した。

 報奨金を高くしたから戦士団も動いてくれるだろう。

 バッカスに動いてもらうのはその後だ」


 フレインがそういうと、バッカスは舌打ちする。


「まぁまぁバッカスさん。んで当然だが戦士団だけにまかせるわけってことはないでしょ?」

「無論だ。今回は第三騎士団に魔族討伐の任をまかせたい」


 そういうと、マルクは立ち上がり、剣を取り出して構える。


「第三騎士団団長マルク、任されました。それではこれから竜の谷へと向かいます」

「ええ、気をつけて言ってください。万が一があった場合はバッカスを向かわせます」

「承知しました、では」


 マルクは立ち去っていく。

 バッカスはやれやれと悪態つくが、隣に居る二人の団長がまぁまぁとなだめた。


 竜の谷は森を抜け、平原を越えた先にある。魔族達はここを拠点に王国へ攻撃を仕掛けていた。

 主に空での戦闘を得意とするガーゴイルやワイバーンは王国魔術師が撃退の任を受けている。

 マルクや戦士団は陸からの侵略を阻止、魔族のリーダーの討伐が主な任務となっていた。


「今回最も難度の高い魔族のリーダー討伐の依頼を受けてくれたことを感謝するアーク団長」

「いえいえこちらこそ」


 二人は手厚く握手をした。

 不機嫌そうにしているカイルは「さっさと説明をしてくれ」と急かす。


「まぁまぁ落ち着けよカイル」

「その男は?君の戦士団にあのような男はたしかいなかっただろう?」

「俺の団も有名になったもんだ、彼はカイル。今回俺の戦士団の雇われ傭兵だ、気にしないでくれ」

「ふむ、そういうことなら」


 マルクは人呼吸置いて今回の作戦について説明した。

 説明後、他の戦士団達は唖然とした顔をしていた。


「団長、この依頼、明らかに割に合ってないですぜ?」

 と仲間のシーフが小声で言う。

「報酬の度合いは関係ないさ、でマルクさんよ、今回どういうメンバーで竜の谷に?」


 マルクが説明した作戦とは別働隊が竜の谷へと向かい、リーダーを倒すというものだった。

 彼が向かうメンバーを説明すると、マルク、彼の部下数人、アーク、カイルという限られたメンバーだけというものだ。


「少ないメンバーなんだな」

「多すぎてもよくないわけだからな、うちの副団長は陽動隊の指揮をしてもらう」

「やれやれ、んでもって俺の戦士団のメンバーは中間地点で待機で、騎士団様達が討伐本体をするわけと」

「本当は我々だけで向かうつもりだっだか、そのカイルという男がどうしてもリーダー討伐にも参加したいとのことだったからな」


 マルクは仕方ないな、という口ぶりでそう話した。

 依頼そのものは「竜の谷までの騎士団の護衛」であったが、討伐そのものも参加したいとカイルの口から飛び出したため、変則メンバーとなった。


「さて行くか、魔族のリーダーの顔を拝みに」

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