エピローグ

 『食品廃棄削減による産業の衰退を避けるために』

                     一年二組十番 木羽雪こばきよみ

 

 あるコンビニチェーンでは、消費期限や賞味期限の迫った商品、いわゆる『食べられるゴミ』の金額は年間で数百億にも上るそうです。全てのコンビニエンスストアやスーパーマーケットを合わせれば、巨額の食品が廃棄されていることは想像に難くありません。

 もったいない。そう感じるのは私だけではなく、誰しもに共通する意見だと思います。どうすれば食品を無駄にすることなく、廃棄物の量を減らすことができるでしょうか。

 すぐに考えられることは、期限が理由で商品価値がないと見なされたものを無料で配ることだと思います。また、そういった食品が、経済的困窮にある家庭へ提供されることで、社会貢献にも繋がるかもしれません。

 しかし、その方法は本当に日本を助けるのでしょうか。私はそうは思いません。

 期限間際の食品は無料になる。そう消費者が覚えてしまえば、多くの人々は無料になったものしか買わなくなるでしょう。そうなってしまえば、食料品を売る小売業者が自らの破綻を招き、次いで生産者の破綻を招きます。無料ではないと売れない商品を、誰が好んで作り、売ろうと思うでしょうか。

 価値の付かない商品を作るために、時間や手間暇をかけてくれる生産者はいません。消費者には消費者の経済活動があるように、生産者にも生産者のそれがあるのです。

 そして、生産者がいなくなれば、一次産業の衰退は著しい加速を見せるでしょう。想像に難くありません。

 まだ食べられるものが無料で店に並ぶ、それは消費者にとって夢のような光景かもしれませんが、消費者の都合だけを考えた利己的なものなのではないでしょうか。

 また、消費者の都合を優先することで、かえって破壊されるものもあります。私たちの文化です。食品の価値が無くなることは、私たちの食む生命への感謝が失われ、『もったいない』の言葉で有名になった、日本文化そのものを根底から覆してしまうのです。

 産業や文化を損なうこと無く、廃棄削減の方法を考えて行かねばならないと、私は考えます……

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幼馴染(きみ)ほどの家畜はいない 海野てん @tatamu

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