第1章 


 私は面食らっている黒川一樹をキッと睨むと――私を掴んでいた手に、思いっきり噛みついた。


「……っ」


 さすがに痛かったらしく、私を押さえつけてた手がゆるむ。


 今だ!


「泳がせてみれば・・・・・・!」


 忌々しげな声が聞こえたかと思えば、急に何かに体を締め上げられた。


「かはっ」


 なに・・・・・・大蛇!?


「俺の使役する蛇だ。代々、黒川の次期当主に受け継がれる」


 こいつが次期当主?


 次期当主がわざわざ殺しに来たっていうの?


 でも、なんで?


「ほら、力抜いてろ。すぐに死なせてやる」


 ・・・・・・このまま、本当に死ぬの?


 わけもわかんないまま死ぬなんて・・・・・・


 目覚めの儀式の前に死んで、決意が無駄になるなんて・・・・・・


「ふざけるなーっ!」


 私が大声で叫んだ時だった。


 ふいに、締めつけがなくなった。


 私にそっと寄り添う、白くて暖かいもの。


 巨大な狼が私をかばうみたいに、地面に爪を立てて威嚇していた。


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夢月の唄 @Hinata1221

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