第1章 


 通り魔、じゃない。名前を知られているし、それよりももっと危なそう。


 中二病、でもなさそう。私の血が、「危ない」って脈打ってる。もちろん、私だって中二病じゃない。


 逃げなきゃ!


 走れば逃げられる。足には自信あるし。


 すぐさま回れ右して走り出したけど、そのうち妙な違和感に気がついた。


 なんか、おかしい。


 同じところを、ぐるぐる回っているような・・・・・・。


 ぞっとして、鞄なんか捨ててがむしゃらに走った。


 殺すってなに?


 今日は大事な日なのに。


 こんなことで、心を揺らしちゃいけないのに。


 確認もせず角を曲がったら、誰かに顔からぶつかった。


「ごめんなさ――」


「あんまり手間かけさせんな」


 ぐっと腕をひねられて、腰を抱き寄せられる。


 私は真っ青になった。あれだけ走ったのに、黒川樹が目の前にいる。


 怖い。


 誰か助けて。


 誰か――。


「アホか!」


 私は空いた手で自分の頬を叩いた。


 誰かって誰!


 自分でなんとかするしかないでしょうが・・・・・・!


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