第19話 最終試験(3)


 俺とイーサが激戦が終了した後にひとまず休憩が入り、約1時間後に試合は再開された。


「「俺は約束する! 決闘の儀の誓いに則り、全力を(全身全霊を)持って敵を討ち滅ぼすことを!」」


 三試合目はスパナとバールの双子バトルだ。

ていうかアイツら決闘の儀の言う順番くらい決めとけよ!惜しくも試合に負けてしまった俺は観戦側に回っている。まじで悔しい。


「「我に勝利を!」」


 誓いの儀を合図にスパナとバールが戦う第三試合が開始された。


「アッハハ、スパナ、今日こそお前をぶっ飛ばしてやるからな!」

「フッフッフ、バール、お前こそビビり過ぎて逃げ出すなよ!?」


 2人はそう言い合うと、背中に隠し持っていたものを自信満々に取り出し始める。


「「俺が造ったマジックウェポンにな!ってお前もかよ!!」」


 スパナは形が歪な剣、バールは柄が異常に細い槍を同時に構え、相手の様子を伺っている。




 「なんだあれぇぇぇ!?めっちゃカッコいいじゃん!」


 その武器を見た俺を含む孤児院の男子陣がそれぞれ大袈裟な反応をした。

 そして我慢出来ずに俺が驚愕の言葉を叫んでいると、その声にバーバラさんは呆れたような顔でマジックウェポンの説明をしてくれた。


「はぁ、男ってのはああいうのがみんな好きなのかい?まぁいいさね、あの2人が持ってるのはマジックウェポンと言って、あらかじめ各属性の魔力をつぎ込んでおくことで攻撃の幅が広がるように設計された武器さね、それにしてもアイツらどこでそんなこと覚えたのやら、というか材料もどうやって……」


 よく分からんけど孤児院でなんかコソコソしてたのはアレをつくってたのか、ていうかあんなカッコイイ武器つくるなら俺にも教えろよな!

 俺がそんな馬鹿なことを考えていると戦闘がついに始まった。





「とりあえずこれでも喰らえ!『ファイアボール』」


先に仕掛けたのはバールだ。


「そんなもん当たるかバーカ!『付与(エンチャント)・水(アクア)』」


 対してスパナは素早く自分の剣に水属性の魔力を付与して次々と放たれるファイアボールを弾き飛ばしている。

 そこでバーバラの解説をまだ理解していなかった俺を含む子供たちから歓声が上がった。何故なら武術は魔力コントロールが難しい上にある程度魔力の量を持っていないとすぐに尽きてしまうので、素質があるイーサ、アリア、サラを除いた人たちはまだ扱うことが出来ていなかったからだ。


 ナビー、アレもマジックウェポンの効果みたいなもんなのか?


 (その通りです。マジックウェポンは自分の魔力+武器に備蓄されている魔力を操作することで、魔力量の関係で今まで使うことが出来なかった魔法や武術を行使できます。しかし自分の体から一旦離れた魔力を操作するのは難しく、緻密な魔力コントロールが必要になります。そこを考えると武術まで使えているのはとても凄いことです。ちなみにバールも武術をマジックウェポンの補助によって使えるようですよ。)


てことは自分の実力よりも高い階級の魔法とかが使えるわけか、あの2人中々やるんだなぁー。


(あの2人よりもルクスの方が武術における魔力コントロールが呆れてしまうほど下手なのは明白ですよ、頑張ってください。)


な、なんで俺の話が出てくるんだよ。ハイハイ分かりましたぁー、これから頑張りますよっと。

 そう軽口を叩いているけど、ナビの言う通り俺は武術を使う時の魔力コントロールが全く上手くいかず、魔力量は充分にあるのに未だに武術を使うことができずにいた。そんな感じでみんなが騒いでいると戦況が動いたようだ。


「武術を使えるのはお前だけじゃないんだよ!

『付与(エンチャント)・風(ウインド)』」


 ファイアボールを連発で撃っていたバールは相手の不意を突くように風属性を付与した槍でリーチの長さを活かした突きをスパナに放った。

 バールの放った突きは、風属性を付与したこと、細い柄の恩恵で槍そのものでが軽量化されていることによって10歳の子供が出せる攻撃のスピードを軽く凌駕していた。

 そこで勝負が決したとみんなが思った瞬間。


「まだまだぁ!『付与(エンチャント)・火(ファイア)』」


 スパナはなんと歪な剣を2つに分解し、それぞれに火と水の属性の魔力が付与された双剣の様なものをバールの突いてくる位置を把握してクロスさせることで素早い突きを抑えた。

 そこから続く2人の連続攻撃の数々。


「くっそぉぉおおお!!いい加減負けろよぉぉおお!」

「お前こそ早く諦めろぉぉぉぉおおおおお!」


攻めのバール、守りのスパナ。

 このこう着状態を打破する為に2人は付与する魔力の量を多くし、身体能力と攻撃力を更に向上させた。


「これで俺の勝ちだぁぁぁぉあああ!!!」

「お前に負けてたまるかぁぁぁあああ!!!」


 その声に反応するかのように光り輝く2人のマジックウェポン。


(どうやらマジックウェポンが魔力暴走を起こすようです。みんなに伏せるよう伝えてください)


え?暴走?それってやばくね……


「みんな伏せろ!!」


俺が言葉を言い終えるか言い終えないかのところでスパナとバールを中心として結構大きな爆発が起こった。


「あれは魔力暴走かい!?まったく!」


 バーバラさんも結構驚いてる、珍しいな。

そして爆発が収まった後、みんなは恐る恐るスパナたちのところへ行った。


「おいスパナ、バール!大丈夫かい?」

「「だ、だいじょー……」」


 バタン。倒れる時までセリフ被りとかもう畏敬の念まで出てきたよ。


「まぁ死にはしないだわさ、マジックウェポンから一気に魔力を出し過ぎただけさね。とは言っても魔力切れも起こしてるから3日間くらいは寝たまんまさねぇ」


 バーバラさんはやれやれといった感じでみんなに試合の結果を伝える。


「結果は引き分けだわさ!あとこの2人はあと3日間はゆっくりしていないとダメだから両者敗退扱いになるさね」


 ちょっと最後はアレだったけど、この2人って結構やるんだな。この試合を見て、俺を含めた全員がスパナとバールの印象が大きく変わっていた。


「じゃあとりあえず4試合目に行くさね!スコラとビチルダ、準備しな!」


「はい!」


 そういえばビチルダとは夜中に1回やり合ったけどスコラとは訓練の魔法の撃ち合いしかやったこと無かったな。


「僕は約束する。決闘の儀の誓いに則り、全力を持って敵を討ち滅ぼすことを!」


「俺は約束する!決闘の儀の誓いに則り、全身全霊を持って敵を討ち滅ぼすことを!チヒヒ!」


 ルクスはスコラがどんな風に戦うのかをしっかりと見るため、意識をそちらに向けた。


「「我に勝利を!」」


 そしてこれから始まる出来事は俺を含めた誰もが予測することなど出来るはずもなかった。



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無彩色の運命〜転生失敗から始まる物語〜 @Hituzinohane

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